バルカンの花、コ-カサスの虹

著者 :
  • 旅行人
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本棚登録 : 57
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784947702722

作品紹介・あらすじ

ユーゴスラビア紛争の傷が癒えないボスニア・ヘルツェゴビナ、謎の国アルバニアなどバルカンの国々と、美しいコーカサス山脈の南にあるアゼルバイジャン、グルジア、アルメニアをめぐる最新旅行記。

感想・レビュー・書評

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  • 90年代、バックパッカー文化全盛の頃からずっと読んでいた自分からすると、筆者の個人旅行記はタッチは変わらずともコンテンツはずいぶん変わった印象。
    当時のアジアで頻発した面白ネタなど皆無で、まさに今風の旅行記だと思う。
    当時の貧乏旅行は、日本の経済力を背景にした贅沢な道楽だったということがいまさらながらわかってきたわけで、そういった環境をふまえ、この本では現在のバックパッカーの「今風の旅行記」、イーブンでフェアな旅になっているのはさすがというべき。
    それでも無意識の中で日本=経済大国、が前提になっている、言わば上目線な箇所もあり、2021年に読んだ自分としては必要以上にそこが気になった。ただ、実際には2010年ごろの旅なので、ギリギリ豊かな日本の残り香はあったのかもしれない。

  • 蔵前仁一(1956年~)は、バッグパッカー向けの雑誌「旅行人」(1993~2011年、前身の「遊星通信」は1988年~)を主宰した、バッグパッカーの間では知らない人はいない、イラストレーター、旅行作家。
    本書は、著者による、スロベニアを除く旧ユーゴスラビア6ヶ国とアルバニア(2013年)、ルーマニア(2009年)、及びコーカサス3国(2010年)の旅行記で、ルーマニアとコーカサスは雑誌「旅行人」に掲載されたものに加筆し、旧ユーゴとアルバニアは書下ろしである。
    私は、本書の中にも出てくる(『あの日、僕は旅に出た』に更に詳しい)、著者の歩いた1987年の年初のアテネの街を、著者と同じようにバッグパックを背負って徘徊し(それから西ヨーロッパ諸国を巡った)、その後1990年代の大半を仕事のためにヨーロッパで過ごした期間と併せて、ヨーロッパの二十数ヶ国を訪れたが、当時はバルカンの国々を個人で旅することはハードルが高く、著者が本書で訪れた国は全く行くことはできなかった。その後ずっと、チャンスがあれば、それらの国々を巡ってみたいと思っており(その次にはコーカサス3国も)、そのときには必ずや参考になるはずと考えて本書を入手した。
    多くの日本人が持つヨーロッパのイメージは、西欧を中心としたカトリック的なものである。しかし、東方正教会に長く属し、ときにトルコの支配を受けることもあったバルカン諸国(ギリシャを含む)からコーカサス諸国に至る地域は、間違いなくもう一つのヨーロッパであるし、東西冷戦時は社会主義体制下にあったことや、その後少なからぬ国が民族紛争を経験したことなどの、複雑な近現代史を歩んだ街を、いつか自らの目で見たいと、私は思っている。
    一読してみると、蔵前氏の持ち味であるスローで、シリアスにならず、ときにコミカルな旅の表現はやや影を潜め、楽しいイラストも残念ながら載ってはいない。しかし、まだまだ個人で旅する人が多くはない、バルカンとコーカサスの国々の各所の記述は、(近年は「地球の歩き方」の情報もかなり充実しているとはいえ)個人旅行者の目線ではとても有用なものであり、旅行記というよりも、ガイドブック的な意識で手にする方がいいのかもしれない。
    コロナ禍が収まり、遠からず再び不安なく個人の旅ができるときが来ることを願って、しばらく書棚の片隅にしまっておきたいと思う。(本好きの鉄則のひとつは、興味を持った本はそのときに買うことである。日々多くの本が出版される今、後で買おうと思ったときには絶版になっていることが少なくないのだ)

  • 彼の作品はこんなにつまらなかったかな?と思ってしまいました。
    どこにどうやって行っていくらした、ということだけが淡々と書かれています。
    もう少し掘り下げて書かないと紀行文として成り立たないのではないか?と思いました。

