ドミノ (角川文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 当初人物が非常に多い。前半は各登場人物の立場から別々のストーリーが語られるため、ちょっと混乱しストレスを感じた。しばらくは冒頭の「登場人物紹介」を何度も読み返していた。
    紙袋の入れ違いをキッカケに、複数の事件が起き、それぞれの登場人物が交錯する。とても広い東京駅(しかも2000年頃なので再開発前)の、丸の内および八重洲側を舞台に事件が繰り広げられ、終盤になって、バラバラだった伏線が、ドミノ倒しのように繋がる。
    東京駅が好きな人にはオススメ。歴史あるステーションホテルの話や、連絡通路の位置関係など、面白い。そして、利用者同士の手荷物の間違いは毎日起きているのだろう。
    でもまあ、終盤になっても登場人物がなかなか頭の中で一致せず、「あれ?この人は誰だっけ?」という混乱状態であり、消化不良のまま読了してしまった。慣れないKindleで読んだため、冒頭の登場人物紹介ページに戻るのが億劫で、読む効率も低下した。残念である。

  • 東京駅を舞台に、二十七人と一匹が全く関係のなかった日常から繋がり、ドミノ倒しよろしく最後には大きな一枚の絵が出来上がる。そしてそれはまたそれぞれの日常へ戻っていく。
    ミステリ研の時期部長を決める推理合戦に闘志を燃やすふたり。仕事の締め切りを前に打てる手を強引に打っていく女たち。愛情のもつれに絡まった男女。劇のオーディションに食らいつく女の子たち。句会のために地方から出てきた上品なおじいちゃんと、その句会メンバーの出会い。移り変わる視点は落ち着いているのに、その人たちがどれもしっかりと影をもって動いている。嫌なやつも、ダメな人間もたくさんいるのに、嫌いだと両断できない人たちのお話だ。
    私はとくにおじいちゃんと句会をやる元刑事さんたちの微笑ましい会話と、東京駅のお菓子を追い求めるOLさんの奮闘と執念と正義感が良かった笑
    恩田さんのお話の中ではかなりきちんと話が畳まれていて、毎年文庫フェアに出てくるはずだと思った笑
    ドラマになっても面白そう。

  • わたわたしていたので、読み終えるのに時間がかかってしまいました。
    面白いと思います。が、時間がかかったのでこの登場人物の多さについていけませんでした。
    のりとしては、どたばたしているイメージが「夜は短し歩けよ乙女」。
    いろんな人が出てきて、予想外の行動をしていく。
    そして、スケールがとても大きい。
    こんな大きなこと、小説だからできる。だから小説は面白い。

  • 評価が良かったので読んでみたが、登場人物が多すぎるし、場面がコロコロかわるので、途中、何が何だか分からなくなった。多分、私がおバカでついて行けないだけだと思うし、テレビドラマにしたら面白いはず。東京駅の充実した広さと、行き交う人の密度の濃さ、噛み合わないハプニングが重なるバタバタコメディ物語でした。

  • 子役の麻里花の面接での受け答えにグッときた。

    緊張するってことは、それがあたしにとって大事なことなんだなって思うんです。その時間はどきどきして、いつも学校や家で感じている時間とは全然違って、三倍くらいの長さに思えます。こんなに緊張するってことは、これからあたしがやろうとすることはあたしにとって大事なんだって思うから。大事なことは大事にしなきゃって。

  • 読み始めは登場人物の紹介でまず、多いなぁという印象。
    小出しの短編をのぞき見している感じで物語が進んでいます。
    一見関係がないようなのに、あちらとこちらが繋がっていたり、変なところで鉢合わせていたりとまさに物語がコロコロ変わるのでドミノ倒しそのもの。最終的にはつながっているというので驚きでした。

  • ドミノとはこういうことか!
    主人公が増ていくにつれ、ドミノの意がわかり結末が気になりドキドキしていく、まるでジェットコースターが上に登っていくときの感覚。思ったよりジェットコースターは激しくなかったけどコメディとして楽しめました。

