渋沢栄一 人生意気に感ず “士魂商才”を貫いた明治経済界の巨人 (PHP文庫) [Kindle]

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  • 「論語(人の道)」と「ソロバン(利益)」の両立を掲げた"日本資本主義の父"渋沢栄一の半生を描いた小説。

    フランスから帰国して主君・徳川慶喜との謁見から始まり、静岡商法会所の設立、大蔵省の改革、第一国立銀行の設立までの渋沢栄一の心境を描いています。

    経済の語源である「経世済民」。意味は「乱れた世の中をととのえ、苦しんでいる民をすくう」です。経世済民をとことん考えたからこそ、渋沢栄一は「論語とソロバン」の両立を第一義に掲げるのです。

  • 渋沢栄一氏を取り上げた小説。フランスから帰国して徳川慶喜に仕える頃から晩年までを描いている(大蔵省を退官後は薄め)。

    渋沢栄一の「本質を見抜く能力」、「人生意気に感ず」や「論語とソロバンの両立」といった考え方はやはり素晴らしい。日本の近代資本主義の父と呼ばれる彼が、「人格主義」の考え方を採っていたのは腹落ち。一方で、理想を掲げながら現実を直視し、藩閥政治に嫌気がさして下野して民間企業を多数設立ところもただ者ではない。

    合わせて感じたのは、歴史の転換や出来事には必ず理由があるということ。歴史小説の読み方が深まった感じ♪

    士農工商の身分制度の概念から武士が商業を毛嫌い→下級武士は失うものが何もなく既成概念に囚われない→下級武士が中心となって商業に力を入れた薩長等の雄藩・海援隊の坂本龍馬が台頭→討幕の中核勢力へ成長。

    また、徳川慶喜が大政奉還の後、朝廷が結局は自分に頼り、再び議会の議長のような立場に戻って権力を握る目算(西周の進言)をしていたというのも興味深い。童門冬二は、慶喜が見落としていた点として、下級武士が権力を握り、新政府を確立する野望・力を持っていたことを挙げている。

  • 【概要】
    株式会社、銀行、証取、商工会堂々を日本につくり、日本資本主義の父と言われる渋沢栄一伝。
    【著者】
    元東京都職員の小説家
    【感想・印象に残った点】
    ・論語に傾倒し、ただ金儲けをするだけでなく、社会に資するべし(論語と算盤)とといた渋沢の思想は、日本の独特の経済・社会発展の源流となっている気がする。Economyが日本語では経世済民と訳されたのも、経済は社会に資すべきものという思想がある。渋沢自身実業家でありながら財閥形成をしなかったことも公共心の強さを伺わせる。
    ・時代柄、途中に藩閥競争、藩閥政治が出てくるが、これが良くも悪くも現在の派閥と酷似。大蔵省は当時は軍等各省庁から予算を強引に要求される、お金を工面するだけの事務屋だったようだが、それを渋沢らが予算制約をもうけ、各省庁に配分する形にすべく抗っている。よくも悪くも当時の様々が今日に繋がっていると感じた。

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著者プロフィール

歴史作家。東京都知事秘書、広報室長、企画調整局長、政策室長を歴任。退職後作家活動に専念。人間管理と組織の実学を歴史の中に再確認し、小説・ノンフィクションの分野に新境地を拓く。『上杉鷹山』『小説徳川吉宗』など著書は300冊を優に越える。

「2023年 『マジメと非マジメの間で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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