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感想・レビュー・書評
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所在:紀三井寺館3F書庫 請求記号:908||セ2||6
和医大OPAC→http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=14063
3F書庫にひっそり眠る、見た目は古びた文学全集。
この第6巻には長編小説「マルテの手記」、評論「ロダン」ほか、「ドゥイノの悲歌」「オルフォイスへのソネット」などから選ばれた、リルケの詩作品の精華も収録されています。
いまの学生さんは見向きもしない…かもしれませんが、「マルテの手記」は大山定一による名訳、しかも現在流通している新字新かなの新潮文庫版とは違い、旧字旧かなで読めるというのが、古い文学全集ならではと言えるでしょうか。
「マルテ~」の有名な書き出しの一文はこうです。
「人々は生きるためにこの都會へあつまつて來るらしい。しかし、僕はむしろ、ここではみんなが死んでゆくとしか思へないのだ」
この書き出し部分の訳は、「マルテ~」の数ある訳のなかでも、大山定一の訳が、いちばん印象に残るのではないかと思います。
今の学生さんは、リルケというと、どんなイメージを持っているのでしょうか。
古めかしいような、もしくはロマンティックな詩を書いている…そんな先入観もあるかもしれません。
かく言う私も、実はそう思い込んでいたのですが。
実際に読んでみると、前時代的なロマン主義的なものではなくて、「マルテの手記」では現代社会にそのまま通じるようなパリの風景が描かれていますし、現代人の心の悩みに照応する詩が数多くあります。
名作、有名な人の作品であればあるほど、すでに知っているような気になって手にとらなかったり、先入観から敬遠しがちということもあるかもしれません。
でも、それは、もったいない!
私は遠回りして今やっとリルケに辿り着いたところですが、若いうちに名作を読んでおくのは、かけがえのない読書体験ではないかと思います。
(スタッフN)
【併読のススメ】
『リルケ全集―詩集』
和医大OPAC http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=4911 -
バランスのよい編集内容。全体に訳がよい。フランス語で書かれたという『薔薇』の訳が格調高くて、すばらしい。薔薇の香りが実際にしてくるようだ。もしかしたら、原詩よりも上等に仕上がっているのでは? いずれにしても、薔薇からこれだけの深遠にして豊潤な世界を展開できるとは、リルケは凄い人だと改めて思った。『マルテの手記』訳もすばらしい。解説も親切で、安心してリルケの世界に浸ることができる。