乱れからくり (1979年) (角川文庫)

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感想・レビュー・書評

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  • ごちそうさまでした。
    読了後、おもわず正座して手を合わせてしまいました。
    いやぁ、面白かった。堪能しました。

    じつはブクログで簡潔に一行でネタバレしてる方がいて、読む前にそれを喰らって悲しい思いをしていました。

    それでも大満足なんです。

    メインの大仕掛けがわかっても、それを支えるのは緻密なプロット。大小さまざまなトリックと数々の伏線、魅力的な舞台装置と道具立て。そしてなによりストーリーの面白さ。細部を丁寧に紡ぎ上げる泡坂さんの手腕はお見事。
    各章で語られるおもちゃやからくりについての蘊蓄も引き込まれました。

    ネタバレ喰らっても楽しめるってすごい(でも避けたい)。

  • 以前読んだのは、高校の卒業式が終わった後。大学の入学式までの、ポカ〜ンと腑抜けのようになっていた頃(^^ゞ
    特にすることもないので、近所の小さな本屋に行っては面白そうな本を探しては買って帰って。
    家で音楽を聴きながら、ボケーっと買ってきた本を読む。
    毎日、それの繰り返しの、ムダで退屈な、でも、ちょっと幸せなw時間だった(爆)

    当時は「ミステリー小説」なんて言葉はなくて。それらは「推理小説」と呼ばれていたと思う。
    その「推理小説」を好んで読むようになったのは、受験も迫った高3の秋。クラスの友人が「読むか?」と横溝正史の本を寄越してきたからだと思う。
    それが『八つ墓村』だったか、『獄門島』だったかは憶えていない。
    でも、読みだしたら、とにかく面白くて。
    読み終わるなり、ソイツに「別のヤツを貸せ」と、次々と借りて読んだ記憶がある。
    それらは、もちろん「推理小説」というジャンルの小説だと知っていた。
    が、その時は「推理小説」として読んだのではなく。岡山物の舞台である、田舎の雰囲気を味わいたくて読んでいたような気がする。
    もっとも、『悪魔が来たりて笛を吹く』や『病院坂の首縊りの家』といった等々力警部物の舞台は東京なのだが。
    戦後すぐが舞台になっているせいか、現実とは違う世界を楽しんでいたように思う。
    つまり。目の前までに迫っていた受験からの逃避として読んでいた、ということなんだろう(^^ゞ

    そんな受験の憂さ晴らしに読んでいた「推理小説」として読まない、「推理小説」だったがw
    受験が終わる頃には、広く浅く、いろんな作家に手を出すようになっていた。
    と言っても、近所の小さな本屋に並んでいる「広く浅く」なので。
    実際には、「ごくごく狭い範囲で、1冊か2冊」だと思う(爆)


    そんな受験も終わって、ほっとした頃に近所の本屋で見つけたのが、これと『湖底のまつり』だった。
    目についたのは、確か『湖底のまつり』が先だったように思う。
    それは、たぶん、高3の秋(?)に読んだ、武田泰淳の『森と湖のまつり』が面白かったからだと思う。
    話は脱線するけどw、高校生くらいまでは、本屋にある本が本の全てだったから、その本屋で面白そうな本を探すしかなかった。
    でも、だからこそ、(その本屋にある)いろんなジャンルの本を読んでいた気がする。
    今は、それこそアマゾンで、いくらでも本を探せるし。ネットで好きなジャンルの本を探すこともできる。
    もちろん、それはいいことだし。いろんな種類のジャンルの本を読もうと思うなら、無限に探せる。
    ただ、だからこそ、特定のジャンルや話題の本にばかりに目がいってしまう面もあるような気がするかな?(^^ゞ

