戦艦武蔵(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  •  焼却を免れ秘蔵されていた武蔵建造日誌をもとに構成された本作は淡々とした流れのなかに潜む熱を感じる作品であった。

     この熱というのが非常に厄介で、世界最大級の巨大戦艦を、技術の粋を尽くし、命がけで、数々の困難を乗り越えて完成させる達成感に、読んでいた自分も感動して目を潤ませてしまうほどであった。
     しかし、結果としてこの感動、この達成感とはいったい何だったのか!と思うくらいにあっさりと武蔵は沈み、枯葉のように人間は空を舞いとび砕け散る。

     人は、それが何を齎すかという結果について目を伏せて…いるのでは必ずしもなく、おそらく、見えなくなった状態で、目の前のことに熱中、没頭、陶酔することができるのだろう。そして戦時中に一つの形として現れたのが武蔵であったのだろう。



    ―――――――蛇足―――――――

     僕が初めて衝撃を受けた戦争物の作品を思い出そうとして、間違えて読んだ作品。思い出の本は実は渡辺清著「戦艦武蔵のさいご」だったのだが、本作吉村昭「戦艦武蔵」も読んで良かったと心から思う。

  • あまり物語っぽくなくて、途中飛ばしながら読んだ。事実を淡々と記載している感じ。当時は考えられないような巨大な船だったらしい。必要に迫られると技術が飛躍する皮肉。人が人を殺すことをためらいなくできてしまう戦争はやっぱりおかしい。それによって何が得られたのだろうか?

  • 戦艦武蔵が極秘の中で建造開始され(もちろん当初は名前は決まっていない)・・・というか、極秘に建造するために造船所を隠すにはどうすればよいかの検討からはじまり、そのために使うすだれの材料になる棕櫚が大量に買い付けられて全国で消えて・・・というところから、武蔵が沈没し、当時の乗組員たちのその後、までが描かれる、ノンフィクション。
    2度のクライマックス(進水・沈没)があることがわかっているわけで、そこに向かっていくことを意識しながら読んでいくことになる。
    しかし巨大戦艦の建造ってえらいことだな・・・。それが、しかし、こんな沈没して・・・。

  • 【電子版】

  • 魚雷と直撃弾合わせて少なくとも36発以上被弾するまで沈没しない戦艦。この4年の労力を費やして建造した最強艦を全く活かせない日本海軍。

  • 吉村昭さんの本は、読みやすいから、大作でもすぅーっと入っていけるんだよね。戦争ものかと思ったら、武蔵を作るまでのドキュメントが中心。大和は海軍が呉で作ったけど、武蔵は、三菱の長崎造船所で作ったんだねぇ。軍も意外と柔軟に対応して協力関係もよいのね。しかし、棕櫚のスダレで隠すとか、領事館から見えなように小屋を立てるとか、秘密主義がねぇ。

  • 無我夢中で読み進めた、、、という感じではなかった。 しかし、時間、品質、秘密保持、権威等々の大きなプレッシャーの中で造りだす辺りにはモノづくり共通の緊張感は伝わってきた。
    終盤、クライマックスであるにかかわらず、淡々と進んだ。 軍部の方向性は間違っていたのだろう。 それに気付く勉強料としてはあまりにも高過ぎる代償だった、、、

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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