世界を変えた勇気: 自由と抵抗51の物語

著者 :
  • あおぞら書房
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本棚登録 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909040022

作品紹介・あらすじ

世界を取材し、日本各地で市民に行動を呼びかけるジャーナリストが、抑圧や人権侵害とたたかった人々の経験をまとめました。わが身におよぶ不利益をかえりみず行動した人々の物語が、全51話、世界7地域(南米、中米・カリブ、米国、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、日本)に分けて綴られています。本文には温かみのあるイラストを多数使用しました。
日々接する憂鬱なニュースにうんざりしている日本人に、あきらめなければ明日はよくなる、だれにでもできることがある、と語りかけます。著者は元朝日新聞記者。

感想・レビュー・書評

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  • 伊藤千尋氏(1949年~)は、朝日新聞社のサンパウロ支局長、バルセロナ支局長、ロサンゼルス支局長などを歴任した、現在はフリーのジャーナリスト。「コスタリカ平和の会」共同代表、「九条の会」世話人なども務める。
    本書は、全国商工団体連合会が発行する週刊紙「全国商工新聞」に連載した「憲法を活かす世界の人々」(2014年1~4月)と「したたかに生きる~抵抗と自立を求めて」(2017年8月~2018年3月)の2つのシリーズに加筆し、新たな内容も含めて一書としたもの。
    著者がこれまでに取材で訪れた国は82ヶ国に上るというが、本書には、南米のチリ、アルゼンチン、ペルー、ブラジル、ベネズエラ、エクアドル、中米のコスタリカ、ニカラグア、プエルトリコ(米国)、ジャマイカ、キューバ、欧州のポーランド、チェコ、ルーマニア、バルト三国、ドイツ、オーストリア、アフリカのチュニジア、モロッコ、エジプト、アジアの韓国、ベトナム、ミャンマー、フィリピン、中国、そして米国の28の国と地域が登場する。
    そして、そこで著者が目にした、民主化を求めて独裁政権に抵抗する毅然とした人びとや、極貧のスラムの中でも希望を持ち、豊かな生活を求めて活動する人びと、換言すれば、現在の日本では想像もできないような困難な環境の下、圧力にめげず、権力に屈することも忖度することもなく、信念を述べ行動する、美しい人びとの姿が描かれている。
    私は、昭和30年代後半に生まれ、高度成長期前の日本の貧困期・混乱期を知らない世代であるが、1990年代初頭から欧州に駐在する機会があり、1989年の東欧の民主化から1991年のソ連の崩壊、2010~12年のアラブの春などには人一倍関心を持ってはいたものの、本書に描かれているような、現地に生きる人びとが実際にどのように行動していたのか、更には、時期的にも地理的にも離れた中南米における民主化の現地の様子を知る機会は、残念ながらほとんどなかった。
    初出の連載に求められたメッセージの性格からか所々にある少々教訓じみた表現は気になるものの、それでも、日頃ニュースやドキュメンタリーでも取り上げられることの少ない国々の人びとが、自らの行動により歴史を変えていった様子にはとても心を動かされたし、これまで行く機会のなかった多くの国々を実際に訪れて、そこに生きる人びとと彼らが作る社会を自分の眼で見てみたいと強く感じたのである。
    (2019年6月了)

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著者プロフィール

ジャーナリスト。1949年、山口県生まれ。東京大学法学部卒業。1974年、朝日新聞に入社。サンパウロ支局長、バルセロナ支局長、ロサンゼルス支局長などを歴任、40年にわたり主に国際報道の分野で取材を続けた。2014年に朝日新聞退職後も、フリーのジャーナリストとして各国の取材を続け、精力的に執筆と講演を行っている。「コスタリカ平和の会」共同代表。「九条の会」世話人。

大学時代、キューバで半年間、サトウキビ刈り国際ボランティアとして汗を流した。4年生の夏休みに朝日新聞社から内定を得るが、産経新聞社が進めていた冒険企画に応募。スペイン語とルーマニア語の知識があったことから「東大ジプシー調査探検隊」を結成して東欧へと旅立った。東欧では「日本のジプシー」を名乗り、現地のジプシーと交わって暮らした。日本初のジプシー語辞書を作り、帰国後は新聞にルポを連載、ジプシーを扱った映画『ガッジョ・ディーロ』ではジプシー語の翻訳を担当した。ジプシー調査でジャーナリズムの醍醐味を知り、1974年、再度入社試験を受けて朝日新聞社に入社した。

朝日新聞時代も、学生時代の突貫精神そのままに、市街戦の銃弾をかいくぐりながら、そしてときには会社とも闘いながら取材を続けた。フリーになった現在も変わらない記者魂を、本書の随所で感じることができる。

「2019年 『世界を変えた勇気 自由と抵抗51の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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