マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion─燃焼 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA) [Kindle]

著者 :
  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • 理不尽な暴力に虐げられてきた者が"力"を手にいれたとき、その力に酔ってしまうのは仕方のないことだ。ましてや一度は殺されそうになった主人公ならばなおさらだろう。
    心の赴くままに暴力を駆使した報いは主人公の身に跳ね返る。これが今後の戦いへの戒めとなるわけだが、こういう経緯を省かずにしっかり描いている点に好感が持てる。

    今巻はカジノでの駆け引きの場面が大半。『カイジ』や『嘘喰い』が好きな方にはたまらない展開ではなかろうか。逆にギャンブルに興味がない方はのめり込めないかもしれない。

  • めっちゃ面白い。
    めっちゃ面白かったけど、期待していたサイバーパンクの戦闘シーンは何処に。。。な感じの手に汗握るカジノストーリー。
    作者がホテルに籠もって描き上げた渾身作とはこの箇所だったのか。
    なんにせよ、期待がハズレたのに、それ以上に面白かったんだから、単純に素晴らしい。

  • ボイルドと対決したバロットは楽園に保護された。ウフコックは傷つき楽園で手当てを受けている。この楽園は科学技術を発展させることを許されたただひとつの場所だ。バロットはここで保護されている内にイルカと一緒に広大な電脳空間を飛びまわりシェルの過去を探りだし。これからはこの楽園を出て決着をつけるのだ。

  • 2018/04/18
    プールとカジノ

  • 3部作の2冊目。前巻ではバリバリの戦闘描写があったが、本巻では一転する。楽園と呼ばれる場所での哲学的な問答と、あとはひたすらカジノ。後書きを読むと、著者が最も心血を注いだのがカジノ(とりわけブラックジャック)での描写らしく、そこをあまりしっかり読み取れなかったのが残念。

  • 三部作の二部。
    設定や背景の説明済みのためサクサク進む。
    一部と違いハイエイジの人にはハレンチ度が少なくなりメタルのようなメンタルもいらなくなる。
    みたいな文章が度々でてくる。
    味と感じるか、うっとうしい感じるか。
    後者でも楽しく読めるオモシロさ。
    バイオレンスからギャンブルに。

  • ルーレットとブラック・ジャックの説明がすごい……。
    バロットは徐々に強く前向きになって来ていると思うけれど、これからどうなるのか。

  • ウフコック復活後、やや哲学的存在についての議論が“楽園”において繰り広げられるも、その後まさかのカジノバトルへ。ギャンブル(のお話)好きとして斜に構えて読んでいたが、これが抜群に面白い!スロット、ポーカー、ルーレット、そしてBJへ。サイバーカジノバトルに胸躍る素晴らしい展開、SFファン的にはどうだか分からないけれど、個人的に物凄く面白かった。

  • このままサイバーでドンパチした展開になると思いきや、まさかのカジノでのギャンブル戦へ。近未来でサイバーなSFが読みたいんだよ!と思いながら我慢して読み続け、すっかり作者の術中にハマってしまいました。カジノ面白い。どんどん勝ち上がって行くと同時に、バロットが内面的に成長して行く様は爽快です。

  • 前巻と打って変わって,目立った戦闘描写はほとんど無し.
    半分以上はカジノでのやりとりなんだけど,これが面白い.カジノに参加する人たち心理を描写するシーンもさることながら,ウフコックとバロットのコンビの輝きが見て取れるようで良かった
    前巻では,力に溺れたバロットが暴走し,ウフコックを傷つけてしまうような悲しい結果になってしまったが,今作ではバロットが自分の力を把握していくことで,ウフコックに頼らずとも自力で戦えるように成長していく過程が綴られていて,読んでいて気持ちよかった.
    次巻では,いよいよボイルドがやってくるのだろうけど,一体どうなるのだろう.

