ストーリーとしての競争戦略 Hitotsubashi Business Review Books [Kindle]

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  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • 素晴らしい本。こんなに心震えるコンテンツが世の中にはまだまだまだまだまだ残っていることを思うと幸せだ。

    読み終えた直後、自室で5分間著者を称える拍手をした。この一冊だけ残して、巷のしょうもないセンリャクボンは全部焼き捨ててよし。

    中途半端に取り組んだ戦略コンサルの就活を通して、表面的な分析に終始しない先に戦略策定の価値があることには気づけたものの、明確にその価値の正体を言語化できなかった自分に突き刺さる内容だった。

    企業の競争優位の本質について述べられた内容だけど、主体を人間個人だったりに置き換えても通用する、すごく本質的な内容。

    ”競争力の正体”や”戦略の本質”という抽象的な事柄を、論理的に分かりやすく説明していて、畏怖の念すら抱いた。天才的。

    ジャンル問わず、自分とは別の次元に到達している人のアウトプットに触れるのが好きなことに気づいた。特定の領域において最高峰と同じ次元に到達するのは無理だとしても、その凄さに気付けるだけの感性を自分の中に持ち合わせるために、努力を重ねていきたい。

    興味が多岐に渡る自分だけが到達できる、ジャンルの垣根を超えた何かがある気がする。

    • 中尾さん
      >素晴らしい本。こんなに心震えるコンテンツが世の中にはまだまだまだまだまだ残っていることを思うと幸せだ。

      こんな書き方されたら、読まず...
      >素晴らしい本。こんなに心震えるコンテンツが世の中にはまだまだまだまだまだ残っていることを思うと幸せだ。

      こんな書き方されたら、読まずにいられない、、w
      2022/03/02
    • ともひでさん
      ぜひ読んでくれ。
      伝えようとしてる内容はもちろんなんだけど、文章もめちゃくちゃ良くて。
      論理を展開する中で実際の企業を用いた例示が頻繁に...
      ぜひ読んでくれ。
      伝えようとしてる内容はもちろんなんだけど、文章もめちゃくちゃ良くて。
      論理を展開する中で実際の企業を用いた例示が頻繁に出てくるんだけど、
      ・例示によって補おうとしている命題と例の対応関係が驚くほど鮮やか
      ・例に用いられている内容がどう考えても面白い
      お手本のような例示で感嘆する。
      2022/03/02
  • 経営者や戦略立案担当者だけではなく、人を動かす立場にいる人は必読。

    一見して非合理ではあるがストーリーでみたら合理的である「バカなる」を作れるかが、戦略ストーリーの鍵。

    戦略ストーリーは、誰かに語りたくて仕方ないくらい面白いものでないと、だめ。面白いストーリーが語れることがリーダーの条件。
    前職の恩師は、業界屈指のコンサルであったが、この能力を持っていたなあ。

    • rnumata3さん
      むむむ、読まなくては
      むむむ、読まなくては
      2020/01/10
  • 持続的な利益(ゴール)を目指し、競争優位に立つためにはSP(活動)とOC(組織形態)といった構成要素を首尾一貫した員が論理で結びつける「戦略ストーリー」が必要。

    戦略ストーリーにとって大事なのは「コンセプト」「クリティカル・コア」の2つ。
    コンセプトについては、「誰に何を売っているのか」を定義し「誰を喜ばせるか=誰に嫌われるか」を明らかにすること、肯定的な形容詞はなるべく使わないこと、人間の本性を捉えるものであることがポイントです。

    一方のクリティカル・コアは、「他のさまざまな構成要素と同時に多くのつながりを持っている」「一見して不合理に見える」ものです。例えばスターバックは効率的なフランチャイズではなく直営店にしたり、ガリバーは中古車買取のみに特化するなど、一見不合理なものでも全体の戦略から見れば非常に合理的なものに見えてきます。

    本書ではこうした話を主軸に、多くの例を出しています。各主張について説明が冗長な印象も受けましたが、戦略を考える上での大きな勉強になりました。

  • 優れた競争戦略とは何か。
    筆者曰く、優れた戦略とは、全体としてみたときにゴールに向かって上手く機能するように設計されたものであり、人に話したくなる「面白いストーリー」になっているもの。
    個々の戦略や戦術の要素を有効的であるかどうかは意味を為さない。

