ユービック [Kindle]

  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • これまた凄い想像力…( * ॑꒳ ॑* ).☆.。.:*・°
    面白くて、後半一気読み!!
    これが1969年の作品て…

    『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』とはまた違うタイプのSF作品。

    「みなさん、在庫一掃セールの時期となりました。当社では、無音、電動のユービック全車を、こんなに大幅に値引です。」

    出だしの一文です。
    UBIKとは何?
    表紙のスプレー缶じゃないの?え?車?

    意味深な広告が話の途中に何度も入ります。
    注意深く読んでください。

    1992年。
    超能力者(エスパー)が普通に存在している時代。

    覗き屋(ティープ)、念力移動屋(パラキネテイスト)、予知屋(プレコグ)、死体蘇生屋(リサレクター)、物体賦活屋(アニメーター)。

    なにやらアニメのような世界観に…

    月面のプロジェクトで、ランシター合作社の雇う不活性者 (イナーシヤル)11人は月面へと出発する。

    内容紹介がなかったので、どこまで言って良いのか微妙なのですが…。
    文庫本の裏表紙の紹介は見ない方が良いです(^▽^;)

    私はフォロワーさんに警告を受けていましたし、電子書籍だったのでネタバレ回避できました。

    読了後、裏表紙を拝見しましたが、バッチリネタバレ(-∀-`; )
    知らないで読めて良かった。

    映画『TENET』を一部彷彿とさせる作品ですが、全くの別モノ。

    もしも映画化とかなったら…映像化できるのかなぁ…
    クリストファー・ノーランならできるかなぁ…
    あの世界観を壊さず表現できるのだろうか。

    半生者の事とかエスパー達の能力の事とか時間の事とかとにかく言いたい事沢山あるのですが…控えます。(、._. )、ううっ

    読んだ人と思いっきりネタバレトークしたくなる作品です!!

    ディック、天才ですね(ღ*ˇ ˇ*)。o♡

    おすすめです!!



  • 短編、長編含め、数ある作品の中でもフィリップ・K・ディックの、最高傑作のうちの一つと名高い本書。

    まあ、1969年発表の古典的 SFで、浅尾氏の翻訳も相当古臭い感じがしてなんとも独特の感覚を覚えるが、その懐古趣味的なおもむきがもはや一種の味ですよこの辺りの古典では。

    しかも、物語上、その古臭い未来の情景がどんどん過去に戻っていくという描写、これ映像化されたらけっこ面白いと思うけれどなぁ。無理かなぁ。

  • 面白い!!!何ていうか、「面白い!」という貧弱なボキャブラリーでしか本書を説明できないことが残念である…。超能力?電脳世界?的なバトルものかと思ったらなんとまぁ!ハードボイルドな香りのするミステリへ変貌を遂げ…そうこうしているうちにどんどん捻じれていく世界…!そして結末は…「???」ってなりましたが。。。境界が溶け始めたのか、それとももう彼もそうなのか…?うーーーーん面白いよディック!電気羊も好きだったけど軽くそれを上回りました。次は何を読もうか。表紙もカッコいいよね。好き(*´з`)

  • クリストファーノーランで例えるなら
    作中の設定はTENETのようで
    結末はインセプションのよう

    ディックの人気作1位が納得できる
    単純に面白いの一言

  • 1969年、発表。
    作中、1992年設定。読心術や未来予知の超能力者を芸能プロダクションのように統括して貸し出すビジネスがある(超能力を無力化する反超能力者も流通する)。また死者を完全に死ぬ前に冷凍して《半生》状態に置き、会話する技術もある。主人公ジョー・チップは「超能力に対し企業を防衛する」ランシター社に勤務する《超能力力場》測定技師。ランシター社に予知能力者をつかって採用面接などで入り込む隙を発見し産業スパイを働くホリス社に対抗する大仕事が舞い込んで、チームで現場の月に行くが罠だったらしく、同行の経営者ランシターは爆弾で殺され

    設定は発表の’69年とあまりに近い、普通は遠未来となる死後生存技術確立後の社会。ランシターの死で為すすべもなくなり地球に戻るが(ディックの読者にはおなじみの)《現実崩壊》が進行していき、あたりは米国が第二次世界大戦参戦直前の1939年となる‥主人公の笑えるぐらいの経済的困窮がディックの執筆当時の反映みたいだし、結末の数ページにだけ現れる《救い》=ユービックは、彼が再婚と自作高評価を予見(期待)していたことを示すかもしれない。

    ランシターの妻、エラも《半生》状態。冒頭部分でランシターが「埋葬は野蛮だ」と言う。遺体を冷凍保存するのは戦場では無理、という反戦の表明と見ることもできる。’69年発表当時はベトナム戦争たけなわで、自信満々のアメリカは当初報道を自由にしていたが「どうやら勝てない」のが判明しつつあった。作品の想定’92年は奇しくも“兵役を(留学により)忌避した、ベトナム反戦運動に加担した”クリントンの当選し年、北朝鮮の金正日が瀬戸際外交をくりひろげ、たまりかねた金日成が修復に乗り出し(不思議にも翌94年急死」)、た年。

