くずれる水 (1981年)

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感想・レビュー・書評

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  • 再読。川、雨、光露。細断された時間は水滴となってしたたり落ちている。金井美恵子の構築した物語という街を満たしている水は腐敗した、刺激的な、あるいは甘美なにおいを放ち、皮膚に纏わりつく。ここを眩暈をともなって彷徨うことは、曖昧な出発。
    複雑に分岐した支流は全て最後には必ず海に流れつくだなんて、そんなことありえない。書くことに終わりがないように読むことにも終わりはないのだ。
    世界と同じ数の名前で呼ばれるであろう、非人称の〈わたし〉の物語。
    もうわたしはどこにも辿り着けなくていい。
    無限に続く前置きに引っ掛かっていたい。

  • なんだろう、この纏わりつく粘液質の湿度。滲みゆく輪郭が溶け合い交じり合い崩れる。執拗な反復は型通りの反復でありながら少しずつズレ歪んで四方に広がりゆく。何処かで何かが繋がりまた分かれ、また繋がり、循環があるかのようで、それはない。増殖する複数の〈わたし〉と〈あなた〉がいかようの組合せで出会おうとも、それはまた別の話だ。とても複雑な小説である。掌の隙間から零れ落ちる水のように掬いきれない、攫めそうで攫めないまどろこしさが残る。それでもいい。この感触、金井美恵子は読むことの掛け替えのない至福をもたしてくれる。

  • 雑誌・文藝(2009年冬)のアンケートの答え:前田塁

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