The Big Short: Inside the Doomsday Machine (English Edition) [Kindle]
- Penguin (2011年1月27日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (283ページ)
感想・レビュー・書評
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本著は2008年に起こった米国金融危機をテーマにした事実に基づく小説。映画化(アカデミー賞受賞)もされており、今回は映画を先に見てから読み始めた。
金融危機が起こる前の住宅ブーム(サブプライムローン)の最中に金融危機を予言した稀有な数人のファンドマネジャーを主人公として描く。
当事者でさえ理解できない高度に複雑化した金融スキーム、その裏付けとなるべき不動産業界の実態把握の欠如、S&P等格付機関の無責任な格付。
今から振り返ると、何故にその杜撰な仕組みに気が付かなかったのか不思議な気もするが、この小説を読んでいると、登場するファンドマネジャーの目の付け所が興味深く、金融恐慌が到来することを確信する過程は推理小説を読んでいるが如く惹きこまれてしまう。
当時の金融危機においては、住宅を失い、職を失い、多くの国民が苦しんだ一方で、多額の税金が投入され、Too big to failが社会問題にもなり、現在でもその傷跡が癒えない。(大統領選でも金融機関の影響力について主要テーマのひとつになっている)
多額の税金を投入して早期に金融システムを立て直し、加えて金融関連法制を強化してきたことは、政治、行政の対応としては正当化できると思っているが、当時の杜撰な証券化スキームや当事者達の行動原理を見ると詐欺と捉えられてもおかしくない。
また大手金融機関の経営者の殆どが法的に罰せられることもなく、国民にそのツケが廻されている、と酷評されても反論できないのだろう。
本著は金融危機の実態を曝け出し、メスを入れた。その意味でも一読の価値がある。
特に、繰り返しになるが、当時の金融危機は、今尚、米国社会に大きな影響を与えていることからも、現在の米国の世相を知る上でも必読書になるのだろう。
因みに、本では金融専門用語が頻出するので難解な部分があり、映画の方がより判りやすく、コメディタッチの部分もあり面白い。詳細をみるコメント0件をすべて表示