マイ・バック・ページ [DVD]

監督 : 山下敦弘 
出演 : 妻夫木聡  松山ケンイチ  忽那汐里  石橋杏奈 
  • バンダイビジュアル (2011年12月1日発売)
3.15
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本棚登録 : 540
感想 : 109
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4934569642226

感想・レビュー・書評

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  • 安田講堂での衝突で傍観者でしかなかったことに引け目を感じているジャーナリストが、武装闘争を掲げる左翼グループのリーダーと知り合い、道を誤っていく様を描く。
    若気の至りというには愚かすぎる結末。殺人集団の幇助。
    思想に囚われた末に夢だったジャーナリストの職を失った主人公が、かつてフーテン仲間だった男が小さな居酒屋で家庭を持ってるのを見て涙を流すのが印象的。主人公が思想という実体のないものに囚われている間に、思想とは無縁の社会の底辺にいた友はささやかな幸せを手に入れている。

    こういう左翼エリートの暴走の話は、「日本のいちばん長い日」で描かれた宮城事件の青年将校を思い出させる。思想的には対極にあるんだろうけど、どちらもエリートゆえの独りよがりの自負心が彼らを行き過ぎた行為に走らせるというのはあるんだろうな。左翼エリートは社会的弱者のために自分たちがやらなければといって息巻いているけど、そんなのがあっても無くてもお構い無しに、当事者の社会的弱者たちはたとえば主人公の友人のように自分たちの力で強く生きている。
    自分以外の誰かのためや崇高な何かのために熱くなっているようでいて、その実、本当は自分のために自分のやりたいことを勝手にやっている独りよがりでしかないのかもしれない。

  • どうしてこれを見ることになったのか、記憶がない。が、届いてしまったので、見た。
    全共闘時代、一人のジャーナリストの話なんだけど。
    この主人公が、ナイーブでセンチメンタルで。本人も映画の中で言ってたけど、子どもです。
    この職業をするのには、向かないかなと思った。
    でも、最後、昔、取材のために騙した人と再開して、未だに騙したことはバレてなく「あの時は楽しかったよね」と
    話しかけられ、たまらなく泣くシーンがあった。
    ここで、告白し謝罪するかと思ったら、泣きながら笑顔でなんでもないってそぶりを見せたあたり、この人の成長記録みたいになってるなと思った。

  • しっかりと人生を歩む事は難しいと感じさせられた映画。

    この時代の事は知らない。
    これを史実として捉えて見てはいなかったので、少々見方に甘さがある事を前置きして。


    ――ああ、これは駄目な奴だ。

    自分のせいで商いに失敗してぼこぼこに怒られたフーテンを慰めるため(失敗を少しでも取り戻してあげるため)、お金を差し出す沢田の姿と、
    「何のためにセクトを作るのか。作ってどうしたいのか」と聞かれて言葉に詰まった梅山の姿にそう思ってしまった。
    同時に酷く共感し、彼らが駄目でなくなる事を願った。


    だから「あいつは偽物だ」と言う中平の言葉に胸を刺されたし、梅山の中に何かが生まれ育っていく事を願ったけれど、彼の行動は全て他人任せで、行動がともなわない。
    沢田はそんな彼の「行動しているように見せた姿」に乗せられて協力するが、それだって前園を紹介しただけで、彼自身特別何をするでもない。彼が払った実質的な犠牲は10万円の取材費のみ。記事になれば経費として返ってくる予定だったのだろうからそれすら犠牲とは言えない。
    梅山も沢田も子どもだ。沢田は夢を語らないだけ。やっている事は過激派とジャーナリストという立場の違い以外梅山と変わらず、空っぽな自分のまま夢を見ている。

    誰だってそう言った、”空っぽで夢を見るだけの自分”を感じた時はあるかも知れない。
    今現在その真っ直中であるかも知れない。
    私自身、空虚な夢を毎日語っているような気がする。


    梅山の行為がついには思想犯を逸脱し犯罪者であると新聞社上層部に見なされ、彼に関する記事を書く事が出来なくなった。
    上からの指示に諾々と従わざるを得ず、警察からの事情徴収にも何も応えなかった沢田の姿は、保身をしているようにしか見えなかった。
    潔さ、と言う点から見れば、記事を無理矢理にでも書くか、警察に洗いざらい話して考え方を改めるかすべきなのだろう。
    自分を貫くためには黙っているのが正解なのかも知れないが。



    夢は見るだけなら無害か、と言えばそうではない。
    語られる夢に行動と責任がともなわなければ夢は一人歩きし、結果、惨事を引き起こす。
    自分自身の言葉に責任を持たねば、こうなってしまうと言う最悪のシミュレーションだと感じてしまったが、これは過去にあった現実なのだ。
    だからこそ、事件の後、梅山の魔法から覚めた沢田には、何かしっかりと地面を踏みしめる物を感じられる描写が欲しかった。
    しっかりと地面を踏みしめていた者は作中見渡す限りどこにもいなかった。保身と夢ばかり考えている奴らしかいなかった。いや、一人だけいた。それは、沢田が梅山に出会う前取材したフーテンであった。彼だけが唯一、所帯を持ち、平凡で堅実ながら人生に誠実に生きていた。それで、再会した時沢田は彼の姿を見て泣いたのだろうか。判然としない。だがもしそうならば、物語の最後において沢田は未だ、踏みしめる足を持たずフラフラと夢を見ているのだろうと思う。

