デザインが奇跡を起こす 「思い」を「カタチ」にする仕事術 [Kindle]

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  • PHP研究所
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  • 著者のことは正直あまり知りませんが、北京オリンピックで子どもたちの笑顔がプリントされた2000本以上の傘を使うというアイデアを考えたデザイナーのお話。

    デザインと言えばポスターという印象が強かった一昔前。著者もたしかにポスターの製作をみっちりやった経験が書かれていますが、最終的に北京オリンピックに関わることができるくらいの大仕事ができる存在にまで登りつめます。

    それまでにいろいろな人生の分かれ道を経験したことが分かりますが、全てに共通するのは「やりたいと思ったことは必ずやる」という信念でした。

    ポスターを描けと言われれば早朝から夜更けまでやり、どこかでこのままではいけないと思ったら、次は有名なデザイナーのもとにむりやり転がり込み、貴重な経験を積み、審美眼を養い、デザイン会社でコンペを勝ち取り、運営の知識もなく、ただやりたいと思って独立した後もひたむきに自分に正直にやりたいことをやり続けたといいます。

    こういうと我を通して周りを困らせた印象を受けるかも知れませんが、そういうことよりも、直談判して情熱で相手を説得してきたことがすごい。著者は世界中の子どもの笑顔を撮影して、膨大なその写真をそのまま並べて会場を笑顔にするというアイデアで有名になりましたが、タイトルの「奇跡」が起こるのはまさにこのアイデアを形にした時でした。

    奇跡のエピソードで印象的なのは中国での撮影の時。貧富の差が激しい中国では貧困層の写真は使ってほしくないと、撮影に政府の者が同席し、被写体を彼が選び始めます。それだと富裕層の偏った写真しか撮れないと講義をし始めますが、撮影してもらいに来た多くの人が笑顔で撮ってくれと言い始め、それに政府の者も笑い始めて「自由に撮ってくれ」と気持ちが変わったというエピソード。

    著者はデザイナーではありますが、結局のところ極端に絵がうまいとか、そういうことが問題ではなくやりたいことをアイデアとしてどう形にしていくか、そのために立ちはだかる難問も、あきらめずにやり抜く気持ちが大切だと説きます。この気持ちが時に運をも呼び寄せ、成功したのだといいます。

    私は成功者でも何でもありませんが、その考えは自分にも経験があり共感できます。ただ古代ガラスの技術が知りたいというだけで、ガラス作家のもとで勉強させていただき、ガラス研究者に連絡をしまくり、復元品をみていただくために重い荷物を持っていろいろな博物館へ出かけ、時には世界のガラス工房も訪ねていった学生時代を思い出しました。

    ガラス作家でも、正真正銘な考古学者でもありませんが、色々な縁に助けられて何とか古代ガラスの研究は自己満足で終わるよりは少しでも人目に触れるよう発表させていただいたりしています。ささやかな奇跡ではありますが、本気度は誰かに伝わるものです。この気持ちの大切さを思い出しました。

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著者プロフィール

1951年名古屋市生まれ。1977年日本デザインセンター入社。NPO法人MERRY PROJECT代表

「2021年 『みんなのSDGs』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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