    不思議な少女パットの「過去の選択をなかったことにする超能力」は何を意味するのだろうか?1960年のケネディVSニクソンの大統領選で投票に「ルーサー・キング」と書いたとされるPDKにとって、そのニクソンが’68年の大統領選で当選するとは過去が蘇ったような悪夢的出来事でなかったか?“JFKが暗殺されなかったら”という小説は私の知るだけでも3冊ある。私はJFKがいてもベトナム戦争を止められたとは思えないが、ランシターの《死》はJFK暗殺の暗喩かもしれない

    ランシターの肖像の硬貨が現れるのが最初の方の異変だったが、JFKも没後すぐ(’65)半ドル硬貨となっている。アポロ計画を発表したJFKにとって月は憧れの地だったから、ランシターはそこへ行って死んだのかもしれない(ビッグプロジェクトではあっても同行する必要があったか?)。月にも行ってない出版の’69年から二十数年で月面民間人恒久設備や死者との対話ができるとは思えないが、全面戦争にならないのみで戦乱の絶えない世界情勢に、’68から「二期の大統領3人」ぐらい先には「死者の声に耳傾ける」政治を期待したのではないか

    1939年は、第二次世界大戦勃発とはいえ、主要国間では本格的戦闘の行われない奇妙な時期。「米国は参戦するだろうか」、翌年の大統領選にFDルーズベルトは前例のない三選をかけて「あなたがたの子供を戦場に送らない」と公約する。作品中でうっかり「ロシアと連合するよ」と言ってしまうと目を剥くので、つぎには話題を振られても「政治のことは話したくない」と突っぱねる。権力者は恣意的に民意を操作し、一昔前のこと、一世代も未来のことは途方もなく別世界に見えるという示唆だろうか。

  • 傑作!

    高校時代に同じくSF好きの同級生が「ヴァリス」に挑戦しており感想を聞いてみたところ、「さっぱりわからん」と言っていた。やっぱり、薬物中毒の妄想オヤジかと思ってずっと敬遠していたのでした。

    でも・・・なんでしょう、この面白さは!オカルト的でもあり、ミステリー的でもあり。

    69年の作品なので冒頭なんとなくレトロ感あふれていますが、”ランシターは言った。「死んだ家内に相談してみよう」”で、もう捕まれてしまいました。死に行く者との会話ができるサービスを売りにする企業、超能力者集団によるセキュリティー・サービス、過去に干渉することによりい現在を変えてしまう超能力者、など科学的背景などまったくない妄想の産物なのですが、「現代」を形作るものを別のガジェットで実装している感覚にちかいのでしょうか。

    今の状態って生きているといえるのか?できごとの偶然性には何か意味があるのか?など、不安な世界に生きるということは、まさにディック的な妄想世界にほぼ等しいのではと思えてくるのです。ショック。

  • 初めてちゃんと読んだフィリップ・K・ディックの小説。レビューの評価が高いので期待して読み始めたのですが、正直言ってよくわからないまま読了しました。
    もう一度読めば「ああ、そういうことか!」となるかもしれないですが…(再読はしないと思う)

  • 脱力。住み慣れた自宅が別空間になった気分。中盤以降凄かった。ミステリアスな展開と謎解きも面白かったけど、少しずつ生気が抜けていくモノローグは半端なかった。特にジョーが階段を上るくだり。強烈。合間に挟まれるユービックの広告の謎がドラマに混ざってくるところも凄い。これが「ディック感覚」というやつか。タバコが砕けたり、腐ったコーヒーだったりのあの一連の細々とした描写も強烈。それが身に迫ってくる感覚とか読んでるだけで息苦しさがあった。こんなに生々しく苦しい幻想描写は他にあっただろうかとか言いたくなる
    コインをいちいち入れないとドアも開けられないガジェットとかは星新一を思い出す。それが単なる背景にすぎないってのがディックの面白いところという感じ。

  • 設定は分かりやすく、テンポよく話も進んでいく為読みやすかった。
    読みやすいとは言ったものの、内容を理解することとは別の話。
    正直オチも含めて理解出来ていないところが多々ある。
    ただ、楽しめた。何がどう楽しかったかの説明はできないが、、
    時間に余裕ができたら再読してみようかな、、

  • めちゃくちゃ面白い

    始めは超能力バトルと思いきや、ホラーになり、世界の時代が疑わしくなる。

    現実を疑って前に進む主人公の強さ。
    最後には現実がどこへいったんだ?
    グレンランシターもいつの間にか死んでいた。

  • これだけレビューが高くて評価されてる作品だから、理解できない私の方がちょっとポンコツな頭なんだろうと思うが、私だって…!理解して語りたかったよ…!と思いました。

    でも、クリストファーノーランで例えてる人がすごく分かりやすくて、視覚的なイメージが多少出来ました。

    私が思ったのは、「これだけの設定をモリモリに詰めて成立させちゃうってすごいなあ」くらいだけど、世界的名作を読めたことに後悔はないです!

