fujitatetsuyaさんの感想
2014年1月25日
こういう一文から物語がはじまる。「世界は非情である。無価値な人間、みずから無価値になれる人間が生きられる場所はない」。みずから無価値になれる人間とは?物語はそこを問い詰めていく。 インド系のアフリカ移民であり、貿易で成功を夢見る主人公サリムを見舞う、暴動、クーデター、圧政。明日の保証が無い世界を生き抜くための手段は、希望を投げ捨てその日その日を生きること。 叡智あふれる文章に満ち満ちた小説。老練、老成。そしてこの素晴らしい小説もまた絶版。オンライン配信の時代はまだか。