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感想・レビュー・書評
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この本に含まれているのが「フリードリヒの遍歴」で、アイヒェンドルフの長編第一作になります。原題は「予感と現在」というまったく違うタイトルなので、論文なんかだと「フリードリヒの遍歴」って書く人もいれば「予感と現在」というタイトルで書く人もいて混乱することこの上ない。ヴィルヘルム・マイスターを念頭に置いた訳題なのだろうけれど。アイヒェンドルフ自身の従軍経験をもとにした部分があり、普仏戦争で荒廃したドイツを憂いる青年たちの物語。旅の最後にたどり着く故郷の庭園はエデンの面影を残すけれど、そこで再会する兄の存在とその故郷は、ずっと老年になってアイヒェンドルフが本当の自分の故郷を訪ねたときの詩と比べると美しいほどの物悲しさに包まれる。後の歴史を知る私たちや、老年のアイヒェンドルフにとって、未来を知らないフリードリヒたちの若々しさはとても暖かいものに感じる。物語冒頭の急流の渦と山上の十字架というモチーフは、ロマン派が形の好んだものだけれど、言語ではこれでしか読んだことがない。深い象徴性と写実描写のあいまった、素晴らしい部分だと思っている。
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