蛇イチゴ [DVD]

監督 : 西川美和 
出演 : 宮迫博之  つみきみほ  平泉成  大谷直子 
  • バンダイビジュアル
3.62
  • (40)
  • (78)
  • (95)
  • (15)
  • (1)
本棚登録 : 424
感想 : 78
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4934569618252

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 西川美和さんの初監督作品『蛇イチゴ』。これ宮迫が主演だったのか。

    当時の私は映画やドラマに出演する宮迫が嫌いだった。ネタも大して面白くないし、芸人として出てきたのに俳優をするというのがなんとなく嫌だった(宮迫は元々俳優志望だったらしい)。そういう例は過去にもたくさんあるのに、第3世代で育った人間にはありがちな考え方である。ウンナンはシャララなのに笑。東京のコントと大阪の漫才でまた感じ方が違うような…。
    許せるようになってきたのは『リンカーン』で何にでもとろみをつけてた頃からか?『アメトーーク!』からか?とにかくそんなに嫌いでは無くなった。そして闇営業。
    今この映画を観ると、宮迫を起用した狙いはちゃんと達成されていてすごいなと思う。こんな胡散臭い人は他にいない笑。

    『蛇イチゴ』はホームコメディ、ブラックコメディ。これまた家族の崩壊劇……というより虚飾で塗り固めていて、そんな「幸せな家族」は最初からなかったというのが明るみに出る話。2000年代はこういう話が多い気がする…『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2000年に初演、2004年に小説化、2007年に映画化)、『蛇イチゴ』(2003年公開)、『魂萌え!』(2004年連載、2007年に映画化)。

    家族構成。
    おじいちゃん→笑福亭松之助。
    お父さん→平泉成。
    お母さん→大谷直子。
    妹→つみきみほ。

    お兄ちゃん→宮迫博之。
    妹の恋人→手塚とおる。
    おばちゃん→絵沢萠子w

    素晴らしいメンツ。

    監督兼脚本1作目でセリフがよくて、これはすごい!とは思うものの、たいして笑えるわけではないし、オチはつけただけで他のことが解決していないのが気になる(オチというか、落語のサゲに近い)。テーマは嘘と真実の逆転、みたいなこと。

    お兄ちゃんが帰ってくるのは寅さんで、撮り方は小津さんなど松竹のホームドラマを意識していると思う。で、それを壊すという映画です。ぶっ壊れた家庭が再生するという普通のベタな話にしても良かったのでは?と思うけど、そうならない、しない気持ちも少しわかる。

    キモくない手塚とおるを初めて見た!と思ったら途中から普通にキモくなったw。阿部サダヲの怪優感がだんだん薄れてきても、手塚とおるの怪優感はあまり薄れてないのが良い。

    小学生の頃の染谷将太が出演!

    大谷直子さんは良いです。「あいつ」の好きな女の子。先日『新仕事人』の第31話(大谷直子&叶和貴子ゲスト回)だけ再放送で見返したら、やっぱり主水は叶さんを思いっきりブッ殺してました。ゲストが良いのとあたおか演出で印象に残ってた。主水は女も殺すよ!靖子の嘘つきめ。

    これもバンダイビジュアルが関わっていた。かつて映像事業に進出したかったバンダイ、その後も若手の良い監督の作品にけっこう出資していてDVDを出しているから、意外と日本映画界を下支えしているのではと思う。

  • 西川美和監督初めて見ましたが、すごい。
    普通の家族と思っていたら、父は会社をクビになっていて多額の借金を抱えていた。そこに現われたのが勘当された兄。勘当された理由ははっきり分からないけど、大学に行っているフリをして学費ネコババしてたらしい笑。
    妹、母、父、皆普通に見えるけど、体裁、世間体を気にしてる。それは結局は自分を守るため。
    兄は犯罪者でちゃらんぽらんだけど、自身の欲望に忠実で、世間体なんて気にしない、どこでだって生きていける人。
    西川監督は人間の描き方がすごく上手。汚いところもちゃんと描いてる。
    兄は結局、明智家にとって悪だったのかどうかはかかれていないけど、最後に見せてくれた蛇イチゴがそうでなかったことを証明しているように思えました。
    【DVD,2006.3.8】

