スペシャルだったら安いし購入。よかった。岡田脚本炸裂。
<印象的なセリフのピックアップ>
千明(語り)「さみしくない大人なんてない。大人になればなるほど傷つくことは多くなり、傷の治りは遅くなる。だから、痛みに鈍感にならないと生きていけないんだ。そして人はよりどころを探して生きる。例えば仕事。例えば恋。例えば家族。仕事をよりどころにして生きてきた私が、もし仕事を失ったとしたら、これから先、どう生きていったらいいのだろう」
○千明の家・居間
灰田「サスペンスっていうのはさ、必要なんだよ。世の中色々わからないことだらけなわけだよ。なっ。何が正しくて何が間違ってるのか、さっぱりわからない。真面目に生きててばかばかしいと思うこともある。世の中のルールを守ってんのに何か損してる気がする。どうも納得がいかない。映画や文学っていうのはさ、サスペンスと違ってさ、出てくる主人公が何かイカれてるおかしやなやつらだよ。そういうのがもてはやされる。それも納得がいかない。社会のルールをぶち壊すなんてそりゃあんた、口で言うのはカッコいいけど、自分とは何か関係ある気がしない。そもそもさ、今はその当たり前が分かんなくなってんだから、だから見たいのさ」
千明「確かに。サスペンスで描かれる世界ってひどくまっとうな世界ですよね。人を傷つけたり、だましたり、人の物をとったりしたらいけない。罪を犯せば必ず罰せられる。刑事や探偵という神様が見逃さない」
灰田「まあセックスに似てるな。ドラマ作りは。つまり俺たちは視聴者とセックスしてるわけだよ。わかる?」
万理子「申し訳ございません。皆目見当がつけません」
灰田「だってよ。あの手この手を駆使して、相手を喜ばせようとしてんでしょうわれわれは」
千明「確かにね、そうですね」
灰田「でもな、人によってそれぞれやり方が違うわけさ。例えばあの人な、あの人のドラマ作りは、まあわがままで一人よがりなセックスみたいなものだよ。どう私こういうのが好きなのよ。いいでしょいいでしょどうみたいな。なあ」
千明「いやいやいや」
灰田「そこ行くと俺なんかはさ。もう相手のためにひたすらサービスよ。もう滅私奉公して、どうですか? いかがですか? そういう感じよ。はははっ」
○居酒屋
千明「でもまああんまり、いい言葉じゃないですよね痛いなんてね。私、痛くありませんからなんて言うと、余計痛いみたいですよね。痛いのループですよねまるでねふふふっ」
和平「確かにね」
千明「ね」
和平「私たち色々と痛いと思われてるんでしょうね」
千明「満身創痍ですよ」
千明「あなたと話してるのと何て言うの女同士? てゆうかおばさん同士みたいなんだけどハハハ」
和平「いや私はあのおじさん同士で話してる感じですよ」
千明「え~おじさん同士?」
和平「だってそろそろひげ生えてきますよ」
千明「ひげ!? え? もうそんな時間?」
和平・千明「ハハハッ」
○家への帰り道(夜)
千明「でもね、しょうがないんですよ。私たちずっと、自分が思っているよりたいしたものじゃないんですよ」
○千明の家・居間(夜)
万理子「以前千明さんはおっしゃっていました。ドラマを作る時、プロデューサーと脚本家は恋愛しているのと同じだと。そうおっしゃってましたよね。現実で恋愛関係になれないのでしたら、仕事の上で恋愛できたら素敵だなあと考えました。あ、もちろんなりたいと言ってなれるものではないことは重々承知しております。でも私、千明さんに喜んでいただけるのでしたら、何でもできる気がしております」
千明「正直な気持ちを言うね。向いていると思う。向いてるんじゃないかな。今回すごい思ったんだけどさ、脚本家はもう自分はだめだめなくせに、こう人のこと冷静に分析したり、これ言ったりするわけでしょ。もう常に他人事って言うかさ。これあれ、ほめてんのよ。あの、客観性があるなとか、観察力があるなとかいう感じで。万理子ちゃん、仕事の上で恋人になれる日を楽しみに待っております」
○千明の家・キッチン(夜)
千明「大人になったらさ、こう分別とか身についてさ、ちゃんとした大人になってる予定だったでしょ。でも全然だめ。むしろ年を取れば取るほど、もっとみっともなくなってるような気がする。本当にみっともないことばっかりしてるんだなあ。本当に嫌なるよね」
典子「千明」
千明「いつになったら、本当の大人になれるんだろうね。でもさ、私そういうあんたのこと、何かカワイイなっておもうよ。じたばたしてて、馬鹿みたいでみっともないけど、なんかすごいカワイイなって思う。世の男どもはさ、女のそういうとこ全然見てくんないんだよね。カワイイなんて絶対言ってくれないじゃない。だからさ、女同士はせめてさ、そういうところも褒め合おうよ」
典子「うん」
千明「うん、ふふっ」
典子「私も千明のことカワイイって思う」
千明「いいよ私は」
典子「バカだし、みっともないし、童顔をいいことに若作りだし、ぐだぐだだけど、でも千明ってカワイイと思う」
○長倉家・バルコニー(夜)
真平「兄貴はさ、千明じゃだめなの?
和平「俺あの人のことさ、大事に思ってるんだよね。何か勢いで恋愛関係になったとするだろ。恋愛なんていうのはさ、うまくいかなくて、壊れてしまうこともある、でしょ?」
真平「そうだね」
和平「俺はお前みたいに天使じゃないからさ。今のように一緒にいられなくなる。それが嫌なんだ」
真平「へぇ~」
和平「天使のお前にはわからんかもしらんがね」
○千明の家・居間(夜)
千明「お宅のお兄さんはさ、何か好きとか、嫌いじゃないけどね別に。でもほらいろんなことすっ飛ばしてさ、いきなり息の合う老夫婦みたいな感じになっちゃってるじゃん。だから今更ねえ、恋愛始めましょうなんていうのもなんかね、なんか、この先誰も現れなかったら、それもありなのかなみたいな気持ちはあるけどね」
万理子「あ、保険のようなものですかね」
千明「そうかなあ」
典子「なんかちょっとずるい」
千明「何でよ。これが独身の強みなんだよ」
典子「いいな保険」