塩狩峠(新潮文庫) [Kindle]

著者 :
  • 新潮社
4.21
  • (16)
  • (11)
  • (5)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 189
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (383ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あとがきを読んで知ったのだが、主人公は実在の人物がモデルとなっているという。
    主人公・永野信夫の成長過程から、謙虚とは感謝の気持ちから生じる態度なのではないか、と思った。
    全ての人間に存在している意味がある、という。
    生きていると様々な人間に出会う。いい人もいれば、嫌なヤツもいる。どんな人との出会いも自分を成長させる糧だと思うと、どんなに嫌なヤツであっても感謝の気持ちが生まれる。
    だから謙虚って難しい。演じてるだけの謙虚さはすぐ見抜かれる。謙虚さとは内面からにじみ出るものなのだと思う。

    読書中は、主人公の成長と共に自身の生き方やあり方に問いを突き付けられた。
    正直、今でも全部理解できてないし、行動に移せるわけではない。(少しでも近づけられるといいけど。)

    この本は、読む年齢でどの人物に思い入れるのか、分かれる気がする。
    40代で読んだ私は、ものすごい勢いで人間として成長していく主人公の永野信夫よりも、同僚の三堀の存在の方が気になった。
    彼のやることなすこと(世間ではこちらの種類の方が多いと思う)、全部自分の行動パターンに似ているのだ。
    私って、三堀のように他人の目には映っていたんだなー、と気づいた瞬間、恥ずかしくて仕方なくなった。
    己の行動を改めなければ、と強く思った。
    これに気づけただけでも本1冊以上の価値はある。

    ★この本で学んだこと★
    主人公の母・菊の言葉。
    「人間てね、その時その時で、自分でも思いがけないような人間に、変わってしまうことがあるものですよ」

    どんなに嫌なヤツであっても、人に不快を与えない態度で他人と接したい。

  • 名作と聞いて手に取り、読み終えて期待通り名作と理解する。

    信夫の幼少期から続く丁寧な心理描写は、私が今後生きていく上で何度も思い返すことだろう。宗教色の強い作品ではあるが、あくまで冷静で客観的な視点で書かれているので、よっぽど嫌いでない限り万人が感動できると思う。

  • 人生とは何か、愛とは何か。信夫の葛藤と人生を通して問う物語。隣人を愛する気持ちを忘れずにいたい。
    人の心は色々だ。
    お前の気持ちをわからない人もいるし、お前にわかってもらえない人もいる。
    善人なし、一人だになし。

  • 1人の青年が、幼少期から大人になるまでのお話。
    キリスト教が彼に、人として生きることの意味を考えさせ、実践させていく過程が興味深い。キリスト教の信仰心は私にはないけれど、どう生きるかを考えるきっかけになった。話の展開もわかりやすく、結末も印象的でした。
    事実に基づく小説だと、あとがきで知りました。

  • 明治初期の実話を元にした小説。
    主人公は士族出身の東京の裕福な家系に育った若者。が宗教については複雑な家庭環境にある。キリスト教信者がヤソと言われて蔑まれた時代。生き別れと思っていた実母が家に戻り、実母はカトリックだったことを知る。
    敬虔な祈りを捧げる素振りに違和感を感じつつも、自分の生き様に葛藤を抱く。思い立ったことが親友のいる北海道への移住。本音は思いを寄せる病弱な妹の存在。そしてその妹もカソリックであることを告げられる。主人公が下した決断はいかに。
    戦国〜江戸時代の隠れキリシタンに通ずるものがある日本のカソリック像を描く。

  • 昔の作品だったので読みにくいかとなかなか手がのびなかったが、読みはじめると、丁寧な描写と登場人物のまっすぐな姿にすぐに物語にのめり込んでしまいました。
    宗教にまつわるところが主となる物語で自分自身は特になにも信仰はないが、信じるものがある人間というものはここまで強くなれるのかと思いました。

  • 小学生の頃バスの中で読み終わり涙が止まらなかった記憶。あとがきにて実在の人物や場所ということにも衝撃を受けた。
    物語の内容でもある自己犠牲の精神はいま読んでも胸に響くのか。気持ちが重たく読み返せないが、感想は変わるかもしれない。

