銃・病原菌・鉄 上巻 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 人は困らないと変化しない

    困ったすえに変化することで、のびのびやっていた変化しなかった人間に勝っていく

    何千年も前から変わらない不変の法則があるように感じた

  • 感想は下巻に

  • なぜ人間は、5大陸で進む道が異なっていったのか、生物学や言語学などの観点で説明される。
    圧倒的な知識見分から論ぜられる分析は、人文学的な解釈(共同幻想)が多い「サピエンス全史」を上回る根拠を感じる。
    ちなみに、ひろゆきが選ぶ人生ベスト1が当著「銃・病原菌・鉄」。

    ----------------
    一部の人種が今では圧倒的に優位になったのは、地形や動植物相を含めた「環境」差である。
    たとえば、密林で狩猟・採集生活をしている人々は、そこで生きるための豊かな知恵をもっている。
    だが、これは外の世界では通用しない。

    他文明を征服できるような技術が発達する条件は、定住生活にある。
    植物栽培や家畜の飼育(栽培化・家畜化しやすい野生種はユーラシア大陸に偏在)で人口は増加し、余剰生産物が生まれる。

    生産物の管理のために、役人や軍人、技術者といった専門職が発生し、情報を伝達するための文字も発達していく。
    東西に長く大きなユーラシア大陸は人口が多く、競合する社会の数も多かったため、技術の発明や改良に有利。
    地形的にも、他文明の技術を取り入れて利用できる交易路も確保されてきた。

    また、家畜と接することで動物がもたらす伝染病に対する免疫力も発達していた。
    遊牧民と違い、人口稠密。

    南北アメリカ、オーストラリア、アフリカと決定的に違っていたのは、まさにこれらの要因だった。
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    結局は、人口増加の要因があり、実際に爆発的に人口増加された地域が文明が大進化、変化するタイミング。
    移住・順応・人口増加のサイクルこそが「大躍進」への淘汰の過程そのものであり、発展の礎である。
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    最終的に著者、人種による生物学的な優劣は存在しないとしている。
    過去500年間、世界を支配したのがヨーロッパ人であったのは、ヨーロッパ人が生物学的に優れていたわけではなく、単に地理学的要因に過ぎない。

  • 今から700万年前にアフリカ大陸に誕生した人類が地球上のあらゆる地域に居住地域を広げ現在の在りように至る過程で起きた事象。
    文明の偏在と大陸間格差、その結果として、西ユーラシア大陸(欧州)の白色人種が、南北アメリカ、オセアニア、南アフリカを「征服」し、原住民を追いやったという事実がもたらされた要因はどこにあるのか。
    この疑問に対する答えを探っていく。

    「歴史は、異なる人びとによって異なる経路をたどったが、それは、人びとのおかれた環境の差異によるものであって、人びとの生物学的な差異によるものではない。」
    それが著者が出した答えです。

    大著でたいへんな読み応えではありますが、短くまとめてしまえば非常にシンプルなロジックが繰り返されているだけとも言えます。
    そういう意味ではいささか冗長な感じは否めませんが。

    ここで言われている「環境の差異」とは、
    ・栽培化や家畜化の候補となり得る動植物種の分布状況
    ・地形と気候、大陸の広がりが東西方向か南北方向か(文化や技術の伝播のしやすさ)
    といった事項です。

    何よりポイントなのは「食料生産を始めることができたかどうか」。
    そのために動植物種の分布状況や地形や気候が決定的に重要なファクターとなります。

    で、食料生産を始めることで余剰生産力が生まれる。
    余剰生産力が生まれることで、文字や技術を発達させる人材を養ったり、より高度に文化した社会構造を構築したりすることができ、技術力や軍事力を高めることが可能となる。

    また、家畜を飼うことは食料生産力を高めるだけでなく、家畜由来の伝染病への免疫を持つことに繋がり、また輸送力や軍事力を向上させることにもなる。

    こららの条件の違いが、征服する側と征服される側を隔てる大きな分水嶺になった。
    よく知られているようにインカやマヤが滅びたのは軍事的に駆逐されただけではなく、西洋人が持ち込んだ伝染病で全滅したからなのです。

    違ったのは環境であり、人種間に優劣はない、という点ではリベラルな立ち位置と言えるのかもしれませんが、こういう価値中立的な視点で整理していく切り口は個人的には好みではあります。

    個別のトピックとして、興味深く感じたものを以下に挙げておきます。

    (遺伝と食料生産)
    ・人間が食料として栽培するのに都合のよい形質を持った突然変異種(例えば種子がはじけてばら撒かれる仕掛けを持たない個体など)の個体を採集し続けることにより、その形質が遺伝した種を栽培種の原種とすることができた。
    ・中東の肥沃三角地帯では、自殖性植物(他家受粉で有用な特性が一代限りで終わることがない)の割合が高かったことが栽培種の遺伝をコントロールのしやすかった。

    (発明の本質)
    ・功績が認められている発明家とは、必要な技術を社会がちょうど受け容れられるようになったタイミングで、既存の技術を(たまたま運よく)改良して提供できた人のことだと言うこともできる。
    ・人類の科学技術史とは自己触媒のプロセスである。伝播することにより改良が加えられ発達する。発明の伝播は発明自体よりも潜在的に重要なのである。

    (中国の特殊性)
    ・中国では、地域の地理的結びつきが強すぎたがために却って、一人の支配者の決定が全国の技術革新の流れを止めてしまうことがしばしば起こった。これは、権力が常に分裂状態にあったヨーロッパで競争原理が働いたことと対照的である。

著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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