利休にたずねよ (PHP文芸文庫) [Kindle]

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  • PHP研究所
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  • この始まり方は…?

    と読み始めたが、なんとも引き込まれる展開。
    どんどんと奥深い底に入り込んでいくように
    時を遡る。

    そこに、利休が茶道へと邁進していく姿、
    さまざまな人との関わり、
    時代背景。
    密やかな想い。

    さまざまなものが交錯して、
    利休の人生が描かれる。

    茶道の美しさにすっかり心惹かれて、
    さまざまな茶器や作法など
    もっともっと学びたくなった。

  • 歴史小説は、難しいというイメージがあり、避けてきていたが、「入社1年目の教科書」の本で、語彙について引用されており、読んでみた。
    知らない言葉が多く辞書で調べながら読み進めることもあったが次第に引き込まれて後半はあっという間に読んでしまった。

  • 日本の、そして戦国時代の美と儚さに飲み込まれた。
    移ろいゆく時間、四季。
    自然と調和した美しさが、ありありと見えた。

  • 松岡正剛氏の著作に触発されてこの本を読んだ。茶道は形式的なものであると考えていたが、工夫をされているというのがよく分かった。物事は、何であれ利休の域に達することは並大抵のことではないが、自分もこのような生き方を目指していきたい。短編がつなぎ合わされているが、北野大茶会のところがおもしろかった。

    〇かろかろとは、ゆかぬ。
    〇あの禿げ鼠(豊臣秀吉)に、美というものの恐るべき深淵を見せつけてやりたかったからだ。
    〇わしが額ずくのは、ただ美しいものだけだ。
    〇美を思うがままにあやつり、美の頂点に君臨する利休が許せないのだ。
    〇あの男(利休)は、こと美しさに関することなら誤りを犯さない。それゆえによけい腹立たしい。
    〇天下の経綸を泰然と語るには、狭苦しい小間より、こういう広間の茶がよい。広間なら、なんといっても、華やぎがいちばんだ。
    〇忠興の父幽斎は、 古今伝授はもとより、 有職故実、能、音曲、料理など諸道に通じ、いずれも奥義をきわめている。
    〇美にかかわることならば、毫もじぶんを曲げない。だれにも阿らない。
    〇ちかごろは、夜明け前の闇に目をさまし、褥で物思いに耽ることが多い。──つまらぬ生き方をした。来し方を思い起こせば、悔いの念ばかりが湧いてくる。 衰えた肉と骨をさいなむのは、砂を 噛むむなしさである。
    〇茶の湯の神髄は、山里の雪間に芽吹いた草の命の輝きにある。丸くちいさな椿の蕾が秘めた命の強さにある。それは、恋のちからにも似ている──。その明るさと強靭な生命力にこそ、賞翫すべき美の源泉がある。なんとかそれを形にしようとつとめてきた。
    〇こころにどんな闇を抱えていても、どうせなら気持ちよく生きたい。
    〇高麗からわたってきた 白磁や青磁は、どれも静かなたたずまいをもっている。ことに青磁の色の深さはことばに尽くせない。音曲はそれとは対照的である。
    〇棒を呑まされるような顔で、それでも儒教の礼法通り、手で杯を隠しながら酒を飲んいる。
    〇刻(四時間)の時間がありましたら、武を錬ることも書を学ぶことも、いや、国家百年の 経略を練ることもかないましょう。
    〇公家ならばともかく、武家がさような遊興に耽れば、いたずらに気がゆるみ、 放蕩が習い性となる。
    〇ほんとうのことは、口にしてはならぬものだ。真実を告げたら、 嫌われる。まことを話したら殺されかねない。なにを感じていても、思っていてもよいのだ。それを口にせねばよいだけのこと─
    〇古い名物の目利きや、ほかの茶会の噂などはけっしてするな。それが嫌みなくできるまでには二十年でもおよばない。
    〇三毒は、 仏法が説く害毒で、貪欲、瞋恚(しんい)、愚痴、すなわち、むさぼり、いかり、おろかさの三つである。
    品性があるかどうか──は、 所詮、うわべの見かけに過ぎない。欲は、欲。
    〇どんなに上品によそおってみても、毒が毒であることに変わりはない。
    〇旅といっても、禅坊主のことだ。ふだんどおりの墨染めの衣を着て、 脚絆と草鞋で足もとをかため、 網代笠をかぶればそれでいい。食事用の持鉢と箸、布巾、それに剃刀、木の枕、脚絆や足袋の替えを袈裟文庫にしまい、大きな布で包んでおく。朝になって、これを首からさげれば、それで、もうどこにでも出立できる。
    〇人は、だれしも毒をもっておりましょう。毒あればこそ、生きる力も湧いてくるのではありますまいか。肝要なのは、毒をいかに、志にまで高めるかではありますまいか。高きをめざして貪り、凡庸であることに怒り、愚かなまでに励めばいかがでございましょう。
    〇ただ四本の細い柱を立て、茅を葺くだけのことなのに、利休が差配すると、屋根のかたむきも、軒のぐあいも、席から見える風景も、じつにしっくりと客のこころになじみ、すわっているだけで、いまこのときに生きていることの歓びが、しっとり湧いてくる。
    〇四季折々の風物にこころを砕き、なにに命の芽吹きがあるかを見つめておるつもりでございます。
    〇人生というのは、勝たなければ意味がない。
    〇茶を飲むのに、外道も王道もあるまい。その日、その時のこころに適うのがなによりであろう。
    〇燃え立つ命の力を、うちに秘めていなければ、侘び、寂びの道具も茶の席も、ただ野暮ったくうらぶれただけの下賤な道具に過ぎない。
    〇天下人になるほどの男は……。鋭さを、見せるも隠すも自由自在。どこまでも鋭くなれるし、それを綿で包み隠し、笑いにまぎれさせてしまうのもお手の物なのだ。
    〇宗易(利休)は、初めて間近に信長を見た。手に鞭を持ち、馬からおりたそのままの格好 で、細い鹿革の袴をはき、黒い陣羽織を着ている。陣羽織がぬらりと光るのは、烏の羽毛を植え込んであるからだ。
    〇大勢の武将と商売や茶の湯でつき合ってきたが、いま目の前にいる信長ほどきわだった鋭さをもつ男を、ほかに知らない。この男なら、ちかづいて損はない。いや、むしろ、早くから信長の真価を見抜けなかったのが、 悔やまれる。
    〇茶碗や茶入の目利きには自信があったが、墨蹟となると、どうにも勝手がちがう。もっと 真筆をたくさん見て、目を肥やす必要がある。
    〇連歌の世界では、つけ句が前の句に寄り添い過ぎていると興趣が削がれる。 付き過ぎと称して評価がさがる。
    〇美しさには、絶対的な法則がある。

