『鶴彬(つる あきら)全集』
編集:一叩人(いっこうじん)
発行所:たいまつ社
単行本:474ページ
発売日:1977年9月14日
『十六歳で柳壇に登場し、二十九歳の秋特高警察の拷問によって死ぬまでの短い生涯の中で鶴彬は、短詩型文学史上に不滅の名作と評論の数々を発表し、革新川柳運動の始祖たる業績を遺したのでありました。一叩人氏の多年にわたる努力によって、全国に散在する資料蒐集と本書の編纂が進み「幻の鶴彬」がいま啄木、多喜二に比肩しうる現実の遺産として結実したことを、諸賢と共に喜びたいと思います。(「刊行にあたって」)』
メモ:
『作品 昭和十二年十一月十五日 『川柳人』二八一号十九頁特別欄
高粱の実りへ戦車と靴の鋲
屍のゐないニュース映画で勇ましい
出征の門標があってがらんどうの小店
万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た
手と足をもいだ丸太にしてかへし
胎内の動きを知るころ骨がつき
註 右の一連の作品は、発表された最後の作品であるが、中でも五作目「手と足を……」は、鶴彬の最高の代表作として、また、反戦作品の尤として知られている。』427p
姉 妹 つぎつぎに 年貢の穴埋め
凶作を救へぬ仏を売り残してゐる
ふるさとは病ひと一しょに帰るとこ
玉の井に模範女工のなれの果て
貞操と今とり換へた紙幣の色
母国掠め盗った国の歴史を復習する大声
ユダヤの血を絶てば狂犬の血が残るばかり
奴隷となる子鳥を残すはかない交尾である
フジヤマとサクラの国の餓死ニュース
万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た
青空文庫『鶴彬全川柳』
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