  • 辛うじて脅威を退けたバロットは、楽園へ。ウフコックを濫用した自分に気付き、自身の選択を再考する。そしてバロットは楽園を出て、再び戦いに挑む。自身の選択で。

    これは少女が支配から脱却し、自分の価値を獲得する為の戦いの物語なのだと気付いた。

    人の価値とは何だろう。自分という存在の価値を創造する為に人は生きるのか。それはとてつもなく難しいこと。他者による支配、あるいは他者への信頼という名の依存、そうした他人を通じた価値基準に身を委ねることはとても楽だ。選択の根拠を、責任を、自分で負う必要がないから。しかし、それらに拘束され、自身の価値の定義づけをあやまれば、自分を見失い消耗していくばかり。あるいは、定義から逸脱した自分を認めてくれる存在を獲得することが、愛されるという新たな価値=存在意義となり得るのか。

    バロットはとても危うい。支配され、自身を商品として切り売りしてきたが為に、殻に閉じこもっていた彼女は、殻を破る選択をする。しかし、その選択も覚悟も、ウフコックに依存しているように思える。彼女は自分の価値を自分を根拠として見つけられるのか。それとも結局、価値を見出してくれる他者と共に生きるという結論に至るのか。次巻に期待。

    *以下引用*

    *あの人は私に、殻から出てこいとは言わなかった。暖かいところへ連れていこうとしてくれた。あの人は、とっくに腐った卵でも大事に温めてくれる人だから (p22)

    *しかしその悲しさを放っておくべきではないと教えてくれたのは、他ならぬウフコックなのだ。 (p36)

    *人には全体的な革新が必要なのだよ。人という種の革新が。 (p63)

    *だが我々は、いわば役を仕込まれていない役者のようなものだ。君も私も、生を即興で演じねばならないという厳しい現実の中にいる。シナリオもなければ、何をすべきか耳打ちしてくる演出家も存在しない。気づけば舞台に投げ出されーそしてこう言われる。生きろと。死ぬまで。それは野生だ。ただの社会的な野生動物だ。我々は、いつまでもそのような即興の社会に生きるべきではない。即興から人々を救う世界が必要なのだ。この楽園のように。それが文明の意義なのだよ (p64)

    *価値が虚構なのは当然だ。価値という名の物体が、どこかに存在しているとでも? (p94)

    *価値はあるものではない。創り出すものだ。命の価値を創り出す努力をおこたれば人は動物に戻る。社会とは価値を巡って機能する人間独自のシステムだ。 (p95)

    *この世で好奇心ほど暴力的なものはあるまい。そして他ならぬ好奇心によって、人も動物も生きておる。そのことを知り、そのことに耐えられる者こそ人間と呼ぶべきだ。 (p114)

    *虚無感は…人間にとって最大のストレスと言ってもいいから… (p136)

    *いるべき場所、いるべき時間に、そこにいるようにしな。着るべき服、言うべき言葉、整えるべき髪型、身につけるべき指輪と一緒に。自分自身の声を、おろそかにせずに。女らしさは運と同じさ。運の使い方を知ってる女が、一番の女らしい女なんだ。そういう女に限って運は右に回るのさ (p241)

    *ウフコックはバロットに、より多くのものを見抜くことができる眼差しを与えようとしてくれていた。 (p323)

    *俺のプライドは、あの老人のものと同じだ。だからよくわかる。他者に自分の有用性の証人になってもらうしかない。俺は俺の価値を他者に対して試し続けなければならない (p324)

  • 特殊な科学技術で特別な能力を得た少女の話の2巻。
    前巻と違い、特殊能力は銃器を使った戦闘ではなく、カジノでの勝負での使用がメイン。これはこれで緊張感があってよかった。
    まだ終わらない。続きが気になる。

  • 2周目完了! スピード感がいいです! 最近、アニメDVDが出ていることを知りましたが、見ない方が良いと思いつつ、手を伸ばしそう…

  • 面白い!ハリウッド映画を見ているような感覚。
    登場人物に魅力がある。情景をありありと思い浮かべることができる。

  • @sanuksanuk: マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion─燃焼 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA) [Kindle版](冲方丁)を読んだ。思いもよらぬ展開に驚きつつ、いっきに3rdへなだれ込む。お

  • 全3巻のなかに、超テクノロジーを駆使しためまぐるしいアクションだけでなく、そのテクノロジーを基盤として成立する複雑な社会機構、カードゲームでの緊迫した心理戦、など、いろんな要素がこれでもかとばかり膨大に書き込まれ、読むものを飽きさせない。

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著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『剣樹抄』『麒麟児』『アクティベイター』などがある。

「2022年 『骨灰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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