ここはグリーン・ウッド 1 (白泉社文庫) [Kindle]

著者 :
  • 白泉社
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感想・レビュー・書評

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  • 80年代の「花とゆめ」を代表する傑作がついにkindle化。たぶん30代後半の女性なら懐かしいと思う人も多いのでは。
    名門男子校の寮を舞台に個性豊かな少年たちが繰り広げる騒がしく楽しい学園生活という定番の設定ながら、キャラクターの配置と相互の関係性を巧みにコントロールして寮生活ものの魅力を引き出している。
    異性が入り込まないホモソーシャルな空間というのはそれだけでひとつの楽園として機能する。楽園では人は成長する必要も変化する可能性もなく、延々と同じ毎日を繰り返すことができる(長寿アニメにいて繰り返される世界はまさに楽園であり、どれだけ人が死のうともコナンの世界もまた楽園である。そして楽園的世界を逆手に取ったのが「ビューティフルドリーマー」なわけだがそれはまた別の話)。実際、本書においても初期においてはキャラクターたちは歳をとらず同じ季節を何度も繰り返していた。
    しかしそれは必然的に停滞をもたらす。停滞にから逃れるために多くの場合、新たなキャラクターを投入し楽園の延命を図る。そうすることで主要キャラクターに変化を強いることなく停滞を打破できる。
    しかし、作者はそうはせず、キャラクターに変化を求めることを選んでいる。それと同時に世界の時間は動きだしキャラクターも成長し歳を取る。それはもはや楽園が終わることを意味するわけだが、あえてそれをやり見事に着地している。困難な試みに挑み成功したからこそ、20年を経た今でも傑作として残っているのだ。

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