無愛想でぷりぷりしがち、でも「欲望」は抑制ぎみのもっさりとした、柴咲コウ演じるサオリ。
彼女が最初にみせた、まさに自分の欲望に正直な、実の父親をはじめとしたゲイの人たちへの徹底的な拒否感。そこから交流を重ねて、それぞれに感情移入できるくらいになるまでの柴咲コウの表情の変化は見事としかいいようがなかった。
ゲイとして生きた父親・ヒミコの人生を受け入れ、一人だと思って生きていた彼女が、メゾンに自分の居場所を見つける。オダジョーともフツウの男女にはなれなかったけど、それを越えた絆はちゃーんと残った。ヒミコとサオリの母が、別れてもなお交流し続けたように・・。
男とか女とかを越えたところにある、結びつきの妙。とにかく、ラストはすがすがしかった。ほんとうに、よく出来てる作品。久々に唸らされてしまった。
内容もさることながら、この映画の意外なみどころは美術へのこだわり。ヒミコさんのセミ・デコラティブな部屋をはじめ、山崎さんの部屋のウェーブ型のベッド、ルビーさんの馬車の形したベッドや、てんとう虫のついた小物たち・・彼らの無垢なロマンチストぶりを見事に象徴してたと思う。