- Amazon.co.jp ・本 (80ページ)
- / ISBN・EAN: 9784911077009
作品紹介・あらすじ
静岡に生まれ、日本各地にパブリックアートをのこした彫刻家、掛井五郎。銀座の画廊主は「ピカソが嫉妬するだろう」と言い、染色家・柚木沙弥郎さんは「掛井さんはぼくの先生です」と慕います。
初期のブロンズは重厚で力動にあふれたものでしたが、それに満足することなく、フォルムは歪んだり膨らんだり縮んだりして奔放な変容をつづけました。2021年秋、91歳で他界するまで創造力はとどまるところを知らず、小淵沢の収蔵庫には彫刻、ドローイング、ガラス、版画、オブジェなど、ジャンルを超えて2万点を超える厖大な作品がのこされています。
「会っているとき、もうこんな人には会えないんだぞ、そんな胸苦しさを覚えたことがあるだろうか? いきなり現れたのが掛井五郎だった。内に火焔獣を抱えた人で、そばにいるとたえず熱気がたちこめているのを感じた。それが動きを止めたとはとうてい信じられない。すべてがかき消されないうちに、覚えていることの欠片をひろいあつめておこうと思った」(佐伯誠/文筆家)。
あまりに変貌がめまぐるしいために、これまで論じられることの少なかった彫刻家の、知られざるチャーミングな素顔、謹厳さににじむユーモア、逸話のかずかず。版画10点の挿画とともにお届けします。
感想・レビュー・書評
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掛井五郎という非凡の彫刻家=芸術家をオマージュする佐伯誠の回顧日誌のようなもの。たとえばそれが掛井ではなくピカソであっても、自分の伝えようとしている人物のアウトラインは前もって語るか、全体にまんべんなく塗り込む必要があると思う。本書は掛井五郎という存在をおおよそなりとも自分の人生に取り込んだ人へ向けてのメッセージに思えてならない。そのような気がかりはあったが、佐伯の、坪井に対する深いリスペクトと漲る感情は伝わってきた。文中に掛井の作品のいくつかが登場するが、必ずしも記載されていないのは少し残念ではある。テキストページの少なさを気にする書物ではないが、さりとて写真誌のようなものでもない。紙と感触、体裁にこだわったと編者は言うが、その余白を「紙の白」ではなく「空(くう)」として気づかされるような仕掛けがもっと欲しかった。
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