認知症世界の歩き方

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  • ライツ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909044327

感想・レビュー・書評

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  • 「認知症の課題解決は、○○○○○の仕事だ」

    おわりに、の冒頭に書かれた文章を見て、なるほど、と納得しました。
    だから、このような本になったんだ、って。
    斬新な切り口、構成、、、今までどこにもなかった本、だと思います。

    ※○○○○○には、
     「医療従事者」ではなく、
     「福祉関係者」でもなく、
      もちろん「家族と本人」でもない、
     5文字が入ります。

  • 認知症の当事者がどのように周囲を捉えているか、に主眼を置いた本。
    認知のネットワークのどこかに故障が生じたため、当事者は周囲の環境や知覚をこのように捉えてしまい、その捉え方が認知症を発症していない人には奇異に見られる行動を取ってしまうという説明がされている。
    この本でも触れられているけれど、認知症の当事者の知覚に主眼を置いた本はこれまで少なかったように思う。また、この本が良いなと思うのは決して認知症になっても絶望的、というわけではない、という書き方がされているところ。以前とは同じようには出来ないけれど、自分はこのように捉えてしまうから、このようにアプローチしていこう、という書き方がされている。
    だからといって、認知症になっても大丈夫、とは思えないが、認知症になったら絶望、生きている意味がない、そんな気持ちは持つ必要がない、という気にはなれる。うまく出来ないことも、他の人の手助けを借りれば出来る、「次に会ったときには、あなたのことを覚えていないかもしれませんが、声をかけてください」と言う、そういう心持ちの人は、きっと介護する人も気持ちが楽なのじゃないか、などと考えてしまう。人柄がよい、というのは何にしてもいいことだなあ、と当たり前のことを思った。
    ピアサポート(当事者同士の支え合い)が認知症にもあるという。きっと心強いのではないだろうか。発達障害、精神障害、行為障害もピアサポートが充実する世の中になると孤独や不安で押しつぶされる人は少しは減っていくのではないだろうか。

  • はからずも映画「ファーザー」の試聴後に読むことができた、認知症の人が直面する困り事を、なぜそうなるか当事者の視点から描いた本。

    これを読んで気づくのは、日常生活、特に機械化された生活が日々複雑になっているということ。支払い、チャージ、通勤…健常者は意識せずにやっているが、そのプロセスを分解すると様々な認知、知識・記憶との結びつけ、行動への結びつけから成り立っていることがわかる。

    また、ぼーっとしている、徘徊、風呂に入りたがらないといった行動は、どういう困難から派生した結果なのかということが、とてもわかりやすく書いている。これを介護当事者に押し付ける気は全くないが、認知症の人の行動を少しでも理解することに近づける気がするし、自分が介護する立場になった時に、この本の内容と優しい視点を思い出したいと思った。

    社会のデザインを認知症の人に優しくすることで、認知症でなくとも高齢者や弱者に優しい社会になれる予感がした。

  • 認知症の当事者100人のインタビューを元に本人の視点で認知症を知ることのできる本。
    認知症の世界を一般の人にも理解出来るよう、昔あった地獄の世界の案内本のように認知症に似た現象が起こる架空の世界を創作し、健常者がその世界を探検していく構成を採る(人の顔が即座に変わったりのっぺらぼうになったりする顔無し族の村など)。
    その上で実際の認知症の方の経験談を記載し、その医学的な原因を説明し、日常での不都合の出方を類型化している。
    世界観やイラストもよく出来ていて、それに続く体験談と相まって認知症を疑似体験出来ると感じた。
    今まで認知症は記憶障害と思っていたが、物が歪んで見えるとかお風呂のお湯がヌメヌメしてると感じるとかそれ以外にも幅広い症状があるのだと言う事を知った。
    自分の周りにも少し思い当たる行動をしている人がいたので、この本の事を思い出して手助けしたり、行動を急かさず見守りたいと思った。

  • 認知症の患者にヒアリングして作成した13の特徴的な類型を整理。キャッチーなタイトルとエピソードで認知症患者がどんなふうに感じているかがわかるようになっています。また、認知症患者への接し方や相談方法など介護者にもヒントになる情報が満載。高齢社会の中、知っておきたい内容が満載です。

  • 認知症の人の見えている世界、
    本人も説明できずに困っていることを分かりやすく、
    スケッチと旅行記の形式で綴っている。

    今までも自分なりに、認知症関係の小説を読んでいたので
    大部分が「うんうん、そうだよね」と感じる話だが
    認知症の方の実際の声や、かわいいイラスト(スケッチ)があって
    より理解しやすく、受け止めやすい。

    ただここに登場する人は、日常生活ができる軽めの状態。
    認知症の入門編として、深刻な感じではなく、心の準備も出来て
    良い本だと思います。

  • 認知症とは、
    認知機能が働きにくくなったために、生活上の問題が生じ、暮らしづらくなっている状態
    を指します。
    認知機能とは、
    ある対象を目・耳・鼻・舌・肌などの感覚器官でとらえ、それが何であるかを解釈したり、思考・判断したり、計算や言語化したり、記憶に留めたりする働き
    のことです。
    私たちは、成長し、生き続けていくうちに、さまざまなものと接し、周囲で何が起きているのか、それにどう対処すればよいか、少しずつ学習して身に付けていくわけです。ところが、認知症になると、そうした機能が働かなくなり、今まで見えていた世界が何だか奇妙なものになってしまうのです。

