可哀相な姉 [Kindle]

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  • 2012年10月1日発売
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感想・レビュー・書評

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  • ダイナマイトの原料(薬)を飲んで死にたいと思うこの言葉がインパクトありすぎて凄いです。
    とにかく好きな表現が多かったです
    「たそがれの空は、古びた絵のように重々しく、静かに、並木の上に横たわっていた」などなど!

    女優と恋慕していた、自分と似ている男に姿を重ねてみるようになる。すなわち男と同じようにこの女の人に恋い焦がれてしまう
    ⇒ドッペルゲンガー的な恋はロマンチックでありつつどこが純情なパノラマ島綺譚のような感覚もあってそれが後の終わりで分かったのですが……
    姉がよく売ってい花の値打ちを見ると、おそらく彼女は自分の性質を安売りしていたのではないかと考えるようになりました。
    ダリヤ:「華麗」「気品」「移り気」50銭
    シクラメン:「遠慮」「清純」「内気」50銭
    菊:「高貴」「高尚」「高潔」時価

    主人公が姉の癖や性質を利用し姉からの解放を喜ぶとこはなんとも言えない気持ちになりました。

  • 姉を踏み台にして自分が仕合わせになるなんて、なんという弟なのか!

    可哀相な姉は、否定の時のジェスチャーが、頭を左右に振らないで、縦に頷くように振ってしまうという変な特徴がある。

    その間違ったジェスチャーのせいで、濡れ衣を着せられることになってしまう。
    なんとも悲惨なお話である。

  • 場末の狭い家に幼い「私」と、「私」の従姉と「私」の父の間に(すなわち近親相姦により)生まれた「姉」がたった二人で暮らしている。「姉」は言葉を発せず、病気で体から異臭を発し、しかもクソの父母があべこべを教えたせいで「首を縦に振る」ことを「拒絶」の意味で使っている。ただ「姉」は「私」を慈しみ、「私」もまたそれを受け入れていた。物語の中で「私」は少年から青年へと成長し、美しい女性に恋をする。「髭が生えたらまたおいで」と言われたので口髭を蓄えるようになるのだが、「姉」は大人になった「私」を拒絶し,首を激しく縦に振る。「姉」は花売りで生計を立てているようだが、ある日そのことを訝しんだ「私」は「姉」を尾行する。

    最悪だった。最悪な本は「何とかして全員幸せになってくれ〜(元凶のクソ野郎以外)」と思いながら読むのだが、これは最初から酷すぎて「せめて楽に死んでくれ…」と思ってしまった。そのくらい最悪。
    あと終わり方が厭に綺麗でそれも最悪です。

  • 弟が容赦ない。

  • 『ずっとお城で暮らしてる』の解説で桜庭一樹が“弱者のとほうもない怖さ”について語っているのを読んで、思いだした作品。いつ、なにで読んだのか、思いだせないけれど強く印象に残っていた。小説としては出来がいいとは言えないけれど。一人称の稚拙な語りくちが気味悪い。いや〜な後味。こんなお話だったっけ?

  • なんというか、本当に可哀想な姉。
    そして可哀想な弟。
    出口のない爽快感。虚像の爽快感というか。すべての収束を見たようで、むしろとっちらかったような、終わり方。こういうの好きだなあ。
    ちょっと面白かった。

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著者プロフィール

一九〇二年(明治三十五)、北海道生まれ。本名温(ゆたか)。推理作家渡辺啓助の実弟。慶應義塾高等部卒、博文館で雑誌『新青年』の編集者として横溝正史のもとで働くかたわら、推理小説、幻想小説を執筆した。博文館の映画プロットのコンテストに応募し、審査員だった谷崎潤一郎の目にとまり小説家デビュー。三〇年(昭和五)二月十日、谷崎のもとに原稿催促にいった帰り、タクシーが踏切で交通事故を起こし、死亡。享年二十七。

「2019年 『ポー傑作集 江戸川乱歩名義訳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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