自衛隊救援活動日誌---東北地方太平洋沖地震の現場から (扶桑社BOOKS) [Kindle]
- 扶桑社 (2011年7月6日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (159ページ)
感想・レビュー・書評
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陸上自衛隊に出向していた官僚が見た東日本大震災と災害派遣。日記として書いていたものが隊内で回覧され最終的に本になった。
自衛隊内部の調整役の人の視点で、災害派遣であまり報道されない部分が描かれている。自衛隊だけではなく、役所の災害対応の批評や、トモダチ作戦での海兵隊との交流もある。
被災者が自衛隊に感謝を述べる部分は、自衛隊向けということもあり遠慮なくありのまま書かれている。自慢ということではない。子供の遺体を探すが見つからず、出てきた玩具を渡したところ母親が何度も頭を下げて礼を言った、というような話が続き、そのたびに泣きそうになった。
役所は優れた対応をしているところは名指しで、批判はぼかして書いてある。両者を分けるのは被災者が最優先という目的意識と首長らのリーダーシップだと読み取れる。これがないと役所の各部署は縦割りの個々の役割に執着し、最も優先すべき被災者が置き去りになる。
ちょうど、読んでいるときに新型コロナのワクチン接種が話題になっていた。接種のミス、キャンセルで余ったワクチンの使い方などが報道されている。ある町では町長が余った分を接種してもらい、「不公平だずるい」という声と「首長が感染するのは困るので接種すべき」という両方の声が上がっている。
新型コロナ感染症が災害だという観点に立てば、公平性が多少損なわれても接種できる人を増やすべき、となるが、事前に「首長や自治体職員は優先する」などと決めておけば文句は出なかっただろう。地震と違ってワクチンは来ることが分かっているのだから事前対策の不備がある。一方で、接種のミスをこれでもかとあげつらって叩くのは問題。確率的に失敗はどうしても起きるから、冷静にヒヤリハット案件で集計すればよく、過剰に叩くと隠蔽につながる。
スピードと公平性が対立するとき自治体はどうすべきか。ここは東日本大震災の教訓が生かされるべきものだと思う。