    認知症の本というと、症状を医療関係者や介護者の視点から見たものが多いようです。この本がユニークなのは、著者が認知症である「本人たち」、約100人にインタビューを重ね、彼らが世界をどのように捉えているかを理解しようとした点です。
    認知症になると、徘徊行動をしたり、お風呂を嫌がったり、同じものを何度も買い込んでしまったり、さまざまなトラブルが生じます。けれどもそれは認知症の人の身になってみるといずれも理由のあることで、決して周囲の人を困らせるためにしているわけではないことがわかってきます。

    本書では、認知症の人の行動を、不思議な「認知症世界」を旅する人になぞらえて、旅行記仕立てでその行動を紐解いていきます。

    例えば「ホワイトアウト渓谷」。この地の天候は不安定。天気が崩れるとあっという間に濃い霧がかかり、目の前の景色が消え去ってしまいます。この渓谷で例えているのは、「目」と「記憶」の密接な関係。認知症でなくても、クローゼットの奥にしまい込んで何年も着なかった服のことは忘れてしまいますが、認知症の人だと、買ってきたトイレットペーパーを戸棚にしまって扉を閉めるとすっかりそのことを忘れてしまったりします。こうしたことをなくすには、視界を遮断しないことが1つの解決策になります。戸棚に扉がなければ、トイレットペーパーは見えたままですから、新しいものを買わなくては、と思わずにすみます。

    また、例えば「アルキタイヒルズ」。認知症の人はときに、どんどん歩いて行ってしまいますね。認知症でなくても、以前来た場所を懐かしく思うことはありますが、認知症の人は、歩いているうちに、本当にタイムスリップしたように感じてしまいます。子供はもう成人しているのに、思い出の中のあの子はいつまでも小さい子。商店街にいって、あれを買ってこれを買って、夕ご飯を作らなくちゃ。・・・でもそんな風にしていると、怖いおじさんに怒られて。その時はわからなかったけど、あれが私の息子だっていうの。本当かしら・・・?
    こうした事例はご家族も大変でしょうが、認知症の人本人も混乱した気持ちになってしまいますね。

    記憶。五感。時間や空間。認知症ではさまざまな機能の低下からいろんなトラブルが起こります。現れ方は人それぞれで、また、簡単な対処法があるわけではありません。長く続く「認知症世界」の旅を、本人も周りの人も少しでも過ごしやすいものにするにはどうしたらよいか。本書にはそのヒントがいろいろあるように思います。
    PART 1の「認知症世界の歩き方」では、認知症の人が世界をどのように捉えているのか、さまざまなストーリーからその一端が窺えます。
    PART 2の「旅のガイド」は、旅を心地よくするための実用的ノウハウ。専門職に相談すること、頼れる仲間を作ること、混乱を生むものを生活からなるべく取り除くことなど。
    ストーリーはどれも優しくふわりと語られています。実際はもっと厳しい面もあるのでしょうが、ほっと一息つきつつ、「ああ、そういうことなんだ」と落ち着いて読める点も美点かと思います。

  • 家族ご少しずつ認知症になってきてそうなので読んでおいた。こういうように見えてるんだ、と理解できる。読んでおいて損はない。

  • しばらく前にwebsiteの存在を知ってブックマークしていましたが更新をチェックするのを失念していましたが書籍になっており図書室から借りてきました。100名を超える当事者に行ったインタビューをベースに、個々の具体的なエピソードを紹介しつつその背景にある認知機能の障害の種類と度合について、障害のない者にも想像しやすいように配慮して編集してありわかりやすかったです。家族が認知症と診断されて数年経っているのでいろいろと納得しながら読みました。100人の方は多かれ少なかれ「自分は認知症である」という病識がある方なのかと推測、しっかりハッキリとではなくとも病識さえ持てれば、家族や周囲の方に助けを求めたり、自宅や職場でもいろいろの工夫を凝らして対応していくことが出来るものの、私の家族の場合はそうではなく、本人に病識がないのでなかなかむつかしいことが多いです。高齢化社会で認知症はますますごく身近なものになっていくし誰もが「自分もいずれそうなるかもしれない」と今から意識して心の準備を出来るようになれば良いなと思います。サクッと読めます。半日で読了。

  • これは良書だと思います!
    架空の島、dimentia島(認知症の島)を旅しながら認知症患者がどういう世界で生きているのかを漫画と共に分かりやすく紹介しています。dimentia島の形は脳の記憶を司る海馬の形をしています。
    認知症といえば物忘れや徘徊などが取り沙汰されますが、これを読むと五感の機能全てが色々綻び、それが組み合わさって症状がでるみたい。しかも個人でその頻出度は違うから症状は個人個人全部違うと言ってもいいかもしれません。
    認知症の人の行動は一見すると??なんですが、本人にはそれが実際に起こっている(と感じられる)ので、ただ徘徊したりしてるのではなく、全ての行動に理由があるのだと理解出来た事が私の前進でした。
    そして身の回りの環境配備や回りのサポートがあれば普通通りに生活して行くことも可能な人は沢山居るのではとも思えました。
    実際の認知症の方の生の声も沢山紹介されていて、それがとても興味深いです。これを読むと勤労世代でも認知症になる方はいるのだと分かります。
    良いと思った点は、巻末にスマホでこの本のサイトに関連するQRコードが付いてて、そこにアクセスすると音声付きの動画や、検定など認知症の理解を助ける工夫が沢山ついていたことです。サイトを色々まていくと参加型オンラインゲームなども開催されてるようで、私が確認した時は全ての日程が満員御礼でした!

    高齢化社会の日本、認知症も明日は我が身。共生していくヒントが沢山ありました!


    私設図書にて。

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著者プロフィール

issue+design代表 / 慶應義塾大学大学院SDM研究科特任教授

「2023年 『認知症世界の歩き方 実践編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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