  • オーディブルは今日からフィリップ・K・ディック『ユービック』を聴き始める。

    エスパー(超能力者)と超能力を無効化する不活性者(イナーシャル)の暗闘。それは、エスパーを仕切るホリス異能プロダクションと反エスパーの良識機関の代理戦争でもあった。

    「反エスパーを旗印とする良識機関各社がテレビや伝送新聞に出す広告も、最近はやたら絶叫調だ。あなたの秘密を守りましょうと、1時間おきにあらゆるメディアから広告が訴えかける。知らない人間が、あなたの波長を盗聴していませんか? あなたはほんとうに1人ですか? これはテレパス(読心能力者)に対する攻撃……そのほか、プレコグ(予知能力者)に対する嫌悪と不安も見られる。あなたの行動は、見知らぬだれかに予言されていませんか? あなたが会いたくもなく、自宅に招きたくもないだれかに? 不安の解消には、もよりの良識機関に連絡なさるのが一番です。良識機関はあなたが事実、不法な侵犯行為の被害者であるかどうかを調査し、あなたのご要望に応じて、そうした侵犯行為を無効にしますーーしかも、お手頃な値段で。
    「良識機関」――ヘルベルトはその用語が気に入っていた。品位があるし、正確でもある。個人的経験から、それはいえる。2年前、1人のテレパスが、安息所のスタッフにもぐりこんだことがあった。その理由は、いまもってよくわからない。半生者と訪問者との秘密の語らいを盗聴するつもりか。それとも、ある特別な半生者だけが狙いだったのか。とにかく、ある反エスパー組織の調査員がテレパシー磁場を探知し、彼に知らせてくれた。依頼契約書に彼がサインすると、さっそく1人の反エスパーが派遣されてきて、安息所の中で寝起きすることになった。問題のテレパスがだれかはつきとめられなかったが、テレビの広告が約束しているとおり、その能力は無効にされた。そして、ついには、敗北したテレパスは去っていった。いまこの安息所にテレパスはいない。これからもその状態がつづくよう、反エスパーの良識機関が、毎月1回定期的に彼の施設を検査してくれている」

    「もちろんーーと、ヘルベルトは黙考をつづけた。わたしは、テレパスがもぐりこんでいるという彼らの言葉を、真に受けた。彼らはここで測定したというグラフをわたしに見せて、それを証拠だと言いはった。ひょっとすると、あれは彼らの研究所で作られた贋物だったのかもしれない。わたしは、問題のテレパスが去ったという、彼らの言葉を真に受けた。テレパスは来たり、テレパスは去りーーそしてわたしは2000ポスクレッドの料金を払った。もしかすると、良識機関なるもの、実はイカサマナノでは? 事実なんの必要もないのに、彼らの奉仕が必要だと嘘をついているのでは?」

    火のないところに煙を立てるだけの、かんたんなお仕事です。相手の言葉を証明する手立てがこちらにはない、というのは詐欺師の常套手段。それと比べれば、死んだ人間を冷凍保存して半生命(ハーフ・ライフ)を維持する安息所(モラトリアム)のほうがまだマシかも。半生命は永遠ではなく、時間とともに衰えるし、半生命を維持するには莫大なカネがかかるが、少なくとも、遺族は半生者の脳と会話ができるから。

    良識旗艦のスカウトG.G.アシュウッドが発見したという新種の不活性者パットは「過去を書き換える」ことでプレコグの予知能力を妨害し、妨害したことをプレコグに気づかれることはないという。過去を書き換えた事実を知るのは自分だけ。プレコグはだから、本来予知していたはずの未来を知ることはない。というわけで、パットの言葉を証明する手立てはなく(起きるはずだったことが起きなかったわけだから)、相手の言葉を鵜呑みにするしかない。ということは、パットもやっぱり詐欺師? ジョー・チップが語る不活性者の存在意義。

    「人類の存続因子として見れば」「それ(不活性者がもつ反能力)は超能力とおなじように有用なんだ。特にわれわれ普通人にとってはね。反能力の因子は、生態学的バランスの自然回復といえる。ある昆虫が飛ぶことを覚えると、別の昆虫が網を張ってそいつを捕えることを覚える。これが飛ばないことと果たしておなじだろうか? 蛤は自分を守るために固い殻を作りだした。すると、鳥は蛤を空高くまで持っていって、岩の上に落っことすことを思いついた。ある意味で、きみは超能力者を餌食にする生物であり、超能力者は普通人を餌食にする生物なんだ。つまり、きみは普通人の味方ってことだよ。バランス、捕食者と餌食の一循環。これは永遠のシステムに思えるし、率直にいって、もう改善の余地もなさそうだ」