  • 緑釉にまつわる秘密。
    よくもわるくも読者の中に利休像ができあがる。

  • 利休は茶の湯も女性も究極の美を求めた。彼がなぜ秀吉によって殺されなければならなかったのか。それは誰よりも秀吉が利休の才知を知っていて恐れていたからだ。独裁者というものは自分より優れ人心を集めるものを恐れる。独裁者の最も大切なものは国民ではなく自分の権威の持続だ。それは現代の独裁者にも通じるものである。これまでどれほどの優れた人物が排除されてきただろうか。

  •  利休が茶の湯の深みにはまっていく道程を描いている。最初の章が切腹当日で、読み進めるにしたがって、過去に遡るという構成。一目ぼれした人を自分で殺した罪悪感にさいなまされて、侘び茶の真髄の奥の奥までたどりつくってことになるのかなと。
     どの章も違う人物の視点ではあるが、利休もしくは秀吉が登場する。利休を描くうえでやはり秀吉は必要。そのため、秀吉の存在感も当然大きく描かれている。中盤は秀吉の本を読んでいる錯覚に陥る。

  • <感想>
    文章が上手い。それが最初の感想だった。
    特に利休に興味は無かったのだが、利休の死の真相を追ったミステリーという切り口に惹かれて読んでみた。
    史実とフィクションが入り乱れ、おそらくこのようなやり取りがあったのだろうと想像させるような物語の運び。利休の切腹から時間を遡る構成の妙。そしてスルスルと脳に入ってくる滑らかな文章。茶道のことは良く知らなかったが、巧みな文章で自然と読み進められる。
    若き利休の恋がその後の彼の美意識を育てた、という話である。その美意識に秀吉が嫉妬し、最終的には切腹となる。これは史実。一方で若き利休の恋はフィクションだろう。フィクションだが、実際に若い頃の利休に鮮烈な体験があったのだろうと想像できる。

    史実の人物のモチベーションの核をフィクションで仕上げる。そういう物語の作り方もあるのだと学んだ。

    バラバラの史実を「悲恋」という軸で因果関係を結ぶ。それがこの物語の面白さであり、歴史を知っているほど楽しめるツボなのだろう。


    <アンダーライン>
    ★★★生きることの一大事は、日々すがすがしい朝を迎えることか。
    ★★★人は、だれしも毒をもっておりましょう。毒あればこそ、生きる力も湧いてくるのではありますまいか
    ★★「なぁ、利休よ。こんのなもは、何日もするものではなかろう。ただ一日、うたかたのごとく消え去るのが茶ではないのか」
    ★★★★「餅は、どこにでも、たったひとつしかない。それが食いたければ、欲しがっている者を殺さねばならぬということよ」

  • 秀吉から切腹を命ぜられてから、少しずつ過去に遡り、切腹する身になっても己の美学を貫く千利休という人物を深堀していく。中盤の中だるみとフィクションを含んだ終盤のストーリーが自分の相性に合わず、上手く感情移入できなかった感はあった。それでも、お茶をたてる際の挙措とそこに居る人の感情の機微がとても丁寧に描写されていて厳かで凛とした雰囲気がひしひしと伝わってきた。

  • オーディオブックでこれは1.5倍速でゆっくり聞く
    だらだらと盛り上がりのない展開だったが、最後19歳の利休のストーリーですべてがつながった。そうおんの耐える女性の奥深い気持ちの表現が今の書籍だと思った。後半は止められなくなった。☆4つ付けます。

    お茶席では、最初に膳が出て、お酒も飲む、そして最後に濃茶を練る。その後に薄茶。お菓子とお茶の世界とは昔は違った。
    千利休の死から秀吉との関係、茶の湯、そして高麗の高貴な娘と話しが利休19歳までさかのぼる、その中で利休の人が浮き彫りになっていく。題名は利休に尋ねよだが、人に尋ねて利休を知る ということ。
    楽しく読めた

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著者プロフィール

歴史・時代小説作家。1956年京都生まれ。同志社大学文学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーのライターとなる。88年「信長を撃つ」で作家デビュー。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞、2001年『火天の城』で松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞。

「2022年 『夫婦商売 時代小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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