もうダマされないための「科学」講義 (光文社新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  •  ふーむ。題名がなんとも。フェイク、エセ、ニセ、非科学を取り上げている。ネット依存型になっていると、どれが事実であり、どこまでが科学なのかよくわからなくなる。自分の判断基準があやふやになってくるのだ。
     確かに、日本の原子力発電は安全だと言われていた。原発の自家発電が地下にあって、津波で全電源喪失という事態は「想定外」と言われる。本当に、想定外だったのか?とにかく、テレビに出てくるコメンターの「専門家」なるものが、どうも怪しすぎる。ある意図を持って説明する。明らかに、フェイクであり、ファクトはどこにあるのかを問わざるを得ない。また「政府の見解」なるものも、納得のいく説明ではない。「説明責任」という言葉が乱れ飛ぶ。
     菊池誠の「科学と科学でないもの」の論考が面白い。「多くの科学者が科学だと思っているのがたぶん科学だ」というところから始まる。どこまでが科学で、どこから科学でなくなるか?その線引きが未決着となっている。ニセ科学に「科学と非科学に明確な区別がないのだから否定はできない」のであるが、「科学を装っているけれども、実は科学でないもの」という根拠が不確かな流言をニセ科学という。マイナスイオンブームもあった。1996年山野井昇工学博士の『イオン体内革命』から始まった。結局、マイナスイオンって何?マイナスイオンは身体にいいと言われるが、科学的根拠は?など。
     例えば、統計的に朝ごはんを食べるとテストの結果が良いというデータを見て、「これからも朝ごはんを食べよう」という言葉と「朝ごはんを食べて成績アップ」というのは、果たしてどうか?と問いかけている。家庭環境、生活態度が重要で、強い相関関係があるが因果関係はないと菊池誠はいう。
     平均寿命が伸びたこととテレビの保有台数が伸びたことは、キレイな相関関係があるが、テレビの保有台数が伸びていることで寿命が伸びているわけではないという。「同じ時期に、同じように増えている」ことだけだという。
     科学に見せかける上で白衣は重要なアイテムであり、白衣を来ているけど中身はオカルトという場合もあると菊池誠はいう。確かに、農学部にいたときに、白衣を着ると自分が研究者のような気分になったものだ。
     「正しい間違いは科学である」という言葉も気にいった。「間違いだとわかった学説」が積み重ねられて科学が成り立っていく。
     聖書で書かれた世界の創造は科学であるという人がいて、アメリカではある州は、進化論も創造説も理科の時間に教えなさいと要求するところもある。
     ニセ科学の例として、血液型性格診断、水からの伝言と波動、ホメオパシー、ゲーム脳、EM菌、磁気水や活水、百匹目の猿などが挙げられるという。
     EM菌(有効微生物群)がニセ科学になっているのは頷けなかったが、片瀬久美子の論証でなるほどと思った。EM菌は農業分野で活躍するだけならばいいが、宗教や医療、そして放射能を除染するまで言ってしまうとかなり問題が多いなぁ。1980年代の初めの比嘉照夫教授は輝いていたのだが、残念だ。
    比嘉照夫はいう「EMは効くまで使え、空気や水の如く、必ず効果は表れる」「いいことはEMのおかげ、悪いことが起きたのはEMの極め方が足りない」など。 
     この本は、科学とは何か?を明らかにしようとしていることは重要だ。また、煽りジャーナリズムというジャンルがあり、不安につけ込む人たちもいる。ネットを見ていると不安なことが起こっている。
     情報を吟味して、情報の拡散には十分注意することが必要だ。

  • まともな本なのでおすすめです。
    なお、Amazonレビューで★1つを見ると、科学的理由でつけている人はゼロでイデオロギー的な理由でした。
    非科学・エセ科学に騙されないようにしましょう。
    https://seisenudoku.seesaa.net/article/494924489.html

  • 疑似科学にだまされないための講義。いまもマイナス・イオンの話はよく聞くし、健康食品でコラーゲンを取ろうと宣伝しているけど、食べてもアミノ酸に分解されるので、直接それがコラーゲンになるわけでもないという。???な話である。

  • 科学的でないにもかかわらず科学を装う、いわゆる"ニセ科学"に関する問題を整理したもの。
    ニセ科学なんてのは笑い飛ばしてるくらいがちょうどいいと思うのだけど、それが政治や教育にまで浸透し社会に影響を与え出すのなら、さすがにそれはまずい。
    実際、一流大学を出て有名企業でそれなりのポジションについてるような人であっても、義務教育レベルで眉唾とわかるニセ科学に嵌ってる姿はしばしば見受けられるわけで(Facebookとかでもよく見るよね)。そうなると、それはもう個々人の知識の有無の問題ではない。
    ニセ科学に対して我々はあるいは科学はどう対応すればいいのか、というのはけっこう難しい話だ。

  • 科学と科学っぽく見えるものなどの科学周辺の話や、食品の安全性にしろ、原発のリスクにしろ、要は程度問題だよねという話。白黒分けたがるのはちょっと休憩して、グレーの世の中でどう生きていきましょうか、という話。

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著者プロフィール

大阪大学サイバーメディセンター教授。1958年生まれ、青森県出身。東北大学大学院後期博士課程修了、理学博士。専門は物理学。ほかにSFとテルミンとプログレッシブ・ロック。著書に『信じぬ者は救われる』(かもがわ出版刊、香山リカと共著)、訳書に『ニックとグリマング』(ちくま書房刊、P.K.Dick)など。星座はレティクル座(どこにあるのか知らない)、血液型はZ型。座右の銘は「明日できることは今日するな」。

「2009年 『おかしな科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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