    オーディブルはフィリップ・K・ディック『ユービック』の続き。

    アンチプレコグ(反予知者)のパットは、過去を変えて別の時間線を創造できる力をもつから予知能力を無効化(中和)できるというんだけど、ふつうに考えれば、それってむしろ超能力だよね。それが本当なら、無効化するのは予知能力だけじゃなくて、すべての超能力+ふつうの能力であって、まさに無敵じゃん。テストを担当したジョーがつけた「アンダーラインが入った2つの✗印(注意人物。社にとって有害。彼女は危険なり)」が重要な意味を持つことになる。

    ところで、パットが変えた過去のことは誰も覚えてないから、パットの言うことが真実かどうかは誰も判断できないんだけど、それを補うために、変えたはずの過去から遺物(ジョーが書いたと思われるテストへの評価)を持ち出せることになってるんだけど、ちょっともやる。元いた時間軸がいまも続いているとすると、そっちの世界では、その遺物はなくなるの?

    スタントン・ミックの代理人ミス・ワートがグレン・ランシターの良識機関に持ち込んできた案件は、ルナのプロジェクトに不活性者11名派遣してほしいというものだった。どうやら突然行方をくらましたホリス側のエスパーがそこに大量投入されているらしい。ジョーは派遣メンバーにパットも加えることにした。超能力者バトルの様相を呈してきたよ。

    オーディブルはフィリップ・K・ディック『ユービック』の続き。

    スタントン・ミックからルナへ呼び出され、まんまとワナにハマった11人の不活性者とテスト技師ジョー・チップ。経営者グレン・ランシターは爆発により死亡する。爆発後、彼らは奇妙な時間のズレを次々と経験する。手持ちのコインはとっくの昔に廃止され、紙幣にはランシターの肖像が描かれ、タバコはひからび、店で注文したコーヒーも何日も前に淹れたもののよう。そこにあるはずのない年代の電話番号簿。黒焦げになって何年も前に死んだように見える不活性者ウェンディ・ライト。まるで誰か(パット・コンリー以外に誰がいる?)が過去にさかのぼって過去を書き換えたかのような。それはホリスの企み? それとも、もしかしたらエスパーvs不活性者の争いそのものがでっちあげの絵空事で、そんなものは最初から存在しない? ホリスと良識協会の双方が結託して、火のないところに煙を立てて荒稼ぎしてたとしたら???

    オーディブルはフィリップ・K・ディック『ユービック』の続き。

    「任意に選んだ町の任意の店にある任意のタバコのカートン。その中に、グレン・ランシターからおれたちに宛てたメモが見つかった」
    「われわれがここへくるのを、どうして彼は知っていたんだろう?」「それに、われわれがたまたまあのカートンをつかみとることを、どうして知っていたんだろう?」

    ランシターによって残された便所の落書き。

    「便器に飛び込み 逆立ちするんだ。
     わしは生きとる きみらは死んだ。」

    テレビコマーシャルに映ったバスルームの落書き。

    「飛びこめなにを ぐずぐずしとる。
     きみらは死んだ わしは生きとる。」

    ランシターが死んでいたなら、「プレコグに教えられた」という説明は成り立たなくはない。だが、死んでいるのがランシターじゃなくて11人の不活性者+ジョーだとしたら?(アルの見立て)

    「われわれは半生状態なんだ。おそらく、まだプラットフォール2号の中。おそらく、まだルナから地球へ帰る途中なんだ。あの爆発でわれわれは殺されたーーランシターじゃなくて、おれたちのほうが殺されたんだ。そこでランシターは、おれたちの霊子の流れを探知しようと努力をしてる。これまでのところ、それはうまくいってない。おれたちの声は、この世界からむこうへ届かない。だが、彼のほうは曲がりなりにも連絡をよこしている。いたるところで彼の通信が目につくーーこっちがでたらめに選んだ場所でもだ。彼の存在は、あらゆる方向からこの世界へ侵入してくる。彼だけがだ。それは彼がたったひとりぼっちで努力ーー」

    こちらはジョーの独白。

    「これはおれの観念の客体化なんだ。風と寒気と闇と光の層に埋まり、葬られていくのは、この世界じゃない。このすべてはおれの内部で起こっているのに、そのくせ、おれにはそれが外にあるように見えるらしい。ふしぎだ、と彼は思った。全世界がおれの内部にあるのだろうか? おれの体に包みこまれて? いったい、それはいつ起こったのだ? これは死期の近づいた兆候にちがいない、と彼は自認した。おれが感じているこの漠としたもの、エントロピーへの屈服ーーこれが死の過程であり、おれが見ている氷は、その過程が成功した結果なんだ。おれの命がまたたきして消えたとき、全宇宙は消失するだろう。だが、おれに見えるはずのさまざまな光、新しい子宮への入口は、どうなっているんだ? とりわけ、交接している男女の赤く煙った光は、どこにあるんだ? そして、獣的な強欲さを象徴する鈍く黒ずんだ光は? おれに感じとれるのは、迫りよる闇と、完全に奪われた熱、それ自身の太陽に見捨てられて冷えきっていく氷原だけだ。
     これが正常な死であるはずはない、と彼は自分に言いきかせた。これは不自然だ。正規の崩壊の運動量が、その上に押しつけられた別の因子、わがままな無理強いの圧力にとって代わられたのだ」

