- Amazon.co.jp ・電子書籍 (260ページ)
感想・レビュー・書評
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ダールの著作は「あなたに似た人」に始まる予期せぬ出来事ものと、「チャーリーとチョコレート工場」などの子供向けファンタジーものと大きく二分される。どちらのファンかによって読むべき本も変わってくる。この本はダールの自伝的エッセイで、彼の少年時代のドキドキ感や夢見る気持ち、いたずら心がエピソードを通じて伝わってくる。つまり後者のファンたちには面白いだろう。前者のファンには拍子抜けする。ここに強烈なラストのどんでん返しは存在しない。ごく普通の懐かしい少年時代の思い出話にすぎないのだから。
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ロアルド・ダールの『単独飛行』を探して見つからず、処分したかもしれないと電子書籍を購入し、読もうとしてそういえばその前の自伝があったな、とこちらも購入。
読みやすくてあっという間に読んだ。100年前の英国における小学生の寮生活がいかにワイルドであったか。
教師の体罰、先輩の後輩いびりは何も日本だけのことではない。さすがに教師の鞭打ちは他の生徒に見えない個室で行われたが、音ぐらいは外に聞こえたらしい。
この本全体では、子供が理不尽な暴力にさらされることへの強い憤りが感じられる。ダール氏はボーザーとならず、後輩いびりは行わず、暴力の連鎖を断ち切るようにふるまった。しかし、どのみち暴力の連鎖は暴力が好きな少数の者の間で続いていく。
外国の出来事のような気がしなかったが、日本と英国が意外に近いのではないかという気もする。
なお、本書でダール氏が生粋のノルウェー人と知る。母語が英語でないのに作家としてあれだけの成功を収めるとは。
ところで、昭和の時代もそうだったけど、戦前となればなおさら、学校には「児童を暴力で支配したい大人」や、「とにかく子供と一緒にいたい大人」などが、ただ学があるというだけで学校に居座っていたのだろうなという気がする。
いまとなってようやく、そういう人物が学校にいずらくなりつつある。さすがに人類は進歩している。自動車も軽い事故で鼻がもげたりしない。
母子家庭で兄弟も多いが収入に困ったという話はまったくなく、シェル石油に就職するので、どうのこうの言ってもエスタブリッシュメントではある。しかしここで描かれるご母堂像はそういった身分を超えて、とても立派な人物に見える。 -
ロアルド・ダールがいくつになっても子どもの味方なのには、そういう過去があったからなのかというエピソードが詰まっています。自分が昔子どもだったということを忘れてしまう大人はいるけれど‥。年齢と関係なく子どもの頃の記憶と心を持ち続けて、子どもに接したいと思っています。子ども時代の繊細で懐かしく、大切な気持ちを思い出させてくれるお話です。