毛沢東最高指示―プロレタリア文化大革命期の発言 (1970年)

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  • この本の編者の新島淳良とは、高校生のときに魯迅に傾倒して読み込む過程で、参考文献として彼の『魯迅を読む』と『阿Qのユートピア』を読んだのが最初の出会いでしたが、そのあとに、共同体=コミューンへの関心から、やはり彼の実体験にもとづく『ヤマギシズム幸福学園』や『さらばコミューン』を手にとるに到って、単なる魯迅の啓蒙者という狭い枠には収まりきらない特別の人という意識を抱いていました。

    ただし、彼のもうひとつの顔、熱烈な毛沢東主義者の様相を呈した顔には、あえて接しないように、その方面の著作は読まないようにしてきました。それは、ひとえに、失脚していた毛沢東は文化大革命という見せかけの改革運動を起こして権力奪取を目論んだ極悪人である、という本家本元の中国をあげての、あるいは世界中の歴史家というより今や常識化している認識を、まず全面的に受け入れて諸著作を読むという態度に徹したためでした。

    ひとりで対抗してもどうなるわけでもありませんが、10年余りかけて、あまねく洗いざらい歴史的事実のもとの毛沢東批判を総網羅的に読んできても、いまだにこの毛沢東の野望・自己の神格化・国家と党の私物化・自分に敵対する者への残虐な粛清など、破壊と殺戮の暴挙と呼ばれる裁断を、私は真に受け入れることができないでいます。

    それは、哲学から政治・戦略論まで、興味のおもむくままにマルクスならびにレーニン、そして毛沢東を読んできたなかで、とりわけ『実践論・矛盾論』を表した毛沢東がそのような究極のドグマティズムに陥るはずがなく、それに、文化大革命のそもそもの目的は、革命を逸脱して資本主義に横滑りしようとする、いわゆる走資派の動きを、正して封じ込めて、軌道修正して正常な路線に戻すことだったはずなのですが、ひょっとして、あれは、その彼らが、毛沢東の動きを利用して、攪乱して、正常なドグマを排する整風運動を阻止して、混乱させることによって、逆に毛沢東自身を悪者にすることに成功した一大イベントだったのではないだろうか、などと思ったりしているのです。

    まあ、これも、ひとえに現実をミステリーのように自分勝手に解釈する、私の悪い癖が頭を持ち上げた情況が現出しているというわけで、もっと詳しい人とか主義者の方に話したところで一笑に付されるだけですが。

    そんなこんなで、一昨年あたりから、今度は毛沢東を絶賛する方々の著作をポツリポツリ読んできましたが、このたび目出度く、中国共産党からなかば秘密裏に提供された毛沢東の内部論文という体裁の本を入手。さあ、はたして新島淳良の思いのたけを汲み取れるか、否、違った、毛沢東の、でした。

    それから、もうひとつの話題。あまりどころか,絶大なるくらい気に入っていない村上春樹の『1Q84』なのですが、なんとこともあろうか、タイトルのQは魯迅の『阿Q正伝』のQなのではないか、とか、登場人物のひとりのモデルが、この本の編者の新島淳良なのかもしれない、という風評があるそうで、まさか、そんな含みがあるはずも金輪際なく、でも、世の中には私以上に想像力のたくましい方がまだいらっしゃることを知って、安堵しました。

  • 新島淳良がいろいろな資料からひっぱって編集した、文革期(64~69年)の毛沢東発言集。形式を見て瞭然なように新たな『語録』を作らんという野心的な一編。切り抜きが激しいので資料的価値は落ちるが、古書価を考えると手頃な文革資料といえる。ちなみに約80頁にわたる編者解説の古色蒼然ぶりはすごい。

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