    「ストーリーとしての競争戦略は結果論である。あたかもよくできたストーリーが初めからあるように見えるが実際はその場その場で打ち手を繰り出しているのが現実」
    そういう反論の声は理解できるが、50%あっていて50%間違っているという。

    当然、個別の打ち手は、毎日の現実的な課題点から編み出される。
    しかし、ゴールに向かっている全体の競争戦略のなかで個々の戦略、戦術が生み出されるものであり、あくまでも全体感としてはストーリーとしての競争戦略があったはず。
    例えばベゾスの戦略の原型には「自社倉庫」はなかった。しかし、顧客の良経験という戦略の中で、自社倉庫が必要になり繰り出されたものである。

    あくまでも、ゴール←競争戦略の枠組みはあり、あとは個々の要素が生み出されるはず。

    ・アクションリストの列挙ではダメで、それを繋げなければならない
    ・戦略に法則はあり得ない
    ・競争戦略のポイントは、対象範囲、目的、利益の源泉
    ・競争戦略で重要な指標は「長期に渡って持続可能な利益」
    ・利益の伸び代はどこの業界に身を置くかで決まる
    ・優れた戦略とは時代を先取る先見性や、拡大しつつある市場に一番乗りして先行者利益を得るといった不確実性に挑むようなものではない
    ┗ 戦略自体に競争優位を生む論理がある
    ・ストーリーとしての競争戦略とは、勝負を決定的に左右するのは戦略の流れと動きであるということ。
    ┗ 勝利に向けたストーリーをイメージし、その流れの因果関係が論理的かどうかを検討すること
    ・戦略のクリティカルコア→それだけでは一見して非合理だけれども、ストーリー全体の文脈に位置づけると強力な合理性を持っているもの

  • ビジネスの成功は理屈が2割、理屈じゃ成功できないのが8割。分からないこと8割の中、その2割の論理が生きる。競争戦略も、「法則はないけれども、論理はある」戦略はサイエンスと言うよりもアート。
    分析では無くて統合であり、戦略とは「他社と違いを作る」こと。

    →この「違いを作る」「統合」、「ストーリーの因果性」という観点から、一般的に流布されているアカデミックな経営ハウツーマニュアルを否定していっている。

    ストーリーとしての競争戦略とは、「勝負を決定的に左右するのは戦略の流れと動きである」ということ。つまり、勝利に向けたストーリーをイメージし、その流れの因果関係が論理的かどうかを検討すること。

    自分の仕事がストーリーの中でどこを担当しており、他の人々の仕事とどのように噛み合って、成果とどのように繋がっているのか、そうしたストーリー全体についての実感が無ければ、戦略を実行できない。筋のいいストーリーを作り、それを組織に浸透させ、戦略の実行に関わる人々を鼓舞させる力が、リーダーシップの最重要な条件。

    欧米の会社は、機能分化の論理で割り切れる組織(マネージャ、プログラマなどの「自分の職種へのこだわり」)であるのに対し、日本の会社は価値のアウトプット(顧客のために)を重視する。そのため、なおさら日本企業の戦略はストーリーであるべきだ。

    【競争戦略の基本論理】
    勝ち負けの基準とは何か?→継続的な利益。
    その他の要素(シェア、成長、株価、CSR,社員の幸福など)は、継続的な利益を上げると自ずと付いてくる、二次的なもの。もしくは継続的な利益を至高の目標とした通過点。

    利益がゴールなら、利益はどこから来るのか?
    業界の競争構造→利益を生みやすい業界と生みにくい業界の差(生みやすい:製薬・エネルギー、生みにくい:飲食やPC)、参入障壁、業界内部の対抗度、代替品の脅威、売り手と買い手の交渉力

    戦略を環境の分析や目標達成と混同しない。
    競争戦略とは、「競争のある業界において、他社との違いを生み出すことで、他社よりも優れた利益を達成するための手立てを示すもの。」

