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感想・レビュー・書評
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バルザックの『人間喜劇』のなかから、『老嬢』『骨董室』『トゥールの司祭』『ピエレット』という四つの作品をとりあげ、それらの登場人物たちを通してバルザックの目によってとらえられたフランス社会についての解説をおこなっています。
バルザックは、王党派と自由派という二つの政治勢力が対立するなかで生きた多くの人物たちを作品内に登場させることで、当時のフランス社会をえがこうとしました。そうしたバルザックの社会認識について著者は、「われわれはここに記された事柄の真実さに惹きつけられるのではなく、自分自身の社会に関する認識を信じえた人物の五兆、その波動し伸暢する文体に傾倒し飲みこまれるのだ」と語っています。そして、バルザックの文学作品の方法について、「ある時代に見てとられる一般的事態の提示」がなされたうえで、「それに一つの地名が投げ入れられると、その提示された事態は結晶核を投げ入れた晶液のようにひとりの人間に結晶し、この個人にかれの背景となっている事態の実在性とそこにこもるエネルギーが集中して行く」と著者は説明します。このようなしかたで、バルザックという個性的な目によって認識されたフランス社会の具体的なすがたを、作品に登場する人物たちから読みとっていくことが、本書の目的であるといってよいのではないかと思います。
残念ながら本書でとりあげられているバルザックの作品は、どれも読んだことがなかったので、著者の議論においてどこに重点が置かれているのか、理解しにくいと感じてしまったのですが、バルザックの文学の特質について学ぶことができたように思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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