  • 不朽の名作とも言われていて、
    新潮文庫の100冊に選ばれていたので手に取りました。

    多くの乗客の命を救うために、
    塩狩峠で自らの命を犠牲にした若き鉄道員永野信夫の生涯を描いた長編小説。

    宗教色が強い作品だとか様々なレビューがついていたので
    どうかと思いながら読みましたが、
    一つの文学作品として読むと素晴らしいものがあり、
    最近読んでいた小説とは格段に心に響いてくる重みが
    違いとても感銘した作品の一言に尽きます。

    キリスト教や宗教については殆ど知識がないので、
    この作品を読んだことによってキリスト教というものを
    大まかに把握することが理解るすことができ、
    宗教を信じること、そしてキリスト教に身も心も
    捧げるということの大変を感じました。

    信夫のように宗教やキリスト教に理解をすることは出来ますが、
    ここまでするというのは並大抵ではなく、
    まして信者であってもここまで出来る人はいないというのが
    周囲の人達からの証言などからもあるので、
    本当に凄い人だとしか言えませんでした。

    幼い頃には仏教を信じながら、途中からキリスト教を受け入れて
    最後には講演をされるまでの人になり、人のために身を犠牲にしたり、
    気になっていた友達の妹の身体が治るまで結婚を待つなんて
    本当に現代で考えても想像を超えてしまう愛の深さでした。
    それなのに最後はあっけなかったので、
    せめてふじ子と結婚生活を少しでもして欲しかったなと思ってしまいました。
    ふじ子の心境を考えると涙を出さずにはいられない心境になりました。

    主人公の永野信夫が小説だけでなく、実在した長野政雄という人という
    のにも驚きであり、小説のよりも実在の長野氏の方が遥かに
    信仰が深く、立派な方であったというのが三浦さんのあとがきにも
    あったのでまた更に驚くばかりでした。

    この作品を読むまで塩狩峠のことは恥ずかしいことに
    全然知らなかったので、長野政雄についても知らなかったので、
    これをきっかけにしっかりと胸に刻んておきたいと思いました。
    一度映画化もされたそうですが、世知が無い世の中にもなってきたので、
    また映画化をされても良いかと思いました。

    作品中には数々のキリスト教の教えがありましたが、
    基本的に覚えておきたい言葉を心に留めておこうと思います。
     義人なし、一人だになし

     一粒の麦、地に落ちて死なずは、唯一つにて在らん
    主人公のような人にはとてもなれないですが、
    他人の痛みを分かち合い、他人の過ちを許し愛する気持ちを
    少しでも持って接していけるような人間になりたいと思いました。

  • なかなか良い小説に出会えないと思っていた中でタイトルは知っていたので借りた。

    だいぶ昔の作品だが、終盤は涙が出そうになった。

    素晴らしい作品である。

  • 三浦綾子さんの著作はいくつか読んでいますが、この作品も、美しくもあるけれどもやはり悲しい結末でしたね…

    三浦綾子さんの著作は、理想的な美しさと、現実の厳しさ・悲しさのバランスがなんとも絶妙でいつも心にダメージを負うというか、読むのにエネルギーが必要だなあと思います。
    背筋が伸びるというか、それだけ胸に残るというか、考えさせられる作風だなと感じます。

    実在の方がモデルだということを後書きを読んで知りましたが、他者のために自らを犠牲にした行為の勇気と潔さは美しくもありますが、どこか「美談」だけにしてはいけないなという風にも思います。


    やっぱり、誰かが犠牲になって得られた幸運というのは、個人的にはどこか納得がいかない。
    命を賭したご本人は、「犠牲」だとは思っていないのだとは思いますが…。
    なんとも、やりきれないですね。


    さまざまな困難を授けられても、いつも明るく、信仰心も強い主人公の妻でさえ、やはり夫の死を「尊いもの」とは思えなかったですから。最後の慟哭のシーンが、それを表していると思いました。

    人間ですから、それが自然だと思うし、人間だからこそそれでいいとも思います。




    そして個人的には、後半よりも主人公がキリスト教に入信する前の前半の方がすき。笑

    主人公の父の在り方だったり、胸に留めておきたいセリフも多かった。


    また折りを見て読み返したいなと思う作品。



全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三浦綾子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ミヒャエル・エン...
湊 かなえ
三島 由紀夫
ヴィクトール・E...
夏目 漱石
遠藤 周作
朝井 リョウ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×