人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する

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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784910063157

感想・レビュー・書評

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  • 2021年の夏休み図書として、これまでにあまり読まなかったようなジャンルを読んでみたくなり、近所の書店の科学・テクノロジー系における啓蒙書類のコーナーで本書のオレンジ色の背表紙が目に留まり購入。

    これまでマット・リドレーの本は読んだことがなかったのだが、本書は450ページを超えるボリュームであることに加えて、同時期に他の本も並行して読んでいたことから、読了するまでに約半年を要してしまった。

    イノベーションに関する本は数多存在するが、動物学の博士号を持ちながらも"合理的楽観主義者"として世界の多くのビジネスリーダーに影響を与えている著者が、人類のイノベーションの本質にどのように切り込んでいくのかについて、興味深く読み進めることができた。

    冒頭では、動物学博士らしい導入からイノベーションとは何かという問いかけに始まり、エネルギー、公衆衛生、輸送、食料、ローテク、通信とコンピュータ、偽物など、一般的にはあまり注目されないハイテク以外の分野においても、これでもかというくらいに具体的なイノベーション事例を挙げ、それらに通底する本質をあぶりだしていく。

    シュンペーターやクリステンセンが世界に広めた『イノベーション』という言葉は、主にハイテク分野において、時に破壊的な作用を伴い、国や大企業が保有する多くの資金や発明によって実現されるものとイメージされがちであるが、著者はそれに対して真っ向からアンチテーゼを唱える。

    また、イノベーションに関してだけでなく、世間一般で常識だと考えられている事柄に対して、様々な視点でエビデンスを提示しながら著者の反論が展開されていく論調は、意外性と示唆に富み、読み手を飽きさせない。
    文字通り楽観主義的な考察も散見されるが、読み終わってみると本書邦題のサブタイトルが腑に落ちる。

    自分は社会人になってから経営学を修めたが、研究テーマはイノベーション関連ではなかったものの、本書に述べられているような視点や考え方を持ち合わせていれば、論文にもう少し深みと厚みを持たせられたのではないかと思える一冊であった。

  • イノベーションがいかに人類に豊かさをもたらしたかについてで、蒸気機関や電球などのエネルギー、ワクチンや水道などの公衆衛生、鉄道や飛行機などの輸送、ジャガイモや遺伝子編集などの食料、0やS字パイプなどのローテク、通信とコンピュータ、農業や家畜化なと先史時代といったそれぞれの分野の代表的なイノベーションを紹介。そしてイノベーションの本質、経済学、偽物、抵抗、現代における欠乏について論じている。
    イノベーションには信じられているような瞬間的なものではなく、漸進的で段階的である。誰かがいないとなかったイノベーションはなく、他の誰かが辿り着いただろうというものがほとんど。原子力発電は安全性が求められ、イノベーションに不可欠な幾度もの実験ができないのでイノベーションが起きにくい。政府の形は社会学的シーラカンスといえるほどイノベーションがない。特許を巡る法廷での争いに多くの貴重な時間とお金が浪費されている。
    前著に比べるとやや悲観的なトーンが見えるのは、Covid-19の影響か。

  • 過去のイノベーションを紐解き、これからの道筋を照らす。と言う趣旨ではないのかもしれないけど、産業、農業、そして、ITと、その時、何がと言う事が記されております。教育テレビなどで、発明家の偉人伝として見せるストーリーがギュッと凝縮されています。読み応え満点で、一つ一つのイノベーションも興味深いが、こうやって体系立ててみると、類似性やら気になることもでてきます。なぜ同じ頃に発露されるそのアイデアは、いったいどこからと興味は尽きません。

  • 農業の発生とENIACと予防接種や蒸気機関を同列に並べる手法はとても興味深い。モノの見方の観点を変える訓練になる。

  • 電球、飛行機からエネルギー、食料、衛生、など多岐にわたる領域の「イノベーション」の豊富な事例紹介。とくにそれらが生み出された過程について。
    それらを俯瞰してイノベーションの再現性を考察しつつ、最後はいまの特許制度がこれを阻害している、と締めている。

  • イノベーションは圧倒的な飛躍によるオリジナリティ溢れるものではなく、連続するプロセスである。
    だから同時期に類似の発明がされている。
    またイノベーションを起こすには自由と協力が必要だ。

  • 人類の様々なイノベーションは発明というかたちで特許というかたちで我々の生活を便利にしてきた。エネルギー、公衆衛生、輸送、食料、通信等様々な分野にまたがりこれからも続いていく。どのようにして発明しどう製品に結び付けていくのかはとても参考になる。イノベーションはセレンディピティであることが多い、遊びの要素、CRISPR遺伝子編集、オープンイノベーション、等どれも知的好奇心をくすぐる良書だと思う。

  • https://cool.obirin.ac.jp/opac/volume/872272

    多摩にもあります。

  • 今こそイノベーションが大切。
    破壊的イノベーションこそが閉塞した現状を打破する為の云々かんぬん…
    といったフレーズは巷でよく聞かれるが、そもそもイノベーションって何?
    今までイノベーションとされてきたモノはどうやって産まれたのか?
    というのを考察した内容。


    本著で語られている様に、イノベーションは一人の天才・一つのひらめきから産み出されるのではなく、知識の交換、数多の失敗やそこからの小さな改良や改善の積み重ねによって産まれるという話は興味深い。
    つまるところは、『繁栄』でも語られていたようにアイデアの交配こそがイノベーションの産みの親ということかな。

    技術、経験といったものが積み重ねることでイノベーションが産まれるという話を聞くと人類の歩みの深さの様なものを感じら壮大な気分になる。


    だかこそになるのか、特許による技術の保護が逆にイノベーションを阻害しているという後半の下りは知的財産の保護が以前に増して叫ばれているが現代において中々に考えさせられる内容と思う。


    物事を長期的に俯瞰して見る事で、一般的なイメージとは異なる視点で語ることができる著書の洞察力は素晴らしいの一言。
    読む度に新しい世界を開くようで、知的好奇心をくすぐられます。

  • 膨大なことをよくコンパクトに1冊にまとめるものだと思う。いまだに「天才」や「自由」を追い求めるような「イノベーション」本が多いけど容赦なしにリドレーは。

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著者プロフィール

世界的に著名な科学・経済啓蒙家。英国貴族院議員(子爵)。元ノーザンロック銀行チェアマン。
事実と論理にもとづいてポジティブな未来を構想する「合理的楽観主義(Rational Optimism)」を提唱し、ビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)、マーク・ザッカーバーグ(フェイスブック創業者)らビジネスリーダーの世界観に影響を与えたビジョナリーとして知られる。合理的楽観主義をはじめて提示した著書『繁栄:明日を切り拓くための人類10万年史』(早川書房)はゲイツ、ザッカーバーグが推薦図書にあげている。グーグルには3度招かれ講演を行なった。
1958年、英国ノーザンバーランド生まれ。オックスフォード大学で動物学の博士号を取得。「エコノミスト」誌の科学記者を経て、英国国際生命センター所長、コールド・スプリング・ハーバー研究所客員教授を歴任。オックスフォード大学モードリン・カレッジ名誉フェロー。
他の著作に『やわらかな遺伝子』『赤の女王』『進化は万能である』などがあり、著作は31カ国語に翻訳。最新刊である本書『人類とイノベーション』は発売直後から米英でベストセラーを記録している。

「2021年 『人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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