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- / ISBN・EAN: 4988105059849
感想・レビュー・書評
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篠田正浩監督の『乾いた花』。原作は石原慎太郎。
篠田監督作品は、10年ぐらい前に寺山修司脚本の『夕陽に赤い俺の顔』(1961年)を観たのが初めて。内容はもうほとんど覚えてないけど、印象としては「松竹ヌーヴェルヴァーグの人なのに、日活の映画みたい」という感じで、ダサいなと思ってた。
次に、日本映画の上映会で昨年観た『心中天網島』(1969年)。こちらは非常にスタイリッシュでカッコよく、『夕陽に赤い〜』の印象しかなかったのでびっくりしました。これはATG製作作品なのも大きいと思う。
それで今回の『乾いた花』(1964年)。こちらは製作がにんじんくらぶ。にんじんくらぶは岸恵子・久我美子・有馬稲子の三人が中心となって発足した、インディペンデント系の映画会社で、製作は1955〜1965年の約10年間。
ちなみにATGの第1回製作作品、勅使河原宏監督の『おとし穴』は1962年なので、にんじんくらぶは五社協定後最初期の独立系映画会社。
『乾いた花』も『心中天網島』同様、スタイリッシュでカッコいい。池部良&加賀まりこ主演のノワール映画。
池部良がヤクザで、加賀まりこがギャンブラー。タイトル『乾いた花』の花とは、花札の意味と、性的な意味の花のダブルミーニング。
石原慎太郎原作なので、他の作品と同じくニヒリズム。加賀まりこ演じる冴子は、大きい額の賭けにしか生きる意味を見出せない。あるいはスピード狂。そしてドラッグ。このふたりは乾いた花、つまりセックスしない。セックスで繋がってなくて、花札がその代わりという関係。
この映画、コッポラやスコセッシが大好きで、映画狂のスコセッシは30回以上も観たそう。
私は北野武の『アウトレイジ』に設定が似てる箇所があると思う。ひとつめは関西ヤクザが関東に勢力を伸ばすとこ。もうひとつは、ヤクザの親分(宮口精二)が歯医者に行くとこ。北野武はスコセッシから多少なりとも影響を受けてるし、共通性もあるので、北野武がこの映画に影響を受けてたとしてもなんら不思議ではないですね。
キャスト、池部良さんは私らにとっては『宇宙大戦争』『妖星ゴラス』での「善良な科学者」。大戦中は士官で、終戦時は中尉だったとか。なので軍人、科学者役も納得。
そして、ヤクザ映画だと健さんの相棒。小津作品だと『早春』のみに出てて、浮気する夫。
色んな役をされているけど、やはり良い人のイメージが強い。『昭和残侠伝』の直前の作品が『乾いた花』で、ヤクザ役のきっかけになったとか。
加賀まりこさんはそのまま、奔放な小悪魔。『乾いた花』の20年後、1984年の『麻雀放浪記』にも出てたけど、やはりギャンブラーの役だった。亡くなられた和田誠さん(平野レミさんの夫)も映画マニアだったから、この映画のことが念頭にあったのかもしれない。
あとは次郎の役でささきいさお!
そして杉浦直樹さん。私なんかは後年のバーコードに近い状態の杉浦さんのイメージが強いですが、若い頃はものすごくカッコいい。少し前に『ときめきに死す』も観たけど、良い俳優さんだなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
クライテリオン盤にて鑑賞。
いわゆるフィルムノワールの一つに入るこの作品の舞台は60年代の横浜。日本であってどこか異国の雰囲気が漂う街に池部良扮するヤクザのニヒルさが合ってすごくカッコイイ。謎だらけの美女の加賀まりこもこの世のものとは思えないかわいさ。
ちょっと雰囲気のちがうやくざものだった。スタイリッシュなやくざものといえばいいか。ドスをきかせるではなく、肩で風をきってものをいうやくざの映画だった。
カッコイイ映画でした。