TIME BANDITS
1981年 イギリス 115分
監督:テリー・ギリアム
出演:クレイグ・ワーノック/ショーン・コネリー/イアン・ホルム
ケヴィン(クレイグ・ワーノック)は歴史の本を読むのが好きな少年。テレビと家電にしか興味がない物質主義の両親はそんなケヴィンに無関心。ある晩、眠ろうとしていたケヴィンの部屋のクローゼットから馬に乗った騎士が飛び出してきて壁の向こうに消えて行ってしまった。翌晩、懐中電灯とインスタントカメラを持ってケヴィンが待ち構えていると、今度は6人の小人がわいわい現れる。彼らはある地図を盗んで逃げている途中、彼らがボスと呼んでいる巨大な顔面が追いかけてきて、なりゆきでケヴィンは一緒に逃げ出すが、壁のむこうに広がっていた世界は…。
テリー・ギリアムの初期作品。この監督らしさがギュッと詰まっていてとても楽しかった。主人公が子供ということもあり児童文学的な展開ではあるが、ラストのブラックさも個人的には好き。
小人たちのボスはなんと創造主(神)で、小人たちは樹木の世話を担当していたが、安月給にうんざりして、神の地図を盗んで逃げてきた。神はたった7日間で世界を作ったため、実は綻びがあちこちにあり、その地図には世界中のタイムホールの位置が記されている。小人たちはそれを使ってさまざまな時代を行き来し、金儲けをしようと企んでいた。
ケヴィンと6人の小人が最初に辿り着いたのは1796年で、彼らは遠征中のナポレオン(イアン・ホルム)と出会う。ナポレオンは自分の低身長をコンプレックスに思っており、自分より小さい小人たちを気に入り側近にする。ナポレオン演じるイアン・ホルムは、のちにロードオブザリングでホビットのビルボを演じることになることを思うとちょっと笑ってしまう。小人たちはナポレオンが眠っている隙にお宝を盗んでまた別の時代へ。
今度はどうやら中世の森の中。カップルが盗賊に襲われている。盗賊たちを付けた一行は、彼らの仲間にしてもらおうとナポレオンから盗んだお宝を差し出すが、なんとこの盗賊の頭領はロビン・フッド。義賊の彼は宝を貧者に分配してしまい、小人たちは再び森に逃げ帰る。その頃、創造主と敵対している魔王は、小人たちが盗んだ地図を奪い取ろうと画策中。彼のせいでケヴィンは小人たちとはぐれ、一人で違う時代に放り出されてしまった。
見知らぬ荒野に投げ出されたケヴィン。そこでは鎧兜の男と、馬頭の怪物男と戦っている。ケヴィンが急に現れたおかげで馬頭に勝利した鎧兜の男は、なんとアガメムノン(ショーン・コネリー)でここは古代ギリシャ。ケヴィンはアガメムノンと一緒に宮殿に戻る。利口で勇気のあるケヴィンを気に入ったアガメムノンは、ケヴィンを養子にすると宣言、祝宴を開く。しかしそこに小人たちが現れて、またしてもケヴィンは小人たちと別の時代へ。アガメムノンを尊敬していたケヴィンはガッカリ。
ここで余談ですが、祝宴の場面で巨大な牛のようなものが運ばれてきて、剣士がそれを真っ二つにすると中に詰められていた果物等が飛び出してくるという出し物があり、なんか既視感あるなと思ったらつい最近再読したばかりの『サテュリコン』トリマルキオンの饗宴の中に同じ場面がありました。さらにアガメムノンが馬頭の怪物と戦っているシーンは、フェリーニの映画『サテリコン』でミノタウロスを模した怪物とエンコルピオが戦う場面のオマージュのようです。
さて、一行は次の場面では豪華客船でプロポーズしようとしているカップルの上に落ちてくる。このカップル、中世の森で盗賊に襲われていたカップルと同じ人たち(輪廻してるのかしら)で、パンジーという女性のほうを演じているのが、シャイニングの奥さん役シェリー・デュヴァルでした。一行は客船で寛ぐも、氷山にぶつかりあえなく船は難破。どうやらこの船はタイタニック号だった様子。ここでまた魔王の干渉があり、彼らは伝説世界に放り出されてしまう。
人食い鬼のウィンストン夫妻の漁網に捕らえられてしまった7人は、ケヴィンの機転でなんとか危機を脱するも、船が急に激しく揺れる。なんと船を帽子のように頭の上に乗せた巨人が立ち上がり、陸へと向かって歩きだしている(ここ好きだなあ)ここでもケヴィンの機転で危機を脱した一行は、伝説の宝を求めて暗黒城へ向かうことに(実はこれ、魔王の暗示に操られている)
しかしあっさり魔王に捕まり、地図を奪われて、一行は宙吊りの牢屋に閉じ込められてしまった。ここでケヴィンがインスタントカメラを持ってきていた伏線が生かされる。序盤で地図と一緒に撮影した記念写真から、牢屋の下に脱出口となるタイムホールがあることを確認した7人は脱出を試み…。
一行が魔王に追いつめられてしまい、ケヴィンがおとりになることを名乗り出て魔王をひきつけている間に、さまざまな時代に移動した小人たちが戦車や戦士を引き連れて戻ってくる場面はテンションあがる!…しかし魔王の前にあっさり敗北するのだけど。最終的には創造主が現れて魔王を黒焦げの塊に変えてしまう。バラバラになったその破片を回収して、サラリーマンの上司みたいな姿に変身した創造主と小人たちは去ってゆき、ケヴィンは取り残される。そのとき回収しそこねていた魔王の欠片が煙を出し始めて…。
むせて目を覚ますケヴィン、そこは自分の部屋のベッド、でも煙は本物。アガメムノンそっくりの消防士が駆け込んできて燃え落ちる家からケヴィンを助け出す。両親は先に助け出されていたがケヴィンには無関心で、火事の原因について口論している。原因となったオーブントースターを二人は開ける。そこに入っていたのは例の魔王の欠片。ケヴィンが止める間もなくそれは爆発、両親は一瞬で消え、消防士はウインクして去っていく…。
創造主と会ったときに、ケヴィンが「なぜ悪を造ったのか」と質問する場面など、なかなか哲学的。「必要だからだ」と神は答える。ケヴィンはさらに「どうして必要なの?そのせいで沢山の人が死んだのに」と問う。神は「自由意志のためだ」と答える。深い。ケヴィン少年がとても利発で可愛らしかったです。