    これであれば、ガイドブックを読んだほうがいいです。

  • バルカンとコーカサス諸国は、海外旅行先としてはマイナーな部類に入り、関心以前に知識すら乏しいエリアだが、だからこそ、我々の代わりに旅してくれた本書の意義があるとも言える。著者の本は以前は旅の楽しいエピソード(トラブル)が読みどころだったが、ここ数作品はイラストも無く、訪問先の社会情勢に触れる内容にシフトし、面白おかしくない代わりに、知られざる世界を垣間見るきっかけを提供してくれている。掲載の写真は、旅行ガイドの美麗な景色写真とは一線を画した、生活感が滲み出ているかのような素朴な街並みや風景、昔ながらの建築物。旧ソ連あるいは社会主義時代の面影が残るそれらは、まだグローバル化の波に飲み込まれていない姿でもあり、それが著者がここを旅し、本にした理由でもあるはず。次作は出るのだろうか。

  • 旅行人で掲載された内容とは知らず、手に取った。
    最終章を読んでいると、読んだことが有る気がして、ようやく気づいた。
    コーカサスやバルカン半島には、とても憧れるが、これから行く機会を作れるかどうか難しいところだ。
    本書を読み、空想旅行ができたと思う。幸せなひとときであった。

  • 写真がきれいでよかった。

  • 私の中で今一番熱いコーカサス。旅行に関する書籍が少ない中、目に付けば片っ端から読んでいるが、これは読み応えもあり良かった。ただ同じように旅するのはちょっと難しそうだけど。
    後書きにあった「旅が出来るという事は、そこが平和であるということ」という言葉には、私が今興味のある国々が民族紛争という問題を常に抱えている事を痛感させた。日本人の私にとって肌で感じる事がないそれらを、旅を通して学んでいけたらと強く思う。

  • アルバニアとグルジアに行ってみたくなった
    ルーマニアの私の短い滞在ではわからなかった経済的なことなどがわかった、また田舎の方をゆっくり訪れたくなった

  • 読書録「バルカンの花、コーカサスの虹」3

    著者 蔵前仁一
    出版 旅行人

    P79より引用
    “車の数も少なく閑散とした感じもするが、
    それでも交通渋滞が起きているらしい。”

    目次から抜粋引用
    “バルカンはどこにある?
     絶景かなコトル湾
     ヨーロッパ最後の中世へ
     お釣りが多い
     聖なる山アララト”

     作家・グラフィックデザイナーである著者
    による、バルカン諸国と南コーカサス地方を
    旅した旅行記。
     クロアチアから始まりアルメニアまで、多
    くの写真を使い穏やかに語られています。

     上記の引用は、アルバニアの都市での様子。
    車が少なくても渋滞が起きてしまうというこ
    とは、渋滞というものは集団を作って生きる
    生物とは切っても切れない現象なのかもしれ
    ません。
     同著者の他の著作と違って、イラストはあ
    りません。著者の穏やかな絵柄のイラストが
    ないのは、少しさびしく思いますが、その分
    写真がふんだんに使われています。
    写真のカラー率も、ざっと見たところ7~8割
    といったところなので、景色や町並みの美し
    さを楽しむのに十分なボリュームなのではな
    いでしょうか。

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著者プロフィール

蔵前仁一
1956年(昭和31)鹿児島県生まれ。旅行作家・グラフィックデザイナー。
慶應義塾大学卒業後、80年代初頭からアジア・アフリカを中心に世界各地を旅する。
個人旅行者のための雑誌、『旅行人』編集長を務め、多くの旅行作家を輩出、
バックパッカーの教祖と呼ばれた。
『ゴーゴー・アジア』や『ゴーゴー・アフリカ』(ともに凱旋社」)をはじめ、
『旅で眠りたい』(新潮社)、『あの日、僕は旅に出た』(幻冬舎文庫)、
『よく晴れた日イランへ』(旅行人)など著書多数。

「2018年 『テキトーだって旅に出られる!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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