  • 誰が悪人で、誰が善人なのかということが、覆されて、覆されて、また覆される。人の心に棲むどろどろとした部分や、見えにくい美しさを映し出すのが上手。最後のイチゴがおそろしく綺麗。はっとする。

  • 脚本がすごい。
    家族全員のセリフが本当にリアル。

    開き直ったお父さんも面白かったけど
    更に開き直ったお母さんがすごかった
    娘に言い放つセリフは女性じゃないと書けない

    一番リアルなのは鎌田さんかもしれない
    ビールよりワインがいいとか若干遠慮もせず
    家族の崩壊を目の当たりにして逃げ腰
    喫茶店での落ち着きのない仕草
    イライラするわー。
    イライラするけどわかるわーて

    蛇イチゴを探しに行く兄妹は
    なんとなく「ゆれる」を思い出させるね
    (同じ監督だし)


    【蛇イチゴ 予告編】
    http://www.youtube.com/watch?v=gEpAj0e5Xd4

  • 西川監督なので期待してしまいましたが、スタートダッシュに成功した監督では無かったんですね。
    それにしても宮迫主演。。

  • 良い。
    観るのが辛くて、飛ばし見。監督の斬新な映像、ストーリー。

  • 『ゆれる』を撮った「西川美和」監督のデビュー作品『蛇イチゴ』を観ました。

    一見、平凡に見える普通の家族が、、、
    祖父の死をきっかけに崩壊して行く姿をシニカルに描き出しています。

    家族(特に兄妹)の葛藤や、虚構(良く言えば気遣いや思いやり?)がテーマになっているところは、『ゆれる』に通じるモノがありましたね。

    -----story-------------
    明智家の娘「倫子」は、幼い頃から真面目で優秀。
    現在は小学校で教師をしており、同僚で恋人の「鎌田」との結婚を控えている。
    そんな彼女は働き者の父、優しい母、ボケてはいるが明るい祖父に囲まれ、平穏な毎日を過ごしていた。
    だがある日、痴呆の進んだ祖父が亡くなり、その葬式に10年間も行方知れずだった長男「周治」が姿を現わしたのをきっかけに、一家の和やかな雰囲気が一変する。
    やがて、世渡り上手の周治は、家族に内緒で多額の借金をしていた父の窮地を救い、家に迎えられるのだが、倫子だけはお調子者の兄をどうしても受け入れることができずにいた…。
    -----------------------

    この物語、ちょっとしたきっかけで身近な家庭でも起こり得そうな、、、
    そんな妙なリアル感があり、単純に笑えなかったなぁ。

    何だか、ちょっと背筋が寒くなるような、怖い感じがしたのも事実ですね。

    「西川美和」監督の作品って、ホント、家族の在り方について考えさせられます。



    それにしても、、、
    「つみきみほ」演じる「倫子」にはイライラさせられっ放しでしたね。

    目の前で起こっている現実を理解できず、理想を追い求め続ける姿勢には辟易しました。
    詐欺師(香典泥棒)の兄の方が、よっぽど人間的に見えましたね。

    こんな人、実際にもいるんですよねぇ。

    -------------------------------------------
    監督: 西川美和
    プロデューサー: 是枝裕和
    脚本: 西川美和
    撮影: 山本英夫
    美術: 磯見俊裕
    編集: 宮島竜治
    音楽: 中村俊
    録音: 鶴巻仁
    出演:
     宮迫博之 明智周治
     (雨上がり決死隊)
     つみきみほ 明智倫子
     平泉成 明智芳郎
     大谷直子 明智章子
     手塚とおる 鎌田賢作
     絵沢萠子 喜美子
     寺島進 前田
     蛍原徹 通夜会場の男
     (雨上がり決死隊)
     笑福亭松之助 明智京蔵

