人間滅亡的人生案内 (1971年)

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感想・レビュー・書評

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  • 学生運土はなやかな時のお悩み相談である。学生だけでなく、中学生や大人、年配の人まで相談している。
     相談者の文章の文字が小さいのが難点であるが、回答は面白い。

  • こんな視点持ったことがなかった。
    常識的なのにそれに囚われていない。
    時には正反対の意見をちらつかせて揺さぶってくる。
    とても面白かった。

  • この本は、だーいぶ前に読んだことがあった。しばらく前に、本読みの友といろいろ語りあっている中で、「仕事」についての話にからんで深沢七郎の話が出て、そしてこの本のことも出てきて、また読んでみたくなって図書館で借りてきた。

    私が生まれた頃に若かった人たち(=団塊の世代あたり)の相談内容に、誰しも若いときがあったんや…と、顔見知りの団塊付近の方々を思い浮かべたりもしながら、読んだ。

    友と「仕事」について話したなかでこの本が出てきたこともあって、深沢七郎が若い人たちからの相談に答えて、そういうことを書いてる文章に目がいく。

    ▼なんにも考えないで、なんにもしないでいることこそ人間の生きかただと私は思います。ただ、生きていくには食べなければならないのです。だからお勤め仕事もするのではありませんか。仕事をすることは食べること以外の意味を求めてはいけないのです。…(略)…どんな仕事でも仕事はツマらないのです。食べる報酬をもらうのですからね。(p.14)

    「仕事」に「生きがい」とか「やりがい」を求める圧力みたいなものが強くなってる気がするなーと思うこの頃、友は「仕事と生きがいは別でいいのでは」という。そういう話から、深沢七郎が出てきたのだ。

    「生きがい」「やりがい」「評価」みたいなのが「仕事」につきまとってくると、仕事がうまくいかないといっては、「自分の人生はもうダメ」な気分になる人がぞろぞろ出てくるように思える。そういう風潮を感じるなかで、深沢七郎が「仕事は食うためや」と繰り返し言ってるのは、ココロにひびく。

    ▼仕事は食うためのものだから給料さえ貰えばいいのです。仕事はその人の人生に何の関係もないのです。仕事はめしを得る方法で、そのほかは考えたいことを考え、したいことをすればいいので、目下、貴男は平和な日を得ている筈だと思います。(p.138)

    深沢がこう呼びかける「貴男」は、24歳の人で、仕事のほかに詩や絵など芸術創造が好きだといい、しかしそれを社会という大きな奴が拒絶する…私はどう生き、どんな道を進めばいいのかと相談を綴っている。

    別の、高校を出てフラフラしている、社会を構成する一員にはなりたくないという18歳に対しては、深沢はこんなおすすめも述べている。

    ▼いちばんおすすめすることは行商などやって放浪すること、お勤めなどしないこと、食べるぶんだけ働いていればのんびりといられます。(p.87)

    深沢はこの人生案内を書いていたころは、埼玉でラブミー農場というのをやっていたらしい。この本の巻末の「小さな質問者たち」という、あとがきのようなページには、上半分にその農場とおぼしき写真が並び、その下には、農業をしたいといってこないだ若者がやってきた…という話が書いてある。それが「食べるぶんだけ働いていれば」という深沢の働き方やったんかなーと思う。

    「働くのは食うためだ」という深沢の、「めしを食べて、排泄する」ことを書いた文章も、じつにすっきりしている。

    ▼うんと、めしをたべて、うんと排泄すること、下水などがつまったときはうんと水を流すことと人間の身体の仕組は同じ組立だと私は思います。(p.51)

    友が、かつて読んだときに目からウロコが落ちたと言っていたのは、たぶんここだ。「教師の仕事がいやでいやで登校するのが苦痛な日があり、生徒にすまない、教える力がない、自分に向いていない…」などと考えてしまう教師からの相談に、深沢が答えたところ。

    ▼生きている、そのときだけが人生であり、一生なのです。つまらないことを考えないで刹那主義でいることです。教師というのは職業で、仕事です。生徒なんかに苦痛を考える必要はないのです。月給だけの価値の働きをすればいいのです。それ以外を考えることは教師としては悪いことだと思います。(p.129)

    「生徒なんかに苦痛を考える必要はないのです」のところは、「生徒なんか【の】苦痛を考える必要はないのです」のような気がする。「月給だけの価値の働きをすればいい」「それ以外を考えることは教師としては悪いことだ」などというのは、マジメな教師が読んだら怒るかなーーと、何人か知ってる学校のセンセイの顔を思い浮かべてみた。

    ところで、この本は、私が図書館で借りたやつが1971年初版の1974年に10版というものだった。この古い本が、2013年に復刊されているそうだ。私が読んだ古い本には、時代とか深沢世代の言語感覚の部分で、「今」の時代にはあかんかもという表現がちらほらあった。そのあたりの処置はどうなっているのだろうなと、ちょっとだけ興味がある。

    (12/10了)

  • 2010/11/29購入

  • もらったきり読んではいない

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