玉藻前アンソロジー 生之巻

著者 :
制作 : 朝里 樹 
  • 文学通信
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909658838

作品紹介・あらすじ

世界が始まり、悪狐が目覚める――。
人間離れした美貌を持ち、人を超えた才知をほこり、数千数万の軍隊を相手に戦うことができる強さを持つ、伝説上、最「恐」のヒロイン、玉藻前(たまものまえ)。しかし本邦には玉藻前を扱った作品が膨大に存在するにもかかわらず、広く読める現代語訳がありません。
本書は大の玉藻前好きであった著者が、「誰でも玉藻前に触れることができ、彼女の魅力を広めることができるならば」と、膨大な作品群を現代語訳で編んだアンソロジー、『玉藻前(たまものまえ)アンソロジー 殺之巻』につづく第二弾!

本書には6作品を収録。
近世を代表する玉藻作品、読本『絵本玉藻譚(えほんたまもものがたり)』。中国の殷において妖妃・妲己として淫楽の限りを尽くし、天竺にて花陽夫人という美女となって残虐を極め、日本に渡り玉藻前となって暗躍するという物語。岡田玉山によって作られ、文化二年(一八〇五)に刊行されました。中国、天竺、日本の三国における九尾の狐の活躍が生き生きと描かれており、現代の玉藻前のイメージを形作った作品のひとつで、玉藻前好きであれば一読の価値ありです。『絵本増補 玉藻前旭袂(えほんぞうほ たまものまえあさひのたもと)』は元は『玉藻前旭袂』という作品。合作の浄瑠璃であり、寛延四年(一七五一)に初上演。大幅に脚色され、『絵本増補 玉藻前旭袂』として文化三年(一八〇六)に初演されました。三国を巡る九尾の狐の物語ですが、妖狐を倒すための「獅子王の剣」、自分の正体を明かし、人間と共謀して暗躍する玉藻前など、他の作品では見られない要素も盛り込まれています。また、現在でもよく上演される「道春館の段」など、濃厚な人間ドラマが描かれている点にも注目です。
『狐川今殺生石』は、玉藻前にかかわる作品でありながら、玉藻前が直接登場しない珍しい作品。舞台は江戸時代。かつて玉藻前を倒した伝説の残る上総介と三浦介の子孫に対し、玉藻前の子孫の狐たちが復讐を遂げようとします。
「関連資料」には大江匡房によって記された『狐媚記』。これにも玉藻前は登場しませんが、日本で初めて妲己が九尾の狐であることに言及した作品として知られています。『神明鏡』は南北朝時代に書かれた年代記ですが、玉藻前について記された最も古い書物として知られています。『狂歌百物語』は様々な妖怪に纏わる狂歌を集め、編纂したものです。今回はその中の玉藻前に纏わる狂歌を集め、現代語訳と解説を行いました。

これらを現代語訳でお届けします。
付録エッセイに、「中世の玉藻の性格」伊藤慎吾(國學院大學栃木短期大学准教授)を収録。

【玉藻前には様々な魅力があります。天地開闢とともに生まれたというスケールの大きさ、長い年月を生き、死してもなお殺生石となって毒を捲き散らかした生命力と執念深さ、次々と国を滅ぼすほどの人間離れした美貌、あらゆる事物にも精通する才知、神通力を自在に操り、その身一つで武士や兵士たちと戦った強さなど、挙げればきりがありません。中世から現在に至るまで、玉藻前が様々な物語に登場するのは、私のように彼女の魅力に惹かれた人々が数多にいたからなのでしょう。本書を通し、そんな玉藻前の魅力を少しでもお伝えすることができたならば、幸いに思います。】

感想・レビュー・書評

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  • 前巻「殺之巻」とはまた違ったバリエーションの話が収録されていて面白い。
    「絵本玉藻譚」には「封神演義」のキャラクターも多数登場。源頼政についても鵺退治のエピソードが語られるだけでなく、それがストーリーに絡む形で取り入れられている。
    「絵本増補 玉藻前旭袂」は、天竺→殷と順序が逆になっている。また、獅子王の剣という新たなアイテムも登場し、剣を巡る悲劇的なストーリーが新たに盛り込まれている。
    「狐川今殺生石」は喜連川(きつれがわ)の由来・狐川から話が始まり、三浦介・上総介の子孫に復讐しようとする玉藻前の子孫の狐達が登場。
    巻末のエッセイ「中世の玉藻の性格」も興味深く、玉藻前を通し、犬追物・弓・中世の仏教感について記述されている。

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著者プロフィール

監修:朝里樹
怪異妖怪愛好家・作家。1990 年、北海道に生まれる。2014 年、法政大学文学部卒業。日本文学専攻。現在公務員として働く傍ら、在野で怪異・妖怪の収集・研究を行う。著書に『日本現代怪異事典』(笠間書院)、『日本のおかしな現代妖怪図鑑』(幻冬舎)、『日本現代怪異事典 副読本』(笠間書院)、『歴史人物怪異談事典』(幻冬舎)、『世界現代怪異事典』(笠間書院)、『つい、見たくなる怪異な世界』(三笠書房)、『山の怪異大事典』(宝島社)、『日本怪異妖怪事典 北海道』(笠間書院)、『21 世紀日本怪異ガイド100』(星海社)、『玉藻前アンソロジー 殺之巻』(文学通信)、「放課後ゆ~れい部の事件ファイル」シリーズ(集英社)、『続・日本現代怪異事典』(笠間書院)ほか。

「2023年 『日本怪異妖怪事典 九州・沖縄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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