    テレビでは、ランシターによるユービックの広告が流れる。「現代科学の最新技術の応用によって、物体が昔の形態へ逆もどりする現象を反転させることが、可能になりました。しかも、どんな団地アパートの住人にもお手軽にお求めいただける価格です。ユービックは、全地球の家庭技術ストアで販売されています。内服しないでください。火に近づけないでください。ラベルに印刷されている使用上の注意をよくお守りください。さあ、それを探すんだ、ジョー。そこにぼんやり座ってるんじゃない。外へ出てユービックを一缶買い、夜も昼も自分のまわりにそれをスプレーしたまえ」

    テレビに映ったランシターの録画?(死ぬ前に録画された、と本人はいうが真偽のほどは不明)いわく。

    「ぼくがここにいるのを知っているですね? つまり、あなたはぼくを見たり聞いたりできるわけですか?」
    「もちろん、きみを見たり聞いたりはできん。このコマーシャルはビデオテープだ。いまから二週間前、正確にいえば死の十二日前に録画したものだ。あの爆弾が破裂することを、わしは知っていた。プレコグたちを使って」
    「では、あなたは本当に死んでるんだ」
    「もちろん、わしは死んどる。きみはいまのデ・モインからのニュース中継を見なかったのか? 見たはずだ。わしの雇ったプレコグは、それも予知した」
    「トイレの壁の落書きはどうなんです?」
    「アルは衰弱しとるんだよ」「いいか、ジョー、わしがこのろくでもないテレビ・コマーシャルを録画したのは、きみらを助け、きみらを導くためだーーとりわけ、長年の友人だったきみをな。それに、きみがひどく混乱しているのはわかっとる。それが現在のきみの偽りない姿だーー完全に混乱しているというのが。もっとも、ふだんのきみの状態からすれば、それも意外じゃない。とにかく、がんばってくれ。いったんデ・モインまで行って、わしの遺体が安置されとるのを見れば、きみも落ち着つくだろう」

    ジョーの疑い。

    「ジョーはその論理の奇妙さ、おそらくは故意のまちがった方向づけを感じとった。アルこそいい面の皮だ。アルを身代わりにし、すべてをアルのせいにした、こじつけの説明。くだらん、とジョーは思った。それにーーランシターはおれのいうことが聞こえたのでは? ランシターは、録画だというふりをしてみせただけではないのか?」
    「もし、かりにランシターが、不正確なプレコグの情報、つまり、爆弾が彼を殺し、ほかのみんなが生き残るだろうという推測にもとづいて、あのビデオテープを録画したとしよう。すると、あの録画は、嘘はないが、まちがった作られ方をしたことになる。ランシターは死ななかった。トイレの壁の落書きにあったように、おれたちは死に、ランシターはまだ生きているのだ。あの爆発以前に、ランシターは録画のコマーシャルをこの時間に放送するよう、支持を出していた。そして、ランシターがその指示を取り消せなかったため、テレビ局では録画をそのまま放送したのだ。ランシターが録画でいったことと、トイレの壁に書いたことの不一致は、それで説明がつく。いや、それどころか、両方の説明がつく……。ジョーに理解できるかぎりにおいて、これはほかの解釈ではとても不可能なことだった。
     それとも、ランシターがわれわれをわざと煙に巻き、最初はこっち、つぎはあっちと、ひっぱりまわして楽しでいるのだろうか。われわれの生活につきまとう、異常で巨大な力。それが発散するのは、生の世界の中か、それとも半生世界の中か。たぶん、両方だろう。とにかく、それはわれわれの経験したこと、少なくともその経験の大部分を、支配しているのだ。たぶん、衰退をではなく。衰退とは別に。だが、どうしてそうでないといえる? おそらくそれも含めてだ。しかし、ランシターはそれを認めはすまい。ランシターとユービック。神の偏在(ユービクイティ)ーーと、突然に彼はさとった。それが語源だ、あの新造語、あのランシターのいうスプレー商品の。たぶん、そいつはありもしないのだろう。われわれをいっそうまごつかせるための、手のこんだ悪ふざけかもしれない。
     おまけに、もしランシターが生きているとすれば、一人ではなく、二人のランシターが存在することになる。現実の世界にいて、われわれと連絡をとろうとしている本物のランシターと、この半生世界で亡骸となって、アイオワ州デ・モインの葬儀場に安置されている幻影のランシター。そして、この論理をどこまでも突きつめれば、この世界のほかの人物、たとえばレイ・ホリスやレン・ニッゲルマンも、やはり幻影であることになるーーその一方で、彼らの実在の分身は、現実世界に残っているのだ。
     こいつはややこしい、とジョー・チップは自分に言いきかせた。彼はこの考えが気に入らなかった。たしかに対象的な構造ということでは満足できるが、その一方で、どこか整理がついていないように思えるのだった」