    【他社との違いって何?】
    1.ポジショニング…他社と違うとこに自分を位置づけること。ここで注意すべきは、性能、値段といった「程度の違い」ではない。無競争戦略。あれをやるために何をやらないか、の考え。欧米企業型。
    2.組織能力…他社と違ったものを持つ、という考え。企業の内的な要因に注目。模倣の難しさにより利潤を産む、の考え
    企業を創立から時間軸で考えると、まずポジショニング優位を取り、その後組織が育つにつれて組織能力を強化していく、という流れ。日本企業型。

    【ストーリーとしての競争戦略】
    ポジショニング、組織能力といったパスをどのように組み合わせ、利益を持続的にあげるというゴールに導くのか。

    ①ストーリーの結、利益創出の最終的なシュート(これらはトレードオフ)
    a.競合よりも顧客が価値を認める製品やサービスを提供できるか
    b.他社よりも低いコストで提供できるか
    c.そもそも競争せず、ニッチ業界で一人プレーするか

    ②最終的なシュートへのパス
    戦略ストーリーの評価基準は、ストーリーの一貫性。
    a.ストーリーの強さ…xがyをもたらす因果関係が高いか。
    b.ストーリーの太さ…xが、yだけではなくw.zと、たくさんの構成要素にたくさんパスを出せているか
    c.ストーリーの長さ…xから起こったパスが、連鎖的なパスを生み出し続けるか。好循環が発生しつづければなおよし。

    大切なことは、最初からストーリー通りに行くことはなく、脅威や偶然のチャンスに遭遇することのほうが多い中で、個別の偶発的要素の持つ可能性や意味をストーリーの文脈で考えられるか。

    ストーリーの起…コンセプト。「本当のところは、誰に何を提供するのか?」というもの。ターゲットをはっきりさせる。消費者が利便性を高め、幸福を高めるコンセプトを立案する。これは、人間の本性と日常生活のリアリティを捉えるものであり、顧客からの意見によって吸い上げることができる、定量可能なものでは無い。
    逆に、「全てはコンセプトのために」を心がければ、おのずと全過程が統合される。
    また、ターゲットをはっきりさせるということは同時に、ターゲットから外れる顧客にはっきり嫌われるということ。

    ストーリーの転...クリティカル・コア。複数でパスを出し合う構成要素のうち、戦略の中核になっているもの。クリティカル・コアはストーリー全体に一貫性を与える。また、クリティカル・コアは「一見して非合理」である。クリティカル・コアは、ストーリーの中に位置づけられて初めて意味が分かるものであり、それ単体では非合理に見える。部分的な非合理を他の要素とつなげたり、組み合わせることで、ストーリー全体で強力な全体合理性を獲得する。
    なぜ非合理なのに強いのか?→他社に模倣されない。真似できないだけでなく、そもそも真似しようとしないような構造であるため、競争優位が長期に渡って持続する。追いつこうとする他企業は、非合理以外の成功要素をどんどん模倣する結果、自社とのストーリーに解離性が生まれ続け、自滅する。

    成長戦略は、「これから」の外敵機会よりも、「これまで」の自社の戦略ストーリーと成長戦略のフィットをよく考えることが大切。また、キラーパスを出す勇気が必要。
    また、構成要素のつながりの背後にある「なぜ」を突き詰め、論理的にストーリーがつながっているかを確認しなければならない。

    【まとめ】
    ①エンディングから逆回しで考える
    ・顧客が支払いたいと思う水準を上げる
    ・コストを下げる
    ・ニッチに特化する のどれか。

    ②エンディングの前、コンセプトを考える
    ・人々のリアルな日常、欲望、心と体の動きという、「顧客の側で起こるストーリー」をイメージする。
    ・「誰に」「何を」「なぜ」喜ぶのかを考える。「どのように」ばかり先行してはいけない。

    ③コンセプトと明確につながる構成要素を考え、繋がっていなければ削除する。ここでは一撃で勝負がつくような派手な武器ではなく、打ち手をつなげていく印が論理の一貫性こそがキモ。「似て非なるもの」という差別化。
    ※ストーリーは、荒唐無稽な創造を掲げるよりも、むしろ「窮屈すぎるぐらい」でちょうどいい。そうすればよりストーリーとフィットする。

