男が男を解放するために 非モテの品格・大幅増補改訂版 (ele-king books)

著者 :
  • Pヴァイン
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本棚登録 : 149
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784910511542

作品紹介・あらすじ

男にとって、自分の「弱さ」と向き合うことはなぜかくも難しいのか恋愛/性体験、収入の格差や労働のつらさ、社会的地位の低さ、強要される「男らしさ」といった、現代男性をめぐる生きづらさについて真摯に考察し、2016年に刊行され大きな話題を呼んだ『非モテの品格』(集英社新書)が大幅加筆して復刊!

感想・レビュー・書評

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  • とにかく難解でわかりづらい。それでいてポエムみたいな文章を書き連ねている箇所もあり、読むのに非常に苦労した。あとがきに、「この本が届くべき人に届きますように」とあるが、どういう人に届けたいのだろうか?届けたい人が読んでわかる内容になっているのか今一度考えた方が良いと思う。おそらく、いや確実に、私はこの本のターゲット層ではないので余計なお世話かもしれないが。

    筆者は、第4章で、「ポスト男性学的」なジレンマとして、弱さの資源活用こそがネオリベであると指摘している。自分の弱さを正しく認められる男性こそが、保守的男性/弱者男性/リベラル男性に対して優位に立ちうるという新たな階級闘争を生むというジレンマである。また第5章では、能力主義=メリトクラシーからの脱却を提言している。書いてあることに対してはある程度納得できるのだが、彼のこの著作を読んで理解できること自体が、そもそも能力的特権階級であることの証では?と感じてしまう。

    自身の「非モテ」としての拗らせ経験や、ケアワーカーとしての経験を根拠として書かれた2、3章は興味深く読んだ。2章で述べられていた、自身の身体を他者化し、どうにもならないものとしてそのまま受容れるという考え方は、今まであるようでなかった気がする。私自身が現在うつ病の療養生活において、健康や美容を含めたセルフケアに取り組む中で、自身の身体へのケアというのは植物の世話に似ていると感じることがあり、何だか腑に落ちる感じがした。

    「非モテ」に関しては、男にとってモテないことがそんなにも辛いことなのだなという驚きがあった。私も学生時代はモテなかったので、「誰からも愛されない」という絶望的な気持ちは経験がある。とはいえ女性の場合はわりと何とかなるというか、年頃になればセックスを経験することはおそらく誰でもできると思うのだが、男性の場合はたしかに生涯それが難しい人も中にはいるだろうなと思う。誰からも愛されなかったとしても自己尊重できるように、と筆者は説くが、愛し愛される相手を見つけ子供にまで恵まれている筆者に言われても、当事者には響かないのではないか?

    また、個人の性的な好みと、社会的・政治的に作られる男らしさや女らしさの規範に基づくモテ要素というものの線引きは非常に難しいと感じた。

    4章で、男たちも「強さや能力によって品定めされたくない!と言っていい」という記述があり、これはおそらく女性の「容姿で品定めされたくない!」という抗議に対応するものだと思われる。ただこれは、恋愛相手を選ぶ場面ではなく仕事など社会的な場においての話で、そういう場では、容姿ではなく能力で判断してください、という訴えだと思うのだが、そうなると男性も、強さはともかく能力でジャッジされるのは当たり前なわけで、何だか腑に落ちない。そのあとの章で能力主義についての批判もしているので、仕事場においても能力で評価を下すことそのものに対して是非を問うているのかもしれない。

    性愛の相手としての魅力をどこに感じるかは人それぞれだが、その基準となるものは社会の影響を多分に受けているだろうとは思うので、そうした規範を崩していくことはある程度必要になろうが、「僕らみたいな非モテにも目を向けてください」といくら言われたところで(筆者はそのようには言っていない)、なかなか難しいところではある。そもそも男のほうが数が多いのでどうしてもあぶれる者が出てくるわけで、「誰からも愛されなくても自分を愛せるようになる」ことができればそれに越したことはないんだろうなと思う。

    読みにくかったが、それなりに気づきを与えてくれる一冊だった。

  • むずかしいけど、面白かった

    最近いわゆる「インセル」が、「女性」に憎しみを抱いて通り魔的なテロ行為をしたりしてるニュースとか見るけど、

    「弱者男性」が、これは男性差別とゆって自分の敵を「女性」にしてしまうのは、物事をインスタントに考えすぎで、本来の敵は弱い立場のものが弱い立場でいられない構造なんだと思った。

  • なるほど批評とは出版物に対する反応なのだな。それぞれもうすこし細かく見た方がいいんじゃないかという気もするんだけど、でもまあ出版物にあらわれている文化とかを見てるわけだ。

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著者プロフィール

杉田 俊介 1975年神奈川生。批評家。『宮崎駿論』(NHKブックス)、『ジョジョ論』『戦争と虚構』(作品社)、『無能力批評』『ジャパニメーションの成熟と喪失』(大月書店)、『橋川文三とその浪曼』(河出書房新社)、『神と革命の文芸批評』(法政大学出版局)ほか。

「2023年 『対抗言論 反ヘイトのための交差路 3号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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