    退行が進むといっても、そのものが古びる(製造年月日が過去にさかのぼっていくので、物それ自体の経過時間が増え、古びたように見える)のではなく、過去の類似製品(ジェット機がプロペラ機、複葉機へ。最新の自動車がT型フォードへ)に取って代わられるのはなぜなのか。ただ時間がさかのぼるだけでは説明できないよね。本書では、プラトンのイデア論やチベット死者の書の輪廻転生を取り出して説明を試みようとしているが、うまくいっているとはいいがたい。あと、人によって退行速度(の体感速度?)が違うのは、どう考えればいい? 開閉するたびに5セント硬貨を要求するドアだけが古びないのはなぜ?

    オーディブルはフィリップ・K・ディック『ユービック』の続き。

    「すべてはきみの仕業さ、そうだろう、パット? きみのあの能力。われわれがここにいるのは、きみのためなんだ」
    「そして、きみはわれわれをコレ路していくんだ」「ひとりずつ順々に。だが、なぜ?」
    「きみがランシター合作社にやってきたのは、そのためなのか?」「G.G.アシュウッドがきみをスカウトして連れてきた。つまり、彼はホリスのために働いていた、ということか? われわれの身に起こった事件の原因は、実はそれかーー爆弾のせいじゃなく、きみのせいなのか?」

    「あの仮説は」「やっぱり正し」「かった」「きみとG.G.は。ホリスのために。一芝居打って。潜入したんだ」
    「そのとおりよ」
    「最高の不活性者たち。それにランシター。われわれをきれいに始末した」「これは半生命じゃない。われわれはーー」
    「そうよ、死ねるのよ」「まだ死んでないわ。つまり、とくにあなたはね。でも、一人ずつ順々に死んでいくわけ」

    やはりすべてはパット・コンリーの仕業だった。最初からそう考えないほうがむずかしい。だが、PKディックはその先を用意していた。

    「なぜ、爆発だけじゃ足りなかったんです?」
    「なぜ、わざわざパット・コンリーを使う必要があったんです?」「こんな大げさな反転作用、こんな時間の逆流にわれわれを沈めて、1939年まで送りつける理由はどこにもない。なんの目的も果たしてませんよ」

    「ぼくの受けた印象では」「われわれが対抗している相手は、目的をもった勢力というより、むしろ不満分子ですね。われわれを殺すか、無力にしようとしているだれか、良識機関としての機能を奪おうとしているだれかじゃなく、なんというかーー」「われわれにあんなことをして面白がってる無責任な存在です。そいつがわれわれを一人ずつ殺していく手口を見てください。こんなふうにそれを長引かせる必要は、どこにもないのに。そんな点から見ても、レイ・ホリスの仕業とは思えませんね。彼なら、もっと冷静で実際的な殺し方をしますよ。また、ぼくがスタントン・ミックについて知っている事実からしてもーー」
    「パット自身はどうだ」「彼女は心理学的にいってサディスティックな人間だ。ハエの羽をむしりとるような。われわれをおもちゃにするような」
    「ぼくには、もっと子供のような気がしますがね」

    「この退行は彼女の能力のせいですか? それとも、半生命の正常な衰退ですか?」
    「正常な衰退だ。エラもそれを経験した。だれでも、半生命にはいればそれを経験する」
    「あなたは嘘をついてる」

    「あなたは解答を知らない」「そこが問題だ。あなたは解答をでっちあげた。あなたは、ここでの自分の存在を説明するために、解答を創作する必要に迫られたんだ。ここでのあなたの何度かの存在、いわゆる実体化現象をね」

    「あなたは、ぼく以上になにかを知っているわけじゃない」「いまわれわれの身に起こっていることについても、また、だれがわれわれを苦しめているかについても。グレン、あなたがわれわれの直面している敵の名をいえないのは、あなたがそれを知らないからだ」

    「ユービックとはなんです?」
    「あなたはそれも知らない」「あなたはそれがなんであるかも、それがなぜ効くかも知らない。それがどこから来たかさえ知らない」

    「われわれは内側にいるう。あなたはその外側で面会サロンに坐っていて、手のほどこしようがない。あなたは、われわれが巻きこまれたものに、ストップをかけられない」
    「そのとおりだ」
    「ここは冷凍槽の中です」「だが、それ以上のなにかがここにある。半生命状態の人びとにとって自然でないなにかがね。アルが考えたように、ここには二つの力が働いている。片方はわれわれを助けようとし、もう片方はわれわれを滅ぼそうとしている。あなたが手を握っているのは、われわれを助けようとしているほうの力か存在か人物です。あなたはその仲間からユービックを手に入れた」
    「そうだ」
    「つまり、いまもって、われわれの中にだれひとり、いったい何者がわれわれを滅ぼそうとしているのかーーそして何者がわれわれを助けようとしているのかーーをさえ知らずにいるわけですよ。外にいるあなたもそれを知らず、中にいるわれわれもそれを知らない。ひょっとすると、それはパットか」
    「わしはそう思う」「あれがきみたちの敵だと思う」
    「いい線ですがね。ただ、ぼくにはそう思えない」