  • ジェットコースタームービーならず、ジェットコースターノベルとも言うべきか。よく描き切ったと感動した。
    20年以上前の作品であるが、初読である。
    普段ビジネス書を中心に読んでいたため、名作と言われる小説にも全く触れてこなかったことを改めて認識してしまった。
    まさに、もっと若い時代に出会いたかった一冊と言える。
    本書を手に取って感じたところではあるが、自分の残りの人生の時間で、あと何冊の本と出会えるのだろうか。
    そう考えると、間違いなく死ぬまでに読んでおいて損がなかった一冊と言える。
    読後に本書について調べてみたが、過去に一度も映像化されていないようだった。
    これだけのスケール感があるのに、映像化が全くされていないことは意外だ。
    内容的にはまさに劇場映画向きだと思う。
    東京駅という画面映えする舞台が中心になることも売りとなる。
    もちろん、相当に大規模な撮影を行うことになるから、原作ファンならそれだけでも「観たい」という気になるのではないだろうか。
    丸の内口と八重洲口の間をバイクで走り回る様子も面白い映像になりそう。
    映画の中でもし課題になりそうな点があるとすれば、登場人物の多さだろうか。
    この物語の売りである以上、登場人物を減らす訳にはいかない。
    100分程度の映画に納めようとすれば、自然と一人一人の出番は少なくなってしまうだろう。
    元々明確な主人公がいない物語だけに、映画の中では登場人物全員がほぼ均等に活躍することになってしまう。
    確かに映画としては、表現しづらいかもしれない。
    小説という形式だから、読者のペースで、読者の頭の中で情景を想像しながら読み進められる。
    映画として凝縮されてしまうと、目まぐるし過ぎる展開に観客がついて来られなくなる可能性は十分にある。
    しかしながら、この作品については是非映画版を見てみたいと願ってしまう。
    それだけ読み進めながら、自分の頭の中で景色を思い描いてしまったのだ。
    2000年頃という時代に描かれた作品だが、現代で表現されたらどうなるだろうか。
    物語の書かれた時代的にスマホは当然出てこないが、それでも違和感なく読み進められた。
    続編として「上海編」もあるらしい。これも是非読んでみたいと思う。
    当たり前であるが、良い作品に出会うと本当に心が躍る。
    今これからの時代では、小説すらAIが書き上げてしまう。
    もしかするとそんなAI小説でも感動することがあるのかもしれないが、やはりそれはそれで寂しく感じてしまう。
    極めて才能のある作家が身を削って生み出した作品だからこそ、心に響くのだと信じている。
    文字になってしまえば、AI作でも人間作でも違いはないはずなのに、なぜかそう思ってしまう。
    もしかしたら、そう期待しているだけかもしれない。
    だけど人間の力を信じたい。心からそう思うのだ。
    (2023/5/6)

  • 登場人物、場面の切り替わりが多いが、シチュエーションが独特なので「誰だっけ」ということはなくついていけた。
    登場人物達が影響しあい、一つの結末につながっていく様は面白かったが、「ドミノ」というほどのカタルシスは感じなかったなあ。2も文庫化されてるようだから読んでみたい。

  • 前半の50ページには、物語の「起」が詰まっていて、ワクワク感に混じって多少のもどかしさも感じる。しかし、後半の爆発力を思うと、読み飛ばさなくて良かったと感じます。

    まず最初に触れたいのが、「どらや」の袋という一つのアイテムを巡って物語が構成されている点。登場人物たちは、各々がこの袋に思い入れを持っており、その必死さがこの物語におかしみを与えています。どこかで見聞きしたような演出な気もしますが、わかりやすくていいですね。

    27名と1匹もいる主人公たちですが、わたしが前半の主人公として名前を挙げたいのは、額賀義人です。「えり子」の手下が運転する暴走バイクの後部座席で、鼻水だらけで気を失っていた気の毒なおじさん。えり子が、額賀の容貌を手下に伝える電話は印象的。
    「名前は額賀義人。五十くらい。ムーミンみたいなデブで頭にスダレ入ってる。すげえ汗っかきだから遠目でも分かるよ、スプリンクラーが歩いてくるみたいだから」
    ここまで言っても、大目玉にはならないでしょう、、、みんなえり子さんのことを恐れておいそれとは近づけなくなるでしょうから。
    こう書くと、主人公として挙げるべきなのはえり子さんではという気もしますが、額賀さんの消息をハラハラしながら見守っている時が楽しかったので。

    もう一つ前半で印象的なシーンは、麻里花がトイレに行きたさのあまり演技力を開花させ、オーディションの審査員を黙らせるシーンですね。ここに限らずですが、ベタな演出なので結末が予想できたものではありましたが、何気なく読み飛ばしていたサリーの心情と、その時の麻里花の境遇がリンクするのが爽快で、もっとやれと応援したくなったものです。

    後半の山場は何と言っても、爆弾魔に麻里花たち少女が捕まってからの怒涛の展開。
    特に痺れたのが、玲菜が麻里花に、爆弾魔を騙すような演技をしようと持ちかけるシーン。ここからなにが始まるのだろうとワクワクしました。ここがこの作品を読んでいて自分が最も盛り上がったシーンかもしれません。助かった後の「宣伝」も合わせて、間違いなく後半の主人公は彼女らでしょう。
    ・・・とはいえ、カルピス作戦は効いたのでしょうか?犯人がお腹が痛くなっている描写はありましたが、それによって突破口がひらけましたっけ?

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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