    ④「誰をどのように喜ばせるのか」、「誰に嫌われるのか」をはっきりさせる。普通の人々の「本性」を直視する。

    ⑤ストーリーの時間軸を意識する。物事が起きる順番を意識する必要がある。「いきなり丸ごと」をやろうとしたら、時間軸的に無理が出てとん挫する可能性がある。ストーリーの原型を固めることが大切。

    ⑥失敗から学ぶこと。そして一番大切なのは、「ストーリーの中で失敗を必ず定義しておくこと。」失敗がルール化されていれば、思い切って川に飛び込める。

    ⑦非合理をストーリー全体の中で合理性のあるものへと変える。そのため、日常の仕事や生活で遭遇する小さな疑問に「なぜ」を考える。

    ⑧Whyにより、個別のファクトを繋ぐ論理を読解する。過去に成功した企業や失敗した企業の歴史を読み解いて、そこにある本質を抽出してみる。

    ⑨戦略において、思わず人に話したくなるような面白さを創造する。(逆に、それができていればいい戦略)戦略ストーリーをメンバーに伝播するためには、自分で面白いと思えるストーリーを作る。

    ⑥好循環や繰り返しの論理を組み込むために、「これまで」と「これから」を意識すること。

  • その業界に長くいればいるほど「一見して不合理」なことには手を出せないことがある。
    これはすごく分かる。今まで「勝利のためのセオリー」があったとして、愚直にそれを実行していただけなのに、いつの間にか競合他社も同じ勝利のセオリーを追いかけ始め、全体がコモディティ化していく。
    ビジネスの基本は「他者との差別化」であるはずなのに、いつの間にかみんなで同じ方向を追いかけてしまって、業界全体が衰退していってしまう。
    そこから一歩抜け出すのは、相当に大変だ。
    なぜなら、勝利のセオリーのために、組織は最適化されていたからだ。
    特に歴史があるが場合は、もはやその組織はセオリーを作った人たちが引退し、セオリーが回り出してから加入した面々だ。
    つまり、そもそもオペレーションのために雇われた人々なのだ。
    変えるやり方なんて想像もつかなけれべば、イノベーションなんて起こせるはずがない。
    そういう意味でも動いている車輪はすでに空回りであることを知りつつも、回り続けるということになってしまうのだ。
    この本は2012年出版であるが、全然古くない。
    もちろん、事例で上がっている企業はもしかすると今では状況が変わっているかもしれないが、この考え方自体は今でも全く古くない。
    マブチモーターは、レッドオーシャンなモーター業界で一歩抜け出せた。
    スターバックスは、すでに飽和状態だったコーヒーショップ産業に後から参入して成功した。
    中古車買取ガリバーは、利益率が高い自社での販売を捨て、オークション販売に特化して成功した。
    サウスウエスト航空は、ハブ空港での利用を捨て、空港間の直行のみに特化して成功した。
    どれも実は「どの企業も真似できた」ことなのだ。
    新しいテクノロジーが発明されたとか、他社にない技術を保有した、ということではないのだ。
    どの企業でも真似できた戦略が、なぜ他社で真似できずに、競争優位で立ち続けられたのか。
    本書ではその理由についても解き明かされている。
    実に深くて示唆に富んだ内容だ。(だから本書の理論は古く感じない)
    本書では「キラーパス」と言っているが、これもスポーツで考えればすごく分かる。
    「ファインプレー」はビジネスでも起こっている。
    まさに、マブチモーターであり、スターバックスであり、ガリバーであり、サウスウエストである。
    このファインプレーを出し続けられる組織というのは、単に戦術が素晴らしいだけではない。
    チームとして機能するための大きな能力が、他社と比較してもきちんと備わっている。
    最近感じることがある。
    「ビジネスは根性論ではない」というのは、間違いではないかということだ。
    「より高いレベル」を目指そうと思わないと、ファインプレーが出るはずがない。
    その「より高いレベルを目指す」ということこそが、案外と「根性」なのではないだろうか。
    週に1回趣味で行う草野球では、ファインプレーが出るはずがないのだ。
    やはり高い次元でビジネスをやってやるぞという気迫と言うか、気合と言うか、総称して根性と言うかは別として、そういう気持ちがないとより一歩前には行けないのではないだろうか。
    「結局根性かよ」でまとまったとしても、それはそれで考えさせられる。
    そういう面でも本書は面白い。
    (2021/7/1)

