- Amazon.co.jp ・電子書籍 (299ページ)
感想・レビュー・書評
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姉を暴行殺人で亡くした男が警察官を経て探偵になり、ある事件の被害者家族から加害者の現在の調査を依頼される。
加害者が捕まり、処罰され、刑罰を終えて再び社会へと戻ってくる。
時が流れても苦しむ被害者や被害者家族は、加害者の姿がどうあれば赦すことができるのか。
そもそも赦すことができるのか。
加害者が苦しむことが望みなのか。
憎しみや苦しさは何処で昇華させるべきなのか。
見えない傷というのは完治することはない。正解のない治し方に被害者は葛藤し続けるしかないのかもしれないと思わされる作品。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
現実でレイプ事件に関しての理不尽な判決を耳にしてたのでなんだかとてもやりきれない気分になる。被害者遺族は何をもって赦すことができるのか、答えがでない永遠の問い。修一の最後の葛藤が辛すぎる。
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読めた。
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15年前に姉を暴行殺人でなくした男
探偵をしながら復習の時を待つ。
被害者の遺族は、何があれば加害者を許すことができるのだろうか。
私ならきっと何があっても許せないだろう -
探偵事務所で働いている佐伯修一は、老夫婦から「息子を殺し、少年院を出て社会復帰した男を追跡調査してほしい」という依頼を受ける。依頼に後ろ向きだった佐伯だが、所長の木暮の命令で調査を開始する。実は佐伯も姉を殺された犯罪被害者遺族だった。その後、「犯罪加害者の追跡調査」を幾つも手がけることに。加害者と被害者遺族に対面する中で、佐伯は姉を殺した犯人を追うことを決意し…。衝撃と感動の社会派ミステリ。
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姉を殺された被害者が主人公の物語。警察官になったが、姉を殺された影響から加害者に対して異常な憎しみを抱き、それがきっかけで加害者に行き過ぎた対応をしたことで逮捕、懲戒免職となった。
その後、探偵として誰とも関わらず孤独に生きている。
タイトルの悪党とは、主人公の姉を殺した加害者のことだと思っていた。実際この物語は、主人公が加害者を探して復讐を果たそうとする姿が描かれているのだが、悪党は姉を殺した加害者だけではない。かつて大切な人を奪われた被害者が、加害者のことを調べてほしいと依頼してくるのだ。だから、多くの悪党が描かれている。主人公は、複雑な思いを抱きながらも、依頼されたを見つけ出し、時にそれがきっかけで被害者が加害者を刺し、半身不随にしてしまう事件のきっかけとなる。
この物語は、明るい人間が1人も出てこない。悪党か、その被害者。そしてそれを傍観する無責任な他人しかいない。しかし、それが現実なのだろう。事件に関わった人は心に何かしら傷を負い、何もなかったように生活などできない。周りも、どんなに理解しようとしても、被害者、加害者の気持ちを理解することなど不可能だ。誰も救われない。その現実をただ冷静に突きつけた作品だが、作者の思いがそこに秘められているのではないだろうか。 -
著者が同年代(一つ歳上)、探偵という設定以外は引っかかりの無い作品だった。
ハッピーエンド。 -
凶悪犯罪の被害者の視点と加害者の視点。加害者が根っからの悪党とは限らない、がだからと言って許せるかといえば違う。そもそも大切な人が殺されて、加害者が泣いて詫びて真面目に更生すれば許せるのか、という問題。復讐は悲劇しか生まず悲しみと憎しみの連鎖が切ない、、、
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7つの短編を繋ぐのが、主人公佐伯の姉を強姦して殺した犯人への憎しみ。
依頼者から頼まれた「悪党」たちのその後を追い
彼らと関わっていくうちに佐伯の心の中も揺れ動いていきます。
「悪党」になってしまった背景、そしてその後も「悪党」から抜けられない
人々たちの人生。
●赦すことなどできないだろう。悪党はそのことを自覚しているのだ。
だから、赦してもらおうなどという七面倒くさいことは考えないし、
求めないのさ。
だけど、悪党は自分が奪った分だけ大切な何かを失ってしまうこともちゃんと分かっている。それでも、悪いことをしてしまうのが悪党なんだよ。
物語の後半に出てくる一人の“悪党”のことば。
それが悪党たちを総括するような言葉に感じました。
自分が過ごしている日々の幸せを感じずにはいられない。
でも遠いどこかにある物語だとは決して思えない。
この「悪党」という小説にはそのな感覚があります。