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感想・レビュー・書評
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明治維新が終わって十数年後の日本に来て、東北地方を通訳兼従者一人をつれて旅行した英国女性の旅行記。外国人を見たことのない人たちの村々を馬で牛で徒歩で人力車で旅行する。たくましい英国人女性には驚く。また、たった一人でそれも女性で外国人が旅行してもまったく安全だったそのころの日本に感動する。
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日本で一番有名な女史の著作は『朝鮮紀行』なのかなあ、と思うのだが、イギリスの王立地理学会の特別会員であり、世界を旅して回ったイザベラ・バードは、勿論日本にも来ており、実は日本についての紀行文は本作だけでなく、他にもある。それくらい日本に魅せられていたのかな、と感じる。
とはいえ、これは女史が初めて日本に来た時の旅で、なんと梅雨~台風の時期に、東京を発って東北地方を抜け、蝦夷、しかも蝦夷でも未踏の奥地をめざしたのだ!
横濱で雇った日本人の青年ひとりを連れて、単身、いまだ外国人が足を踏み入れた事のない場所。
日光より先、福島、新潟、秋田、青森。上巻は、蝦夷へ渡る手前までを扱っている。
明治になってまもない日本、既に横濱新橋間に鉄道が通っているものの、その他の交通手段は人力車(女史はクルマと呼ぶ)、そして荷馬だけ!
想像するとこれはキツい。当然道が舗装されているわけもなく、豪雨続きでしょっちゅうあちこちで洪水、溢水があるなか、ずぶ濡れ、泥だらけになりながらの旅という、なかなか壮絶なものなのだ。
バード女史の紀行文は有名だけどまさかこんな凄まじいものだったとは思いもよらなかった。
繰り返し、日本人は小さくて醜い、とあるのには苦笑してしまうが、考えてみると、ほんの半世紀くらい前までは、まだ「瓶底眼鏡に出っ歯、がに股」というのが日本人のイメージだった事を考えれば当然のことか。
子供が裸、男がふんどしいっちょ、女も上半身は裸がデフォ、というのには少し驚いた。明治の半ばくらいまでは、まだこんなものだったんだろうか。
とはいえ、正直で勤勉、旅人からぼったりする事は全くない。そして親切(おもてなしか!)という日本人の美点、そして雨が降っていない時の日本の景色の素晴らしい美しさについても繰り返し述べられている。
日光では、今、金谷ホテルとして有名になっている金谷邸が登場していて、興味深い。