日経サイエンス2015年01月号

  • 日本経済新聞出版社
3.00
  • (0)
  • (1)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 30
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・雑誌 (128ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • マインドフルネスは効果ありますってだけで、なぜ、どうやって、がなくてつまらなかった。

  • 暦は年末だが、雑誌ははや新年。
    2015年、幕開けの特集、1つ目は「瞑想する脳」。
    科学誌と瞑想とは一見ミスマッチのようだが、いやいや、これはなかなかおもしろい。
    ダライ・ラマは早くも1980年代に、瞑想の科学研究を視野に入れ、2000年には「観想神経科学」と称する学科を設立、瞑想を1万時間以上経験した宗教者の脳活動を調べるように呼びかけている。
    仏教の瞑想は大きく3つに分けられる。フォーカス・アテンション瞑想(呼吸に意識を集中するもの)、マインドフルネス瞑想(体内感覚や思考を含めて、感覚を観察するもの)、慈悲と慈愛の瞑想(他者に対する慈悲の感情を養うもの)である。
    本特集で紹介する研究では、瞑想中の僧侶の脳画像を分析し、どの部分が活性化されているかを調べるなどしている。
    瞑想により、脳の一部領域の大きさが変わる変化が見られたり、痛みやうつ状態の改善が見られる例もある。また慈悲の瞑想によって、社会性に富む行動が増える傾向も見られる。
    第二の事例を発展させて、マインドフルネス認知療法という療法が行われている。マインドフルネスは一瞬一瞬の感情や感覚に注意を向けて、それを客観的に見るように努める瞑想法だが、これを行うと、うつを引き起こすネガティブ思考に傾くことを抑制したり、慢性疼痛に伴う心理的ストレスを減少させたりすることも可能である。
    不快を感じたときに、不快な気分に浸ってしまうのでなく、それを見つめて捉えることで、クリアになっていくものは確かにあるように思う。
    短いスパンで実利があることもすばらしいが、それだけでない可能性が瞑想にはあるように感じる。

    特集の2つ目は、「太陽系の起源に迫る」。
    先頃、「はやぶさ2」が打ち上げられた。イトカワへの旅を果たした「はやぶさ」の後継機が目指すのは、1999JU3と呼ばれる地球近傍小惑星。有機物や含水鉱物等を多く含み、過去に高温状態を経験していないと考えられている。太陽系形成当初の状態のこうした物質を採集できれば、生命の起源を探る手がかりとなりうる。「はやぶさ2」が目的地に着くのは2018年6~7月頃。2020年暮れに地球に帰還して試料の入ったカプセルを投下し、再度、別の目的地(現時点では未定)を目指して地球を後にするという。Bon boyage!
    「はやぶさ2」より少し前に、ニュースを賑わせたのが欧州が打ち上げた「ロゼッタ」。こちらはチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸機「フィラエ」を投下した(*本誌の発売日はこれより前であり、記事では触れていないが、「フィラエ」は目標地点と少し外れた日陰の部分に着陸。観測データを送信することには成功したが、その後、休眠状態に。但し、少しずつでも充電されるか、季節が変われば、再度の観測が望める可能性もある)。
    また、冥王星を目指すNASAの探査機・ニューホライズンズもある。こちらは2015年7月に冥王星に最接近する予定。
    太陽系の起源を探る手がかりともなる、宇宙からの便りを楽しみに待ちたい。

    医薬のトピックは「がん免疫療法」。
    がんは内なる異物である。もちろん、当初は自身の細胞であったものなのだが、異常に増殖する中で、その表面に提示される分子断片も異常なものとなっていく。
    本来であれば、免疫系が認識・攻撃してもおかしくないはずなのだが、そうはならない。がんは免疫系にブレーキを掛けているのだ。機構にはいくつかあるが、代表的なものは、T細胞上のPD-1と呼ばれる自殺スイッチを作動させて、T細胞を自殺させること、そしてT細胞上のCTLA-4と呼ばれるブレーキ分子を作動させ、T細胞の増殖・成熟を停止させることである。
    がん療法は通常、腫瘍を直接攻撃するが、がん免疫療法は、がんを攻撃する免疫系を活性化させることを目指す。
    本誌では、上に挙げた自殺スイッチPD-1とブレーキ分子CTLA-4の働きを抑える抗体の成果が報告され、かなり有望な結果が得られているようである。臨床に到るまでにはまだ紆余曲折がありそうだが、着眼点が興味深い。

    「海外ウォッチ」の中の短い記事だが、「キーストーン病原体」の話がおもしろい。
    キーストーン病原体とは、数の割に、健康なはずの微生物叢を、有害なものに転換する際に大きな役割を果たす微生物である。例えば、歯周病の主犯とされるポルフィロモナス・ジンジバリス。この菌がいると、白血球が殺菌化学物質を作らなくなる。この結果、細菌数が爆発的に増え、通常、悪さをしていないものも結果的に有害となってしまう。
    直接の毒性があるものばかりが悪いわけではないのだ。

    数学の話題は、数学ゲームを通じて、一般愛好家と数学の奥深い世界をつなぐ架け橋となった故マーチン・ガードナーの記事。良質の問題をScientific Americanに連載し続け、レクリエーション数学が、楽しいだけでなく、数学上の重要な発見に結びつく可能性すらあることを示したガードナー。2010年に死去したが、今年10月、生誕100年を迎えた。多くの著作を残し、数世代にわたるファンもいる。

    ヘルス・トピックスとして「褐色脂肪で肥満を防げるか?」。
    これもなかなかおもしろい。脂肪は通常、肥満に関してよろしくないものとされているが、脂肪細胞には少なくとも2つのタイプがある。白色脂肪細胞はエネルギーを油滴として蓄え、どちらかというと変化しにくい。これに対して褐色脂肪細胞は、油滴も蓄えるが、ミトコンドリアも含み、これが油滴を燃やして熱を生じる。
    通常は子ども時代に消えてしまうと目されていた褐色脂肪だが、成人にも残っているらしいことがわかってきた(朗報ですよ!)。また、白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞様に変化した「ベージュ細胞」というものも存在するらしい。
    こうした細胞が働くには、気温が大切なようで、気温をやや下げた部屋にいると、燃焼するカロリーの量が多いことがわかってきた。
    んー、ある意味、当たり前のような気もするが、これが着実に肥満防止につながるというところまでは到っていない。ただ、褐色細胞への注目はまだ続きそうである。
    ダイエットを望む方は、試しに寒い部屋で震えてみるのはどうだろうか・・・?(すみません、失敗しても責任は取れません(^^;))

    最後に巻頭の「フロントランナー」を。エボラウイルスを追う北大教授である。
    自然宿主を追い、探検家さながらにアフリカの森に分け入る一方、治療薬の開発に意欲を燃やす。
    但し、残念なのは、日本には生物学的封じ込めレベル4(BSL-4)の実験施設がなく、日本ではエボラウイルスを扱う実験ができないこと。国外で研究せざるを得ないが、日本での研究成果とすることはできず、不自由が伴う。
    将来的にエボラが日本に上陸しない保証はない中、やはりBSL-4レベルの施設が国内にあることが望ましいように思う。

  • 両親それぞれが別ルートで南下する渡り鳥から生まれた混血種はどのような経路を辿るか、という問いに対し、オリーブチャツグミにGPSを取り付けることでアプローチする内容の記事が記載されていて面白かった。今月の大テーマである「瞑想」記事はなんというか文体が「役に立つ健康法」のそれのように感じた。

全4件中 1 - 4件を表示
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×