    「私はきちんと泣ける男の人が好き」 と眞子(この物語の中では”最年少”だと思う)が言った辺りから、まあ、どこかで沢田が泣くのだろうと身構えていたせいか、泣いた姿に強烈さがないのが心残り。
    でもまあ、私なら泣くよなとも思う。後悔して泣く。どうして自分は間違えたのだろうと考えて泣く。取り戻せない過去のために泣く。教訓や反省とか、そんな事よりも、喪失感や挫折感に泣く。それは私がまだ大人でないからだと思う。

    重すぎる犠牲をともなった過去は、こうやって書かれた映画(原作があるのですね)によって、ようやく一歩成長への足がかりになれたのだろうか。
    ただ、時が、時代が変わっただけなのだろうか。

    ちゃんとした大人って何なのだろう。
    と考えさせられる。

  • ジャーナリズムの一面が簡単にわかった気になれる感じの作品だった。実際の事件が参考になったようで何だかなぁという複雑な気持ちになれた。演者と役には少し疑問もあったけど、邦画らしい間とか、映像(撮影手法)は凄く良かった。

  • 川本三郎さんの自叙伝を、全共闘世代ではない、けれども戸惑いの描写が巧みな山下敦弘監督が映画化。
    役者さんのラインが、スター感併せつつも嵌まっていて、個人的にもツボな面子ばかりで嬉しい。山内圭哉さんの、スレた半端な凄みとか(※褒めてます)
    敗者の物語って、いいようのないロマンがあるんだよなぁ、やっぱり。
    事件を使命を生き様を、追うような追われるような。駆り立てられる熱、しかし、自分の中の相手を、相手の中の自分を求め、掲げる様は、狂気を帯びながらも、具体というホンモノをも確かに内包していたのかもしれない。虚栄と真実の表裏一体。

    一曲のロックと一遍の物語の共有。
    真夜中のカーボーイ、きちんと泣ける男の人。
    売られているウサギを「かわいそう」と眺めつつ、買って救いはしない女。
    月かベトナムに行けると言われたら、ベトナムに行く、そんな覚悟。

    • 円軌道の外さん

      はじめまして!
      フォロー感謝感激です(^O^)

      山下監督が好きで、この映画も観たかったんやけど、
      なんやかんやで
      うっかり見...

      はじめまして!
      フォロー感謝感激です(^O^)

      山下監督が好きで、この映画も観たかったんやけど、
      なんやかんやで
      うっかり見逃してました(汗)

      けど今回、素晴らしいレビュー読ませてもらって、
      やはり観るべき作品だなと改めて思いました♪

      自分も映画好きだし、今後とも参考にさせてもらうんで、
      宜しくお願いします(^_^)v

      2012/01/09
  • なにやら社会派ドラマな匂いがプンプンしていた本作。
    学生運動のことや時代背景の知識が必要かな?と身構えていたけれど、そんな知識なくてもフツーに青春ドラマとして楽しめました。

    今までとはかなり違う題材だし、ユーモアなしのシリアス一辺倒ですが、熱からず冷たからずの微妙なぬるま湯加減がなんとも山下監督らしかった。

    いろんな感情がごちゃ混ぜになって、涙として沢田の目からこぼれ落ちるラスト。
    あれはきっと、あの頃の自分、青春時代との決別の涙だったんでしょう。

    「きちんと泣ける男の人が好き」

    彼女のセリフが頭の中でリフレインした。

    (2011年 日本)

    • 円軌道の外さん
      はじめまして!フォローありがとうございます。映画好きなのでこちらのレビュー読んで、今後の参考させてもらおうと勝手に思っております(笑)山下監...
      はじめまして!フォローありがとうございます。映画好きなのでこちらのレビュー読んで、今後の参考させてもらおうと勝手に思っております(笑)山下監督の作品はツボだし、レビュー読ませてもらって、魅力的な文章にすごく興味が湧きました。今後とも宜しくお願いします(^O^)
      2012/01/07
    • 375さん
      こちらこそフォローありがとうございます!
      ヘタなレビューで正直恥ずかしいんですが。。文章の練習のつもりでコツコツ書いてます。
      私も円軌道...
      こちらこそフォローありがとうございます!
      ヘタなレビューで正直恥ずかしいんですが。。文章の練習のつもりでコツコツ書いてます。
      私も円軌道の外さんのレビュー、参考にさせていただきますね。音楽のレビューがすごく丁寧で素晴らしいです。
      2012/01/08
  • 学生運動時の話。松山さん演じるキャラにムカついた。こーいう人、悪ぶって、正義かざして、でも結局それは自分自身の想いではなくて、自分自身には何の信念もなくて、周りまきこんで迷惑だけかけて、結局最後は人のせいにするっていう人。今現在でもいるよなー…なんて思いながら見てました。現在にも通じる点があるのかなぁ…って思って。あの頃より明らかに豊かになって成長してるはずなのに、人の想いや心は成長しないんだなぁ…なんて思いました。

