- Amazon.co.jp ・電子書籍 (356ページ)
感想・レビュー・書評
-
何の予備知識もなく読みました。
島崎藤村の本を読んだことがなかったので、なんとなく読みづらそうな印象を持っていましたが、いざ読んでみると、とても読みやすく抵抗なくすらすらと読めました。
この本で、穢多と呼ばれた人たちの存在を初めて知りました。人種差別の問題は最近も注目のテーマですが、同じようなことが日本人同士の間でもあったのだということを当事者目線で学べたことが良かったと思います。主人公の誠実さに惹かれ、応援するような気持ちで読みました。
私にとっては、読んでよかったと思える一冊でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自身の出自を人に明かしてはいけないという戒めを破る、破戒が大きなテーマ。
新字旧仮名で書かれているので初見は取っつきづらいが、読み進めていると慣れる。とはいえ固有名詞など馴染みが無いものも出てくるので、事前にあらすじを押さえておくと読みやすそう。
1900年ごろ、明治後期の日本の情勢がおぼろげながら読み取れる。 -
ジワジワ追ひ詰められていく樣は、「来るぞ来るぞ」のヒッチコック・サスペンスかジェイソン君のやうで迫眞の展開也。
當時の差別意識の凄まじさが伝はる。(今も問題は解決を得たとは云へないのは承知してゐますが。)
最後、ハッピーエンドとは云はない迄も 少々出來過ぎの感あり、
折角なので話としては 絶望的に殘酷な結末で締めてもらひたかつたデス。 -
青空文庫で読んだ。旧仮名遣いだったりして視覚的な読みにくさはあるが、文章自体は案外読みやすい。
主人公丑松くんの心の葛藤がメインの小説ながら、独白がうじうじだらだらじめじめと続く「私小説」的なしめっぽさで嫌になってしまうことはない。山国信州の風景や、諸脇役の人生模様など、主人公以外の事物の描写の挿し込み方がうまいのかな。とはいえ当然それらは主人公の目を通して語られるので、「主人公の心の葛藤」をまわりまわって描いている。丑松くんの気持ちはびんびん伝わってくる。
被差別部落問題に対する関心が発端で、「そういえば」と思い出してこの本を読んだのだが、「勉強になった」とか「社会に対する鋭い問題提起の意識が云々」とかいうよりは、純粋に文学作品として面白かった。それは良い意味で意外で、読んで良かった。
丑松くんは小学校教師なのだが、生徒にもよく慕われ友人にも恵まれた好青年で、その優しい人柄がきちんと描かれている。だから読者としては、弱いところもある彼を好きになれて、彼と一緒に悩み苦しむことができて、満足な読書体験ができる。そういう意味で「ふつうの小説」であって、部落差別のことは舞台装置でしかなかった。
そういうわけでベースに差別問題があるので、部落差別問題を全く知らなかったらいまいち理解できないだろうし、かといってこれを読めば問題の根深さがわかる、というほど知識を供給してくれたり問題意識を喚起してくれたりするわけではない。と思った。
それだけこの本が書かれた20世紀初頭は、今よりもっと差別が身近な問題だったのだろう。・・・ってじゃあ今は差別はなくなったの??――というお勉強はまた別の機会に。-
2013/05/02
-
そう言っていただけると、書いて良かったです。私も、文学史の授業で出てきたかなー…くらいの認識だったので、備忘のために。そう言っていただけると、書いて良かったです。私も、文学史の授業で出てきたかなー…くらいの認識だったので、備忘のために。2013/05/06
-
-
読み始めは漢字の読みかたに苦労したが、読み進めていくうちに慣れてきた。筑摩現代文学大系の第8巻も併せて読み進めていったが、青空文庫とフリガナの振り方の違う箇所がところどころあった。未読のまま過ごしてきたが、このような内容だったとは。人々の心情と自然の描写にすぐれている。ハッピーエンドとはいかないが、エンディングは希望の持てるものであったのが良かった。