    オーディブルはフィリップ・K・ディック『ユービック』が今朝でおしまい。

    われわれを滅ぼそうとしていた存在は、それまで何度かほのめかされていたとおり、子どもだった。安息所でランシターの亡き妻エマの登場を邪魔していたジョリー。ということは、必然的に、われわれを助けようとしていたのは、半生世界の住人エマということになる。

    半生世界で命脈を保つために、周囲の半生者を食ってきたジョリー。だが、半生世界の退行現象を引き起こしたのは、ジョリーではなく、エマだった。この世界ではパットもただの被害者の1人にすぎない。

    「いずれ近いうちに、わたしは別の子宮の中へ生まれ変わる、と思うわ。少なくとも、グレンはそういうの。わたしは燻った赤い光の夢をしょっちゅう見るんだけど、これは悪い知らせなのよ。わたしの生まれ変わる子宮が、道徳的に正しくないということ」
    「あなたがもう一方の力なんだ」「ジョリーはわれわれを滅ぼそうとし、あなたはわれわれを助けようとしている。あなたの背後にはだれもいない。ジョリーの背後にもだれもいない。ぼくは、これに関係している究極的な二つの存在に、めぐりあえた」

    「わたしが生まれ変われば、グレンはもうわたしに相談ができなくなる。わたしがあなたを助けたのは、とても利己的で、現実的な理由からなのよ、チップさん。あなたにわたしの代わりをつとめてほしいと思って。わたしは、グレンが助言と援助を求められるような、グレンがたよりにできるような、そんなだれかがほしかったの。あなたなら理想的だわ。全生状態のときにやっていたことを、半生状態でもやってもらえばいいのよ。だから、ある意味では、わたしの動機は高尚な気持ちじゃなかったわけ。たいへん常識的な理由で、あなたをジョリーから巣食ったのよ」「それに、わたしはあの子が大嫌いだしね」

    「それにーーどこの安息所にも、ジョリーの同類はいてよ。この戦いは、半生者のあるところ、どこでも絶えない。それは一つの真理であり、法則でもあるわ。わたしたちのような種類のせいzンにとっては」「この闘争はガラスの内側で戦っていくしかないのよ」「ジョリーの餌食にされているわたしたち半生者の手で。チップさん、わたしが生まれ変わったあとは、あなたにその指揮をとってもらわなくちゃならないわ」

    エマは生まれ変わるために後継者を探していたと言っていた。つまり、半生世界はチベット死者の書でいうバルト(中陰)にあたり、前世で亡くなってから次の世で生まれるまでの中間期間ということか。ちょうど最近、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督のその名も『バルド』という映画を見たばかりだったので、不思議なシンクロを感じた。

    だが、本書のラストに、外の世界にいたはずのランシターが、ランシター・マネーならぬジョー・チップ・マネーを手にしたところを見ると、やっぱりランシターも半生状態にいて、あの爆発で死んでいたものと思われる(一人だけ逃れているほうがおかしいよね)。ということは、『インセプション』でいう「ドリーム・イン・ドリーム・イン・ドリーム……」状態ということか。最初の爆発は、良識機関の存在を嫌ったホリスの仕業だったのかもしれないが、半生世界にはそれとは別の有象無象が巣食っていて、別の超能力者バトルを繰り広げているというか。

    半生者となったジョーは、ユービックの缶スプレーの退行をとめようと念じて、ユービック製造業者のソンダバー博士の代理の工場長の娘を1992年から1939年に呼び寄せた。退行した半生世界にあっては、ジョーは予知能力をもったプレコグであり、テレパシーで未来人へ語りかけられるエスパーでもある。つまり、超能力者そのものだ。ということは、最初にジョーがいた世界の超能力者vs不活性者の争いも、そもそも半生世界の出来事でないのか。不活性者の側にいたはずのジョーは、ここでは超能力者であり、その活動を邪魔するジョリーはむしろ不活性者的な立ち位置となる。これじゃ、どこまでいっても、ドリーム・イン・ドリーム・イン・ドリーム・イン……」の迷宮から抜け出せないよ(笑)

