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- / ISBN・EAN: 4988126202187
感想・レビュー・書評
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2003年 日本
監督:犬童一心
原作:田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』
音楽:くるり
出演:池脇千鶴/妻夫木聡/上野樹里/新井浩文
以前一度映画館まで出向いたら「立見です」と言われてすごすご引き返したので、未練がましく再映を狙ってたんですが、今回やっと見れました!評判の良すぎる映画というのは、いざ自分で見ると先入観や期待の大きさに裏切られて案外つまらなかったりすることも多々あるんですが、これは期待を裏切らない良い映画でした。
監督もえらいのでしょうが、今回はなんていうか、キャスティングの勝利って印象が強いです。妻夫木聡は、こういう「屈託のない」役をやらせたら右に出る若手はいませんよね。軽々しいまでに今どきの若者で、何も考えてなさそうで、それでいてそれが嫌味じゃなく、のびのびと素直で明快で影がない。
田辺聖子の原作独特の関西弁を婆ちゃん役のひとと池脇千鶴が実に上手く演じていて、見ようによっては可愛げの欠片もないジョゼという女の子を池脇千鶴はホントに魅力的に演じていたと思います。新井浩文のヤンキーっぷりも最高でした(笑)
障害者との恋、というと偽善的な描き方にならざるを得なかったり、もしくはセカチュー的お涙ちょうだいになりかねないところを、この映画は実にさらりと自然に流してしまっています。結局最後に主人公はその「重み」に負けてしまうのだけれど、それでもこれは純粋に恋愛映画で、彼が感じた痛みは己れの弱さ汚さ無力さと初めて向き合った青年の、純粋な挫折と成長の産物であったのだと思わされます。
ジョゼのほうでも最初からその恋が永遠であるなどという幻想は抱いておらず、孤独という概念さえ知らなかった、恋を知る前の自分にはもう戻れなくても、その新しい孤独と向き合う覚悟をちゃんと持っている。海で、貝殻を拾うシーンがとても美しかった。笑ったり、泣いたり、まるで本当に自分がその恋を体験したかのように、心に残るきれいな映画でした。
(2005.03.05)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
障がい者だから、自分が居ないと生きていけないからという理由の関係性じゃ続かない、そんなの健常者と障がい者じゃなくたって同じだと思う。どちらかに負担がかかる関係性は、続かない。お互いに潮時だったと私は思う。妻夫木くんから見たら障害を理由に逃げたことになるかもしれない。障害という見やすい欠点だからこそ辛いけど、でも、きっと相手の欠点を受け入れられず別れるのは特別なことではない気がする。人の人生を背負う覚悟を、分かりやすく教えてくれた作品だと思う。そして障がい者のたくましさを伝えてくれる作品だと思う。私は健常者と障がい者の恋の難しさって見方はしたくない。ただ、色んな捉え方ができるという意味ではやはり素晴らしい作品であることに間違いないと思う。日本映画で久しぶりにいいものを観ました。
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ずっと観たかったけど、なかなか観れずやっと鑑賞。
期待が大きかったせいか思ってたよりは…という感じ。
ジョゼが強くて、でも可愛くて…
ずっと閉じ込められていて、初めて恋をして、でも終わると分かってて…別れて1人で生きていく 、あんなに強く居れるのだろうか。。
観終わってからいろいろ考えてると、何だか心にのしかかってくるような…ハッピーエンドじゃないからかな。
海でのシーン綺麗だった。魚の館でのジョゼのセリフ『それもまた良しや』はジョゼの覚悟が見えた。なんか切ない。 -
ジョゼは不思議な魅力を持っている。
やたら博識でぶっきらぼうな大阪弁使ってて、遠慮しない。
なのに、海で見せた子どものようなはしゃぎっぷりが可愛い。
「帰れ言われて帰るようなやつは、はよ帰れ!」
このセリフには、女子みんな共感したんじゃないでしょうか。
タイトルは、純粋な恋心を象徴していた。
「いちばん怖いもんを見たかったんや。
好きな男の人ができたときにこうやって……。
もしできんかったら、一生本物の虎は見られへん。
それでもしゃあないと思てた。
けど見れた。」
「うちはもう二度とあの場所には戻られへんねやろ。
いつかあんたがおらんようんなったら、迷子の貝殻みたいに
ひとりぼっちで海の底をコロコロコロコロ
転がり続けることになるんやろ。
でもまぁ、それもまた良しや。」
最後に泣きじゃくる恒夫と、
電動車いすを使いこなし、いつも通りに魚を焼くジョゼ。
リアルで、とてもよかった。 -
いっつもどこか偉そうなジョゼが
押入れのところで、ノートの上で手が触れて
あわてて引っ込めるところや
菜箸で差し出した煮物を恒夫がほおばった時
驚いたようにちょっと首をすくめたところなど
不器用で繊細な年相応の女の子に見え
切なくなった。 -
べつに寂しくはない。なにもないねんもん。そこにはゆっくり時間が流れていくだけや。
と言って場面が変わり、ジョゼは恒夫の背中を見送っていった。かつては出ていかないで、ずっとそばにおって。と叩いた背中を、見送ったジョゼ。また独りになったジョゼ。
恒夫のことが暫く頭を離れなかった。
誠実さと不誠実さの両方をあれだけ魅力的に映すのはなんだろう。あの指の握りかたはずるい。美味しそうにご飯食べる姿もずるい。
人の愛し方なんて、誰も教えてくれない。人の背中や瞳や手を見て、それを真似てみることしかできない。(あ、そういえば「学ぶ」という言葉は「真似ぶ」から転じてできたものだと習ったなぁ。それはいいとして。)
ジョゼが恒夫へ向ける愛し方はまっすぐだったなー。 -
妻夫木聡演じる主人公の恒夫と足を患う〝ジョゼ〟とのエロティックなラブストーリー。最終的に恒夫が“逃げる”かたちでふたりの関係は幕を閉じることになるが、身体障がい者の方と共に歩んでゆく“重み(?)”を考えさせられる作品にもなっている。
本作に描かれている愛の姿をより深く理解する手助けとして、公式HPより脚本の渡辺あやさんのコメントを紹介しておく。
“虎は獲物を倒すと、温かくやわらかな内臓から食べ始めるそうです。恒夫のジョゼへの恋もまた、すこやかな虎の食欲に似て、獰猛ったらありません。”