  • センスおじさんの名著。分厚い本だけど、文章が歯切れが良くて読みやすい。会社の新任管理職研修の課題図書にしています。

  • ペア読書した。

    ●要するにこういう本
    さまざまな企業の競争戦略(成功と失敗の両方)を例に出し「ストーリー」という軸で解説している本。

    ●気になったところとその理由
    理論で説明が付かないことが8割、理論で説明が付くことが2割、と言っているのがおもしろかった。野生の感が8割なのに、その2割についてこんなにも丁寧に解説しようとする。最初にそういった反論に対するエクスキューズが重ねられているところにこの本の慎重さ(ツッコミどころをなくす心がけ)を感じる。

    ストーリーとはつながりである(とはっきりは書いていないけど私はそう理解した)。先日読んだ「イシューからはじめよ」で「ストーリー」が出てきたが、実はそれがあまりピンとこなかった。その「ストーリー」について、何がストーリーであって、何がストーリーでないかをことさら丁寧に説明しているのはありがたかった。理解が進んだ。物語のように、1があって2がある。同時に1の後に3もある。その2と3をもってして4がある、みたいなつながりのことだと理解した。

    ストーリーとは、「信じているか、いないか」だと書かれていたのが興味深い。全く別の場所の地図を手掛かりに、命からがら下山した登山家たちがいたというエピソードは面白い。『はじめての哲学的思考』には、「信念とは欲望だ」といったことが(確か)書かれていた。それと同じようなことだろう。つまりストーリーは欲望から発生するのではないか。

    もっとも大事なのは利益だと書かれていた。ほかに、顧客満足度は利益の大きさとイコールであると言う人もいると。

    ファイブフォースという言葉は初めて聞いたが、よく言われることであるらしい。「儲かりやすい業界か」ということらしい。PC業界は5つ星に対してゼロ星であるらしい……。

    ポジショニング(SP:Strength Positioning)と組織能力(OC:Organizational Capability)の話は興味深かった。いろいろな成功企業をこのどちらかに分類していた。よくポジショニングが大事と言われるが、そうではない企業もあるということだ。個人事業主や、小さいチームはSPでしか戦えないということなのだろうか。

    OCの正体はルーティンだと。私がHPにいたころの社長、カーリーフィオリーナの戦略がSPで、それがうまくいかなかった、と書かれていた。自分に関係のあることは印象深い。

    ストーリーは4枚目のお札であると書かれていた。1枚目がファイブフォース、それがだめなら2枚目のSP、それもだめならOC、それもダメならストーリー、ということらしい。ストーリーが一番じゃないの!?!? という感想。

    利益創出の最終論理
      WTP-C = P
    WTPとは顧客が支払いたいと思う基準らしい。Cはコスト、Pが利益。これは覚えておこう、と思った。

    「始まりはコンセプト」という章がある。コンセプトから始まるという。コンセプトの考え方ではスターバックが例に出されていた。「誰に嫌われたいか」を決めるという話。それはとてもわかりやすい。コンセプトを作る際に、多くの人を取り込みたいと思ってしまうものだ。でもあえて「この人に嫌われる」を考えようとすると、そしてそれをいいことだと考えられれば、コンセプトは決めやすそう。アマゾンの例も多数出てきてわかりやすい。

    任天堂の方は、コンセプトを決めるときにユーザーやユーザーに近い営業部門のフィードバックを聞いてはいけないと言ったそうだ。顧客の声を聴くことは重要だというが、ときに聞かないことも重要なのだろう。コンセプトのような根幹をなすものは自分たちで深く考え、そのコンセプトのもと実装する部分については、ユーザーの声を聴いていくというやり方なのだろうか。

