くずれる水 (1981年)

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著者 : 金井美恵子
  • 集英社 (1981年8月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)

くずれる水 (1981年)の感想・レビュー・書評

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  • なんだろう、この纏わりつく粘液質の湿度。滲みゆく輪郭が溶け合い交じり合い崩れる。執拗な反復は型通りの反復でありながら少しずつズレ歪んで四方に広がりゆく。何処かで何かが繋がりまた分かれ、また繋がり、循環があるかのようで、それはない。増殖する複数の〈わたし〉と〈あなた〉がいかようの組合せで出会おうとも、それはまた別の話だ。とても複雑な小説である。掌の隙間から零れ落ちる水のように掬いきれない、攫めそうで攫めないまどろこしさが残る。それでもいい。この感触、金井美恵子は読むことの掛け替えのない至福をもたしてくれる。

  • 川。雨。光露。
    細断された時間は水滴となってしたたり落ちている。何度も反復される場面。それなのに全く同じ道を二度と歩くことができない。そこに流れる水は腐敗した、刺激的な、あるいは甘美なにおいを放つ。気化すれば水銀のような重量と色をもった水蒸気となり、体中に纏わりつき視界までも奪っていくようで目眩を覚える。
    〈わたし・彼・きみ〉と〈あなた・彼女〉と私をも呑み込む流れ。河口を目指し収束する一方で、逆流する気配を感じる。どこかの支流は複雑に分岐し、絡み合い始めている。
    どうしても私は、あなたに辿り着ける気がしない。

    読み手を惑わす装画の本。鞄の中から本を取り出して開けば、さかさまに並ぶ文字。表紙を本の背を中心として絵が内側になるように折り曲げ、向かい合わせたところで鏡像関係にならない配置だから何度も上下を間違えた。ところどころ挿入されたトレーシング・ペーパーに印刷された銀色の絵がとても好み。
    《2014.09.01》

  • 雑誌・文藝(2009年冬)のアンケートの答え:前田塁

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