  • 最初は結末がよく分かりませんでした。ネットに書かれているレビューをいくつか読んで少し理解できた気がしますが、もう一回読んだ方がいいのかも。

  • 1992年の科学技術が発達した世界。この時代には、死者を冷凍槽に入れて半生命者にし、脳波経由で全生命者と会話が行える技術が確立されている。また、超能力のような超自然的な力を持った人間もおり、彼らは念動力や未来予知、読心術といった特殊能力が使える。これに対して、その超能力を無効化する能力を持った人々(=不活性者)も存在する。ある日、良識機関(不活性者を雇って市民を超能力者の能力から身を守る事業を行う団体)の業界で最も有名なランスター合作会社に、月の宇宙施設で多くの不活性者を使って超能力集団から施設を守る案件が舞い込む。一方で、不活性者のスカウトマンが、ランスターの部下で電気テスト技師ジョーに、予知能力の不活性者としては最強とも思える能力を持ったパットという若い女性を見つけ出してきた。
    パット、ジョー含めたランスターたちは月へと向かうが、相手の策略にはまったと知り、地球へ逃げ戻る。ジョーは、月の案件自体もそうだが、月から帰って来てから身の回りの様子がおかしいことに気づく。劣化したタバコ、1年前のコーヒー、古銭になってしまった手持ちのコイン。時間が退行しているのだろうか。ジョーは戸惑いながらも真相を明らかにするため奮闘する。

    ―――――――――――――――
    大変面白いし、読みやすい。1992年がいまや古くそこで描写される世界も古くさい点があるが、楽しく読める疾走感あふれるSF作品。最初、手塚治虫のノーマンとかX-MENみたいな話かと思ったが、最終的にはマトリックスみたいな話だった。だいぶ伏線を回収してくれてすっきりする。この最後のどっちかわからないようにする感じも良い。映画化してほしい(しているのか?)。

    作中の「ユービック」だが、こういうのをマクガフィンというのだろうか。挿入される広告とユービック自体のつながりや最後のユービックの科学的説明も良い。

    この世界の時間の流れどうなっているのだろう。プレゴクがいる限り運命は変えられず決定論的なのではないか。

    冒頭の方でランシターの言葉が矛盾しているのだが、エラの瞳の色は茶色なのか、ブルーなのかどっちなんだ。

  • 最強クラスの超能力者集団と、その能力を無効化する不活性者集団が月面基地に集うというSF。
    異能力バトルかと思いきや、不活性者側に得体の知れない現象が起き続ける。
    能力不明・正体不明のスタンド使いに延々と攻め続けられる感じ。
    救いはないんですか……?

    読み始めると結末が気になって最後まで読み続けてしまう。
    1969年の作品なのに古さを感じさせない、素晴らしい作品です。

  • 面白かったけれども終盤、設定や話の辻褄に納得いかないところが増えてきて、読後はモヤモヤが残った。訳のわからない気分に読者を投げ込むのが狙いだったのか、破綻したプロットにエイヤと始末をつけたのか。
    いろいろツッコミどころがあって楽しく読める本ではあった。

  • 20180103読了。

    読んだきっかけは、ブレードランナーの新作映画がでていたため。

    小説としての流れは、当初思っていた話から世界軸・時間軸など大きく変わって動きが激しい小説。
    「常識」の前提になるものをずらしにかかってくることで、読んでて驚きも大きく楽しい。

  • フィリップ・K・ディックの名作、「ユービック」
    正直、かなり難しい、と感じました。現実とパラレルワールドのような世界、どちらが真実でどこまでがつながるのか。
    いま主人公がいるのは現実なのか非現実なのか、時間軸はどうなっているのか。
    そしてユービックとはなんであるのか。

    これらに完全な答えの出ないまま進むストーリーは最後までもやがかかっているような世界観です。
    善も悪もわからない。ディックらしいと言えばらしいのかも?いろんな人のいろんな立場が見えて、そこでわけもわからないまま犠牲になる人たちが描かれる、というのはある意味でリアルだなあ。
    物事に「表」と「裏」があるとき、そのどちらの面が「表」でもう片方が「裏」になるのかは誰が決めるんでしょうね。

  • 煙草が急に朽ちるところから物質の衰退、世界が退行していると解ってから一気に面白くなってくる。でも何よりも、小銭もろくすっぽ払えない生活力の乏しい男がラストで硬貨の顔になるというのが最大の皮肉だと思った。しかも姓がチップという念の入れ様。

  • 現実がグラグラと崩れるような感覚になる小説。すごく読みにくい文章が、かえってそれを助長している感じがして頭がおかしくなりそうでした。本当に先が読めないスリリングな展開のユービックは、取扱い上の注意を守って使用していただければ安全です。

  • いったいいつ映像化されるのか!

  • ディック得意の時間崩壊モノの真骨頂。超能力ウォーズものと見せかけて…というところも、ディックらしい不思議なプロットでふね。

  • 1960年代に書かれた作品とは思えないほど、いまでも十分に読める作品です。未来を描いた小説でありながら、時間が退行する現象を描いているので、その中間に位置する「いま・ここ」にいることの不可思議さを堪能できます。

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著者プロフィール

Philip K. Dick

「2009年 『髑髏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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