    キラーパス、クリティカルコアの話。ここでもスターバックスの例。スタバの場合は様々な要素があるが、それの根幹となっているのは「直営方式」であるということだった。それによって、他の要素が成り立っていると、図で書かれており、矢印で示されているととても分かりやすい。ほかの要素を他の企業が真似してもうまくいかないのは、根幹の部分が定まっていないと、全体がうまくいかないのだろう。

    クリティカル・コアは、それだけを見ると非合理だというのがポイントらしい。でも、その非合理な部分をもってして、ストーリーの合理性があるのだという。すべてはつながりなのだ。

    6章の部分は、ガリバーの事業内容をストーリーで読み解かれていた。ガリバーのクリティカルコアは「買取専門」。これは、中古車流通業界を知っている人から見ると、もっとも大きなうまみを捨てる行為なのだそうだ。だからとても非合理。ただ、全体のストーリーで考えると合理性が出てくる。その非合理性のために、他社はなかなか真似できないのだろう。

    7章がラスト。ストーリーには一貫性が大事だという話。詳細には非合理な話が出てくるが、全体としては一貫している。コンセプトに忠実であることが大事だという。「コンセプトを固めたら、コンセプトに関しては楽観主義であるべき」と言うのも面白い。なぜなら、それだけ単体で見ると非合理であるからなのだろう。そこを突き詰めても仕方がないということなのだ。その代わり、「悲観主義で理論を詰める」ことをしなくてはならないとあった。

    最後の最後に「一番大切なこと」が書かれている。自分にとって切実なこと、それはすなわち人のためであるはずだという話。それは本当だろうか。切実なこと、はその通りだと思う。切実なことは、結果として誰かのためにはなると思う。ただ、最初から「誰かのためでなくてはいけない」でなくてはいけないかというと、私はそうではないと思う。力をけん引することは確かだが、それは結果でいいのではないかと思う。

    私としては結局、最初に書かれていた
     ストーリーとは「信じているか、いないか」
    だと思う。それが信念になり、「誰かを助けるに違いない」と信じることになる。それのもとは、自分の欲望から発生する。欲望は、自分の欠乏から生まれうる。足りないことを埋めるためにストーリーがあるのではないかな。だからこそ、途中に書いてあった通り、ストーリーの全面的な書き換えはとても難しいのだろう。切実な欲望というのは、そんなに代替可能なものではないからだ。

  • 【印象に残った話】
    ・ストーリーとしての競争戦略とは、個別の違い(他社との違い)の間にどのような因果関係や相互作用があるかを重視するものである
    ・違いには以下の2種類がある
     ・SP:「他社と違うところに自社を位置付けること」
     ・OC:「競争に勝つための独自の強みを持つこと」
    ・ストーリーの柱は次の5つ
    ①競争優位(Competitive Advantage) ストーリーの「結」=利益創出の最終的な論理
    ②コンセプト(Concept) ストーリーの「起」=本質的な顧客価値の定義
    ③構成要素(Components) ストーリーの「承」=競合他社との「違い」(SP(戦略的ポジショニング)もしくはOC(組織能力))
    ④クリティカル・コア(Critical Core) ストーリーの「転」=独自性と一貫性の源泉となる中核的な構成要素
    ⑤一貫性(Consistency) ストーリーの評価基準=構成要素をつなぐ因果論理
    【アクションプラン】
    ・自分だけのストーリーを作成する

  • 著者(楠木さん)の講演を見て、このひと話おもしろすぎん?声もかっこいいし、、、という割としょうもないことを感じたことがきっかけでこの本を手に取ることに。

    著者が自分で面白いと思う話しかこの本には書いておらず、まあつまらないはずがなかった。

    企業ごとの具体例も豊富で、目の前で話をしているかのような文体で書かれているため、すらーっと読める。
    500頁ある割には。

    この本に書かれていることは、一企業にもいえることだが、我々一個人にも当てはまるのでは?と強く感じた。

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著者プロフィール

経営学者。一橋ビジネススクール特任教授。専攻は競争戦略。主な著書に『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社)などがある。

「2023年 『すらすら読める新訳 フランクリン自伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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