  • 妻夫木とマツケンが、CCRの、雨を見たかい?で共感するシーンがいい

  • これは生まれる前の出来事であり、安保闘争〜全共闘〜連合赤軍という過激派左翼運動の歴史は大雑把に知っていただけで、その最中で起きた自衛官殺害事件については全く知らなかった。こういう刑法犯罪において、スクープ目的を超えたシンパシーをもって週刊誌記者がコミットしていたという事実にも衝撃を受けました。「朝日ジャーナル」の存在が左翼運動の実質的な下支えをしていたといいのも興味深い。

    となかなか興味深い内容で、当時を忠実に再現した映像も素晴らしいの映画ですが、映画として面白いかはまた別。やたらダラダラと長いのです。BS放送で見たのですが、セリフがやたら小さくて聞きづらく、効果音やCMで突然音がでかくなってビックリして、ずっとイライラしっぱなしでした。最近の日本映画でこういうの多い気がします。

  • 立川シネマシティで『マイ・バック・ページ』を観た。川本三郎の同名青春記を、山下敦弘が映画化した作品。

    川本さんの原作は、私がこれまでに読んだすべての本の中で五指に入るほど好きな作品。私は2年前に川本さんと鈴木邦男の対談集で映画化が進行中だと知り、以来完成を待ちわびていた。

    で、ようやく観た結果……上出来の映画化だと思った。原作ファンの私も納得。これは青春映画の傑作だ。

    まず、舞台となる1970年代初頭の東京の再現がパーフェクトである。とか言って、私もそのころの東京を肌で知っているわけではないのだが、少なくとも私が知識として知っている1970年代初頭は、隅々まで見事に再現されている。

    山下敦弘と脚本の向井康介は、原作をただなぞるような真似はしていない。随所に潤色を加えつつ、しかも原作のテイスト、エッセンスはちゃんと抽出している。「本の映画化はこういうふうにやるもんだよ」というお手本のような仕事ぶりである。

    過去の山下敦弘作品にあったオフビートなユーモアは影を潜めており(随所で隠し味にはなっているが)、終始シリアスなので、山下ファンは戸惑いを感じるかもしれない。しかし、私はこれこそ山下の代表作になり得るものだと思った。

    俳優陣もみんないい。とくに、新聞記者たちや刑事たちのリアリティはすごい。映画の中の作り物のブンヤ、デカというより、本物の匂いがする。まるでドキュメンタリーのようだ。
    主演の2人もいい。松山ケンイチが演じる虚言癖のある“ニセ革命家”梅山のキャラクターは原作よりも大幅に肉付けされているが、その肉付けも成功している。

    妻夫木聡が泣くラストシーンもよい。『ジョゼと虎と魚たち』のラストもそうだったが、彼は泣く場面で素晴らしい演技を見せる俳優だと思う。

    今作の場合、途中で「私はきちんと泣ける男の人が好き」という印象的なセリフが出てくるので、それがラストシーンの伏線になっていて、いっそう印象的だ。

    終盤、新聞社を懲戒解雇された主人公が映画評論家となって試写会に行く場面では、妻夫木くんが川本三郎に見える。いとをかし、である。

    エンディングに流れるのは、ボブ・ディランの「マイ・バック・ページ」(原作のタイトルもこの曲に由来)を真心ブラザーズと奥田民生が一部和訳して歌った曲。これがまたじつによい。

    ……と、観てきた直後の勢いで絶賛してしまったが、1つ言っておきたいのは、この映画は原作の魅力の半分しか伝えていないということ。
    というのも、映画の副主人公・梅山をめぐるドラマは原作では後半に出てくるものであり、前半はもっとリリカルな60~70年代グラフィティだからである。

    この原作を映画化する場合、後半の事件に的を絞るのは当然で、前半に出てくるさまざまなエピソードまで詰め込んだらストーリーがグチャグチャになってしまう。だからこの脚本の方向性は正しいのだが、この映画を観ただけで原作を知ったつもりになられてしまったら、ちょっと困る。この映画には取り上げられていない前半部分(※)に、いいエピソードが目白押しなのだから。

    この映画が気に入って、しかも原作をまだ読んでいない人には、鈴木いづみ、永島慎二、コルトレーン、鶴田浩二などという時代のアイコンが続々と登場する前半の素晴らしさを、ぜひ味わってほしい。

    ※ただし、前半のうち、保倉幸恵(劇中では倉田眞子)をめぐるエピソードはこの映画で印象的に用いられている。当時『週刊朝日』の表紙モデルをしていた保倉幸恵は、編集部で最も若い記者だった川本さんと親しくなった。彼女は1975年、22歳で鉄道自殺を遂げている。

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