無宿人別帳 [DVD]

監督 : 井上和男 
出演 : 佐田啓二  岡田菜莉子  田村高廣  渥美清  中村翫右衛門  三國連太郎 
  • 松竹
3.50
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988105054226

感想・レビュー・書評

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  • 『無宿人別帳』(むしゅく・にんべつちょう)。レンタル店の時代劇コーナーでふと目に止まって観たくなった映画。なぜなら『コルトM1847羽衣』を読んだからで、この映画も同じく佐渡を舞台にしているからだ。ちょうど『ブラタモリ』の佐渡回も再放送されていた。いま、俺の中でサドが熱い!どサドである。

    原作、松本清張!
    清張さんは社会派ミステリのイメージがとても強いが、時代小説もたくさん書いている。と書いたが私も時代劇を観るようになった最近までまったく知らなかった。

    しかし映画化されたのは『かげろう絵図』と、この『無宿人別帳』のみ?テレビドラマ化はかなり多くて、近年だと2015年にBSジャパンの『松本清張ミステリー時代劇』など。あの枠はすごく面白そうなのに終了、DVD化もされてなさそうなので残念。要潤の『人形佐七捕物帳』も観たかった。

    この映画は『無宿人別帳』というタイトルだが、原作は『佐渡流人行』で別の短編集なのでややこしい。『無宿人別帳』収録の『逃亡』と『佐渡流人行』を合体させてある。あぁ、ややこしい。

    出演者がとんでもなく豪華で鼻血が出そう。
    佐田啓二、岡田茉莉子、田村高廣、二本柳寛、長門裕之、三國連太郎、津川雅彦、宮口精二、中村翫右衛門、伴淳三郎、左幸子、渥美清、そして西村晃、須賀不二雄、河原崎次郎。中井貴一の父・佐田啓二は事故で亡くなる前年。長門裕之と津川雅彦兄弟が、それぞれ奉行所と水替人足という別の立場で出ている。

    プラス、ヒロインが岩本美代(新人)。

    『芋たこなんきん』で國村隼の母親役の、岩本多代さんである。あのドラマでめちゃくちゃ演技が上手いなーと思いながら見ていた。残念ながら岩本多代さんは2020年に亡くなられた。遺作は『私の家政夫ナギサさん』の大森南朋の母親役。

    特撮ファンには『怪奇大作戦』第1話のキングアラジン田口計の奥さん役と言った方が伝わるだろう。そういえば『究極超人あ〜る』でキングアラジンの真似をしていたのである。田口計さんは向井秀徳そっくりなのである。それは、誰も、ワカ、ランのである。


    お話。享和の時代だから1800年代初頭。無宿者たちが唐丸駕籠に入れられ佐渡送りにされる。使役されるのは掘削ではなく水替人足で、鉱山を深く深く掘ったため地下水が出る。それを延々と汲み出すという、単純だが過酷な重労働で、3年以上生きられないとも言われていたそうだ。記録に残っているのは1874人。約90年間で1874人か?これを少ないとみるか、多いとみるか。数字では計れんのである。

    佐渡金山公式ホームページに、以前は水替人足の記述はあったが、現在はなぜか削除されている。よく探さないとわからない、小学生の社会科見学用の事前資料に記述されているのみ。ウィキペディアの「佐渡を舞台とした作品」にも、『無宿人別帳』や『コルトM1847羽衣』は掲載されていない。

    新任の奉行(田村高廣)が不正を正そうとするが、既得権益を失う者たちにより策謀が巡らされる。そして人足のまとめ役の三國連太郎の発案により、水替人足たちが佐渡から脱出しようとするが……。

    という、群像劇。

    正直言ってあまり面白くはなかった。井上和男という監督の手腕のなさや、原作が映画に向いてないせいなどもあると思うが、群像劇の登場人物の背景の描き込みが薄く、散漫になっている。もっと絞って主人公中心に描けばよかったのではないかと。

    脚本は小国英雄、黒澤明の脚本家チームのまとめ役。しかし面白くない。黒澤作品が面白い最も大きな理由は、脚本家チームで書いてたことだと思う。因みに松本清張本人が評価していた映画化作品は『張込み』『黒い画集 あるサラリーマンの証言』『砂の器』の3本のみで、これらはやはり黒澤脚本チームの橋本忍。

    もうひとつの理由は、効果音がついていないこと。
    斬殺音、斬撃音がついたのは黒澤の『用心棒』からと言われていて、1961年。60年代前半の映画は、斬撃音がついていないものや、部分的なものもまだ多かった。大映の『忍びの者』が62年でまだついてなかったような…『座頭市』の3作目が63年で、これにはうっすらとついていた。

    『無宿人別帳』は1963年だが、斬撃音がまったくない。殴るシーンの効果音もない。今はこれらがついているのが当たり前なので、やはり物足りなく感じる。
    逆に、いくつかバイオレンスシーンがあって、これはめちゃくちゃ凄い。しかし無音なのである……あぁ、ここに効果音がついていれば……!!

    かつての松竹には、時代劇のイメージがまったくない。時代劇と言えばやはり東映と大映で、松竹はホームドラマや喜劇。70年代以降のテレビ時代劇は必殺シリーズなど色々あるが、それ以前の時代劇はあまり思いつかない。つまらない理由のひとつかも。

    しかし、松本清張の社会派リアリズムというか……時代劇でも民の視点から描いている点はよくわかる。とにかく重いし暗い。渥美清さんが出ているのに、笑いのシーンがひとつもない。この徹底ぶりが良い!

    ほかに、水上輪(アルキメディアンスクリュー。ポンプ。)を見られたのは良かった。

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