さよなら妖精 (創元推理文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • Wikipediaによると「本作のプロットは元々『〈古典部〉シリーズ』の3作目、完結編として構想されたもの」だという。
    古典部メンバーでの本作を見てみたかった、、、。
    確かにだいぶ路線が違うのはわかるけど、、、。
    というか著者の本、何冊か読んでるけどこんなに感情揺さぶられるのこれが一番だったよ。
    だって著者は「日常の謎」の系譜のミステリー作家って思い込みがあったから殺人事件は基本無いはずって気楽に読んでるから。
    いや、この本も殺人“事件”は無いけど。

    それにしても著者の博学ぶりが日本語を学んでいる外国人のおかげで際立つ。
    例えば「カレー、トランプ、カボチャ、カンガルー」。
    語源が元と違うものとしてさらりと列挙されてたけどカンガルー以外は知らなかった。

    ちなみにお墓に紅白饅頭はちょっと変なオチだなと思った。

  • ユーゴスラビアから来た少女と日本の高校生が出会う話。そこからユーゴスラビア紛争が始まって。
    これがセカイ系であれば、きっとボーイ・ミーツ・ガールの青春パワーですべてが解決される。しかし現実には、日本の少年は遠い国の戦争に対してあまりにも無力で、それでもその戦争を他人事だとはとても思えない。
    とても爽やかで、とても虚しかった。

  • 仕事でユーゴのことを取り扱うことがあり、なんとなく思い出して数年ぶりの再読。
    何度読んでも、良い。

    米澤先生は少なからず本を読んで生きてきた私が最も敬愛する作家さんであり、先生の本は全て読んでいる。積読の「可燃物」を除き。
    その中でもこの「さよなら妖精」はかなりお気に入りの部類に属する。デビュー作なので今の先生に比べると、若いなあと思わされるところはあるけれど、それでも何度読んでも面白いし、自分にも覚えのある「青さ」や「浅さ」に胸が痛くなる。

    私はこの作品を何度も読んでいるのでこの話に仕掛けられた「謎」を知っている。初めて読む人でも途中で、あるいはかなり冒頭のあたりで、主人公の守屋たちが解こうとしている「謎」、そして私たち読者に向けられた「謎」の正体を知り、それを探りながら読んでいく。そういったミステリーとしての本質を失わないながら、青年期の揺らぎやすい心、社会の理不尽さ、そういったものを考える別の頭を働かせながら読む。
    「謎」自体は、注意深く読んでいけば解けないこともない。解かずとも作中で明らかになるけれど。そういった「謎」に執着していると、ある人物の言葉に頭を横合いからがつんと殴られる。「謎」の渦中には、あるいはその周りには、必ず「人間」がいる。そのことに、主人公と一緒に気付かされる。米澤先生の作品にはそういったものが強い。それを皮肉ったりあるいは見つめ直したりした作品が「小市民シリーズ」だったり「インシテミル」だったりするのだろうと思う。

    話が逸れたが、本当に良い作品。米澤先生の作品を「古典部シリーズ」や、最近のものしか読んだことのない人はぜひ読んでほしい。
    ちなみに私が先生の作品で最も気に入っているのは「追想五断章」。はじめ文庫で買ったのに欲しくなってハードカバーも買った。こちらもいずれはレビュー書きたい。

  • ミステリーというより青春小説といったかたち。外国からやってきたマーヤとの出会いで主人公の守屋の価値観が変化していく。10代に訪れる焦燥感をとても良く表現されていたと思う。

  • 東欧ユーゴから来た少女と4人の高校生の一夏の記録。
    その後更に混迷の度を増し遂には解体消滅したバルカンの多構成国家。
    1991年といえばまだ目が見えていた頃。
    映像で見たオリンピックも行われたサラエボのスケートリンクに無数の十字架が並ぶ光景を辛く思い出す。

  • 日常ミステリーのつもりで買ったのに、メインはせつない青春ものだった。
    結末は悲しいものだし、ミステリーとしては大して面白くないけど、小説としては良い作品だと思う。

    ミステリー要素はマーヤの国当てとマーヤが気になったことについての推理パート
    大刀洗万智がキーパーソンだった
    シリーズもので、大刀洗が主役の作品もあるから気になる

    期待したものとは違ったし、星は4つだけど読んでよかった

  • ユーゴスラビアは6つの国の連邦国だったけど内戦でバラバラになりました。
    さて問題です。日本にちょっとだけいたマーヤの出身はそのうちどの国でしょう。

  • ユーゴスラヴィアから日本にやってきた女性マーヤ。ホームステイ先がなくなってしまい困っていた彼女を、主人公の高校生が手助けしたことから話は始まる。

    推理小説としては『帰国したマーヤの所在地』を当てるのが目的。発想は面白いのだが色々問題がある。

    ・冒頭の大刀洗の態度でラストが悲劇だと予想がつくため、メタ視点から見れば答えがわかってしまう
    ・馴染みのない地名や単語が飛びかうが、事前に答えがわかっているため覚えて謎を解こうという気になれない
    ・主人公がマーヤに恋するきっかけや経緯がよくわからないため感情移入もできない
    ・上記理由から主人公が苦しんでも激昂しても冷めた目で見てしまう

    プロローグで答えが判明するのが致命的。メタ視点で推理はやりたくないのだが、読者側が意図的にオン・オフなどできるわけがないのでどうしようもない。

  • あんまり内容知らずに、青春日常ミステリーかなー?とゆるい気持ちで読み始めたら後半ズーンと重くて最後のボーナス・トラックでうへぇとなった。エグいよこんなボーナス・トラック。タイトルが「花冠の日」からの救いのなさの落差すごくない??
    私がまだ赤ん坊の頃なので、ユーゴスラビア、はて??みたいな感じだったんだけど、社会情勢とか、そういうのと絡めてミステリにする米澤穂信の手腕すごい。
    当初は古典部シリーズとして書いてたけどレーベル違うだろって事で別ものになったとあるけど、読み終わってなるほどと、、、、いやこれ古典部シリーズで出されたら数日ズーンて暗くなるな。。
    ともあれ面白かったです。タイトル回収の仕方ェ…

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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