  • 前から観たかった西川美和監督のデビュー作品。
    ”ゆれる”に通じるいろんな角度から考えさられる映画だった。
    それにしても、あの認知症の汚い食べ方のおじいちゃん、
    ずっと世話をしいきた妻(大谷直子)が発作に気付きながら、お風呂掃除を続け、結果死んだとしても、誰が責められよう。
    会社の不正をひとり被り解雇され、いろんなとこから借金して、家族の前でが会社に勤めている嘘を付き続けていた父(平泉成)を誰が責められよう。
    蛇いちごこのタイトルも秀逸で、蛇=嘘、悪の象徴
    いちご=正、善の象徴らしい。
    口が上手くて嘘ばかりついて香典泥棒までする兄(宮迫博之)と教師でまじめで正論ばかりいう妹(つみきみほ)。
    でも、いつも正しいことが良いとは限らない。
    元に借金取りからその場しのぎでも救ってくれたのは(盗んだ香典代で)兄だったし、母親も優等生の娘より、兄にほうが話しやすいし、一緒にいて楽しそうだった。
    そして、あの蛇いちごのアップでのラスト、シビレタね。
    嘘じゃなかったんだよ、ちゃんと裏山に生えてたんだよって兄からのメッセージ。
    ハンガーが揺れてるシーンで兄が帰ったきて蛇いちごを置いて逃げていったっていうのを表してるとこも上手い。
    宮迫、こういう役をやれせたら右に出る者はいないんじゃない?惜しいなぁ。役者としてもいいもの持っているのに。
    そうそう、冒頭の教室のシーンでいつも遅刻してくる子を”嘘はいけません”と決めつけるんだけど、被害を(掃除をひとりでやることになる)被っている生徒の女の子が”先生、なんで嘘ってわかるんですか?”みたいなことを言うのよ。
    つみきみほは何も答えられずチャイムがなってホームルームは終わりになってしまうんだけど、この映画を象徴するシーンだった。
    先生役でつみきみほの恋人役の手塚とおる、若いし爽やか好青年っぽいんだけど、こんな役もあったんだぁと観ていたらやっぱり、メッキだった。
    長々、書いちゃったけど西川監督の映画は深いんだよなぁ。


    2003年 108分
    監督 : 西川美和
    プロデューサー:是枝裕和
    出演 : 宮迫博之 つみきみほ 平泉成 大谷直子 寺島進 手塚とおる 絵沢萠子 菅原大吉

    家がお終いになっちゃう前にお兄ちゃんに出ていってもらおうよ。

  • 短い時間の中にもの凄い量の真実と心情が詰まっていた。西川監督の作品は絶妙な心情表現と見る人の判断によって作品がガラリと変わってくるので面白い。

  • ちょいと異常事態が発生した時に、ごく平凡な人がごく平凡なリアクションを取るという、前提だけがやや以上でごく平凡なストーリー。でもそれゆえに見てて痛々しいわけで、あ、それはいかんな、ってことをやってしまう、なんか子育てでやっちゃいけないと言われてることをでもやってしまうのを指摘された感。変な髪形でゲイっぽいボーイフレンドがいみじくも言っているように、まぁ大雑把にいってしまえばお金はあった方が良い。

    てか10年前と言ってもまだ2007年なんだよなぁ。既に2000年超えているのに、このレトロ感が、別にレトロ映画として作られている、という訳ではないのが、なんだか堪える。

全78件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1974年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中から映画製作の現場に入り、是枝裕和監督などの作品にスタッフとして参加。2002年脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』で数々の賞を受賞し、2006年『ゆれる』で毎日映画コンクール日本映画大賞など様々の国内映画賞を受賞。2009年公開の長編第三作『ディア・ドクター』が日本アカデミー賞最優秀脚本賞、芸術選奨新人賞に選ばれ、国内外で絶賛される。2015年には小説『永い言い訳』で第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補。2016年に自身により映画化。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×