    話は戻るw
    本屋で『湖底のまつり』に目が止まって。それを手に取ろうした時、当然、その横にあった、この『乱れからくり』に気がついたんだろう。
    どっちを買おうか、迷った記憶がある。
    繰り返すようだが、推理小説を推理小説としては読まない自分だったが、それでも推理小説として面白く読んでいた面は多分にあった。
    だから、本の内容紹介を読んで、いかにも推理小説っぽい感じの『乱れからくり』の方がいいかなーと、ちょっと思ったような気がする。
    にもかかわらず『湖底のまつり』をレジに持っていったのは、当時、自分が18歳の男の子だったからだ(爆)

    そんなわけで。『湖底のまつり』が、色々な意味でスゴく面白かったこともあってw
    確か、次の日の午前中だったと思う。この『乱れからくり』を買いに、また近所の本屋に向かった。
    定かじゃないけど、たぶん、面白くてあっという間に読んじゃったんじゃなかったかな?
    『湖底の祭り』みたいなエッチなシーンがなかったことは、ちょっと残念だったものの(^^ゞ
    面白さで言うなら、こっちの方が断然上だった。

    そんな『乱れからくり』だが、今読んでみると、ちょっと出来すぎかなぁ〜なんて思うw
    出来すぎというよりは、作りすぎ?
    推理小説ファンのための推理小説って言ったらいいのかなぁー(^^ゞ

    ミステリー小説をミステリー小説として読まない、つまり、トリック云々ではなく、あくまでストーリーを楽しむためにミステリー小説を読む自分としては、いろんな意味で、ちょっと物足りない気がする。
    もちろん、面白いのは面白い。
    犯人がわかって読んでも、面白かったくらいだ。
    ただ、宇内舞子があまりにオールマイティーすぎちゃって。一人訳知り顔にいろいろわかってる展開を読んでいると、ミステリー小説ファンの好きな、ミステリー小説のお決まりって気がしちゃうし。
    宇内省三の存在って、結局なんだったの?とか、嫌なヤツであるはずの宗児の嫌ったらしいシーンが出てこなかったり、あと、なにより真棹の心情とか。
    ついでに言うなら、個人的に、なかなかいいキャラだった香尾里の登場シーンがあまりないのもなぁー。
    これだけの話なんだから、それらをみっちり描くことで、このページ数の倍くらいは書いてほしかったなぁーって思っちゃうんだよね。

    『湖底のまつり』が今でも面白いのは、メロドラマがあったからだと思うのだ。
    2つのメロドラマと中二病なメロドラマ、それらを一つのトリックで串刺しにしちゃったような話だからこそ、読み終えた後、登場人物たちの心情に思いを馳せて、「あぁ…」と本を閉じられる。
    これは、そういう感じがないんだよなぁー(^^ゞ


    そんな、70年代の香りでイッパイのこの「推理小説」。
    自ら望まなかった不倫関係に、いかにも70年代って感じに苦悩する真棹に、勝が言った言葉が、”今のこういう時代だからか?”、妙に印象深かった。
    「辻褄の合う人なんて、この世にはいやしません」

    そう。それは、あらゆることがスマートになった今だって変わらないだよw

  • 元警察官で、経済学研究所といいつつ探偵のような事務所の所長とその弟子が追っていた、からくり玩具職人の一族の謎の死を解決するミステリ。

    ってわかりにくいわ。

    とにかく、殺されるのは代々続く玩具職人の一族であり、これが出てきたと思ったらすぐ殺される。本作は、登場人物のキャラクターを非常に重要視しているので、キャラクター立ちは申し分ないだけに、バンバン死んでしまうのが非常にもったいない。

    一様に気になるのは、ほとんどのキャラクターが、全て作者の口調でもって、からくりの歴史を長々としゃべること。これがこの人の作風なのだろうが、ちょっとしつこいと感じる。さらに、一度解説を受けたものを、もう一度さも聞いたことがないような体で、主人公たちが聞いて相槌を打ったりするため、くどい。

    まあそれ以外は、どんでん返しの繰り返しで、結局最初の「隕石の直撃により死亡」以外は納得できる。

    横溝正史+薀蓄という感じの、エンターテインメントであることは明らか。同じキャラクターのシリーズなんかも有るんですかね?

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