- Amazon.co.jp ・電子書籍 (469ページ)
感想・レビュー・書評
-
行動経済学の分野でノーベル経済学賞を受賞し2024年3月に逝去されたダニエル・カーネマン博士の有名な著作。
アンカリング効果、プライミング、問題の過度な単純化、平均への回帰、ハロー効果、後知恵効果。
人の持つ偏見による事実認識の誤りを正した本書は”脳がシステム1(早い思考)とシステム2(遅い思考)を使い分ける”という概念を提示し、認知のエラーが起こる仕組みに迫った。直観に反する多くの実験結果が提示され、結構衝撃的。
一方、近年の実験手法の見直しで再現性が確認できないという批判を受けている内容も多い。
読んでいて、断定的に書かれる内容のいくつかが、あまりに直観に反しすぎていて、「これほんと?」とネットで調べたらあれこれ反証がでてきたものもの多かった。実験の再現性にはかなり疑問符。本書の内容は仮説としてはかなり興味深いんだけれど、”立証された科学”としては鵜呑みにすべきでない。
文量も多いので各種実験結果とそこから導かれる断定的な結論に疑いの目を向けながら読んでいると、めちゃくちゃ疲れてしまって、”システム2”を酷使するしんどい読書であった。
世界的に広く知られ、引用もされる古典的名著であるが、人に勧められるか?と言われると結構微妙。興味深い概念を提示したが、結論を急ぎ、著者自らシステム1の脆弱さを示した功罪ありの一冊、という印象。
アンカリングやハロー効果、後知恵効果などの根本の概念はさほど揺るがないと思うが、どうしても読者は印象的なエピソードをつまみ食いしちゃう。本書を読むことで”怠惰で信じやすいシステム1”のネガティブな機能とそこにブレーキをかけるシステム2の実力が試される、とは皮肉が効いている。
システム1の怠惰な回答を防ぐには、統計は大きな武器だし、もしかすると大規模言語モデルのようなAIもそれに近い結論を出せるのかも?とふと思いました。
本当は下巻を読んでから感想を書こうと思ったのですが、すぐに読み切れる確信がなかったのでいったんここで。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
めちゃくちゃ面白い、完全にファンになってしまった。
冒頭の二つのシステムの存在に関する理論から完全に引き込まれた。
確かにじっくり考えるより先に反射的に感情や思考が浮かぶことはよくあるけど、異なるシステムが働いているなど考えたこともなかった。
人間の思考がいかに過ちを犯しやすく、信頼に足らないか、を学べた。
さすが学者が書いているだけあってたくさんの実験や事例があるのも興味深かったし学びやすかった。
これからはより慎重に自分の判断を検証するようにしたい。 -
日本でもベストセラーになった「認知的バイアス」について書かれた本です。ノーベル経済学受賞者だけに、論理展開が緻密です。しかし緻密さを追求すれば、本書のように学術的になってしまうので、読み物としては面白みに欠ける傾向は避けられません。私のようなズボラな読者のために、1章を2ページくらいの文章量でまとめてくれないあかな・・もちろん専門家のために付録で詳しい解説はいくらやってもらって結構なんだが。
本書で最も刺激的だったのは、経営者のバイブルとまでいわれる「ビジョナリー・カンパニー」「エクセレント・カンパニー」は幻想を垂れ流す効用しかないと断言している点(上巻P363)。ダニエルさんは結構過激です。 -
確証方略や統計的判断の困難さは厄介だ。この本を読んだことで知識として知っていても、実践するのは非常に困難だ。都合の良いストーリーをこさえて錯覚に陥らないよう、中立をこころがける注意が必要だ
-
人間の意思決定がどのように行われるか? といった内容。心理学って超面白い、人間の心(脳)って不思議、故に怖い。直感型思考のシステム1と熟考型志向のシステム2を主に用いて説明してくれるのだけど、いかに多くのエラーを起こすか多くの例を持って示している。中には読者に考えさせるように質問がいくつかあって本質は全く一緒なのに、質問の仕方で自分の回答が変わってしまう...。なんでこんなに合理性のない回答になってしまうんだろうと自分でもびっくりで面白かった。慣れない分野というのもあって中々全てを説明できず、消化もできていないのだけど、何回か再読したいね。人間は多くの選択を能動的にも受動的にも行っている...。自分達が生きていく上で心(脳)の中で何が起きているか知っておいて損はないと思う。もしかしたら幸せに一歩近づけるかも。これは僕もお勧めする一冊です。
-
・直感的に素早い思考をするシステム1と、論理的に遅い思考をするシステム2が人間には備わっている。
・システム1は第一印象や過去の経験で素早く判断してくれるが、認知バイアスによるエラーを生みやすい(ハロー効果やアンカリング効果など)
・そのため、システム2を動員してエラーから解放されるよう考えることが適切。
・でもシステム2はサボるの大好き -
-
誰でも無意識に浅はかになってしまうという衝撃。しかもそれがファストな思考であるために過去何万年にもわたり生存競争にマッチしていた!
様々な実験を挙げてファストな思考とスローな思考のそれぞれの得意分野を解説してくれる本書。
相変わらずついついファストな思考が優先される人間社会において理知的な判断を下すために必須であろう。
まさに良書中の良書と言って良い。おすすめ。 -
ノーベル経済学賞受賞者による、認知と統計に関する思考プロセスについて記された書籍。Audibleで拝聴。
信頼できる統計結果があるにもかかわらず、「自分は違う」と、人は都合の良いストーリーを受け入れてしまう…などについて、具体的なエピソード付きで語られている。ビジネスや日常における思考エラーについて認識するきっかけにもなり、非常に面白く読めた。
【ポイント】
・直感的に素早い思考をするシステム1と、論理的に遅い思考をするシステム2が人間には備わっている。
・システム1は第一印象や過去の経験で素早く判断してくれるが、認知バイアスによるエラーを生みやすい(ハロー効果やアンカリング効果など)
・そのため、システム2を動員してエラーから解放されるよう考えることが適切。
・上記の具体例や心理効果について、多様に説明がされている。