Middle Tempo Magic(CCCD)

アーティスト : 安藤裕子 
制作 : 安藤裕子  山本隆二 
  • カッティング・エッジ (2004年9月7日発売)
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・音楽
  • / ISBN・EAN: 4945817143679

感想・レビュー・書評

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  •  おそらく、安藤裕子のくぐった門はそう狭いものではなかった。俳優としてデビューを飾るもののお世辞にも役柄には恵まれず、戯れに披露した歌唱が注目を集めた後に歌手として脚光を浴びる。誰しもに開かれた道が狭隘な出口しか持たない例に照らす限り、その蹉跌は必ずしも大きいと言えない。だが、この不毛の季節が彼女の内的音楽をあたため、開花させた事実に疑いの余地はない。

     「隣人に光が差すとき」は2004年に発表された1stアルバム『Middle Tempo Magic』の第11曲目に収録されている。そして、この布置には確かな理由がある。最終曲「聖者の行進」は文字通りミドルテンポの曲が続くなか、スネアドラムの躍動的な一打一打を足音に見立てることで、それまでの音に鮮やかな決別を告げている。言うなれば、この動的な瞬間に先立つ最後の静けさこそ「隣人」に課せられた使命であり、曲そのものの呼吸する気配と呼べるだろう。アルバム発表の前年、堤幸彦『2LDK』のエンディングテーマとしてこの曲が抜擢されたとき、安藤は既に26歳の秋を迎えている。


     やわすぎた私は人混みのなか埋もれ 光の差すあなたを見てた
     輝けるあなたの斜め後ろを辿り こぼれる光に手をのばす


     友人たちが脚光を浴び、やがて人気の凋落とともに消え行く姿を卑屈や憐れみに堕すことなく、ただ見届けるかのように歌い上げた。自らの行く末を見つめること、その内圧を詩の温度へ逃したことで、抑制された叫びとしての歌声も、ようやく音楽的な調和に導かれる。長い韜晦の日々と、その後に訪れたつかの間の安息を慈しむように、彼女は全体重をあずけながら、この上ない叙情を歌へと託してゆく。そこに特別な唱法や技巧はない。ただ、生にのみ宿る情意がある。

     安藤がようやくその名を知られるきっかけとなった曲の登場には、さらに三年の歳月を待たねばならない。彼女にとって最大の到達は、祖父母の愛を描いた「のうぜんかつら」によってもたらされた。

  • これも残念ながらCCCDなのですが、それでも、「忘れものの森」のために買っとくべきだって。名曲。あとは躍動感溢れる「黒い車」が好き。

  • "これこそ世界の夢 ユラリ 朝寝したりしてみたい
    別れたばかりの映像が残る
    もっとそう、時計とかしまっていたいよ
    放たれない光を隠しちまえよ!"[slow tempo magic]

    01 ロマンチック
    02 悲しみにこんにちは
    03 サリー
    04 BABY BABY BABY
    05 黒い車
    06 show tempo magic
    07 水色の調べ
    08 忘れものの森
    09 眠りの家
    10 ドラマチックレコード
    11 隣人に光が差すとき
    12 聖者の行進

    "立ちつくす私は 流れる人に押され
    倒れるように膝をついた
    誰独り埋もれた 私のこと気付かず
    光の差すあなたを見てた"[隣人に光が差すとき]

  • とても大切な曲がつまったアルバムです。
    ロマンチックはアルバムの始まりを素晴らしく彩っている。聖者の行進や隣人に〜は、本当に力強い曲です。
    それにしても写真どれも可愛いですね…惚れ惚れします。

  • ★ 隣人に光が差すとき

  • 「あんどうゆうこってアナウンサーですか」と思いつつ
    残業時に流してもらうと好きな曲感が次々と…。
    次はもっとじっくり聴いてみたい。
    いや、歌ってもらうか。

  • いちばん聴いてるねえやんのアルバム。ずっと聴いてるのに飽きない。
    やる気のない朝はロマンチックをきいてがんばってる。

    ◎ロマンチック 
    ◎悲しみにこんにちは 
    ◎水色の調べ 
    ◎隣人に光が差すとき 
    ◎聖者の行進

  • 2ndのアルバムを初めに買ったため、これはその次に買って聴いた。
    「水色の調べ」は気分の高揚する大好きな曲。「サリー」や「ロマンチック」が一番好きな時期もあった。何度聴いても飽きないし、いろいろ発見がある。

  • 「隣人に光が差すとき」と「聖者の行進」が好きです。
    この二曲を聴いているとキリスト教の聖書をなぜか思い出します。

  • セカンドアルバムのMerryAndrewで、安藤裕子さんを知ったけど、この1stも、かなり好き!ただしCCCDだったことは悔やまれるかな。

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著者プロフィール

1967年長崎市生まれ。東京大学教養学部国際関係論学科卒。大手広告代理店博報堂での10年間の勤務、2年間の起業経験の後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科に入学。2009年、論文「ヒロシマ・ナガサキはどのように表象されてきたかー公的記憶の変遷を辿るー」を提出し博士号(学術)取得。また、同年に第7回日本修士論文賞を受賞。早稲田大学アジア太平洋研究センター特別研究員を経て、現在早稲田大学非常勤講師。

「2011年 『反核都市の論理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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