山月記

著者 :
  • TRkin (2012年9月27日発売)
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感想・レビュー・書評

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  • いつかどこかで読んだ記憶もあるけれど、もう一度読んでみようと思ってた本。
    人食い虎になってしまった人間と友人の邂逅。
    人間の意識が戻った時に、人を食べてしまったことへの嫌悪感、徐々に人の意識に戻る時間が短くなっていく恐怖感はどんなものなのだろう。想像もできない。
    短いけど、悲哀溢れる物語で切なくなる。

  • 些か報いとしては重すぎるのではないかと思わんでもないが、
    傲慢で狭量な人間に大事を成す事能わずというのは教訓として身に沁みる。自分はそもそも過信するほどの能力もないが、それでも自信と過信を取り違えず、他者に認められたいと願うなら他者の声に耳を傾ける謙虚さが寛容と、常に戒めないといけないね。

    まあ傲慢も狭量も、そして羞恥心も自分で矯正するのは並大抵のことではないし、そういう意味では李徴氏は李徴氏として生まれてきた瞬間から、既に業を背負っていたという他はない。

    天稟に恵まれながら、それを統御する自己を持ち得なかったことは、悲劇でもあり喜劇でもあり。なんにせよ可哀想だ。

  • この気持は誰にも分らない。誰にも分らない。己と同じ身の上に成った者でなければ。
    臆病な自尊心と、尊大な羞恥心

  • 世人を疎み交わらず、自分を一廉の人物であると自負し詩人として身をたてようとした李陵。
    しかし詩人としては認められず、生活のため官吏に戻るが出世もままならぬという中で、彼は突然姿を消す。

    その後、李陵はいかにして虎となったのか。李陵が虎として山中で出会った官吏時代の旧友に、その経緯と心情を打ち明ける。

    人としての心が日毎に失われていることを恐れる李陵。わずかに残った人間らしい心のうちに、残された妻子を想う彼の姿は憐れでもある。

    旧友が旅の一行とともに李陵の元を去り、丘の上から振り返り一匹の虎を見下ろす様子は、そこだけ切り取られた絵のようで美しかった。

  • 自分の中には猛獣がいる。
    李陵の場合は、臆病な自尊心だった。
    自分の場合はどうだろう?
    すでに虎に喰われているのかもしれない。虎になっていることすら気づいてないだけかもしれない。
    怖れと嘲り。憤りと畏怖。
    どちらも自分の中にある。
    松下幸之助は、素直であることが一番大事だと言った。
    ドラッカーは、真摯さが大切だと言った。
    自分は、自分に対して素直だろうか。虎から目を背けていないだろうか。
    いくつになっても、この作品は自分に生き方を問うてくる。

  • Kindle無料版にて。
    森見登美彦の「新釈走れメロス」を読んでいて、元ネタの「山月記」読んだことないわーと思ったのでさっそく読んでみる。
    読んだことないと思ったら、読んでた。
    虎になるやつね。
    だいぶ前に読んでたわ。
    昔は全然面白くないと思ってたけど、今読んだら割と面白いじゃん。
    あいかわらずすっごい読みにくいけど。
    なんつーかわからんでもないわ。
    言い訳のために本気出さないとか、プライドがデカすぎて人に教えを請えないとか。
    わからんでもないわ。
    ただそれで虎になるという発想がすごい。
    結構面白い。

  • 彼が読者を得られなかったのは、自業自得でもあるが彼の不幸だと思う。
    世界はそれほど悪意に満ちた人ばかりではない。もし作品を見せ合って批評し合うことができていたら、一人くらいは李徴の作品を好きだと言ってくれる人が現れたのではないだろうか。

    こんなもしも話を次々と想像してしまう、読者に読解の余地が残された本。

  • 言葉の力をひしひしと感じる。カタイ印象の強いはずの漢文調の文体で、こうも繊細で切ない文章を生み出す不思議です。
    最初一文目から、初めてこの作品を読んだときの衝撃を思い出し、李徴が朗々と詠う詩に感動しました。李徴と自分を重ねて若干鬱になるけど、それと同時に「私だけじゃないんだ」と、ちょっと安心もしてしまいます。


    引用めも
    ・羞しいことだが、今でも、こんなあさましい身と成り果てた今でも、己は、己の詩集が長安風流人士の机の上に置かれている様を、夢に見ることがあるのだ。岩窟の中に横たわって見る夢にだよ。嗤ってくれ。詩人に成りそこなって虎になった哀れな男を。
    ・人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句を弄しながら、事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭う怠惰とが己の凡てだったのだ。

  • <<レビュー2回目>>
    至高の小説。
    読み物として面白いだけでなく、多少の成功体験のある人、全てに非常に重要な参考になる。
    場合によっては人生を踏み外すリスクを減らすことが出来る。
    素晴らしい本。

    <<レビュー1回目>>
    未だに染み込む。痛い程にっ!いろいろなことが原因でそれぞれの虎になっている人の何と多いことか。高校の時に折角読んでいたのに分かっていなかった…。
    超名作。

  • 何故虎になったのかの解釈で、ネットで面白い解説をしてる方がいて、成る程と思いました。
    しかし私には文章が難しかったですね。。
    虎さんの詩の意味が理解できず、素晴らしい詩なのか普通なのかもわからず…(笑)
    山月記は国語の授業で出てきたはずなんですが、詩の内容全く覚えてないです。。

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著者プロフィール

東京都生まれ。1926年、第一高等学校へ入学し、校友会雑誌に「下田の女」他習作を発表。1930年に東京帝国大学国文科に入学。卒業後、横浜高等女学校勤務を経て、南洋庁国語編修書記の職に就き、現地パラオへ赴く。1942年3月に日本へ帰国。その年の『文學界2月号』に「山月記」「文字禍」が掲載。そして、5月号に掲載された「光と風と夢」が芥川賞候補になる。同年、喘息発作が激しくなり、11月入院。12月に逝去。

「2021年 『かめれおん日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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