或る「小倉日記」伝 (角川文庫) [Kindle]

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  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • どんよりとした感じは、やっぱり清張先生だなぁ。

  • 『或る「小倉日記」伝』:最初は構図が掴めなかったが後半になってようやく分かり、面白く、引き込まれた。伝便:郵便だとかえって時間を要する近隣に配送してくれる業者、鈴をつけている。
    父系の指:以前読んだ半生の記に近い内容だった。(生山、伯備線)
    広島から芸備線で備後落合駅、宿泊中に隣の部屋から奥出雲ながら東北弁訛りの言葉が聞こえる、これは後の砂の器に出てくる。
    備中神代駅より伯備線で生山、汽車で時間を要する。巻末は何とも後味が悪い。同じ兄弟でありながらこうも差が出てしまうのか、人生、平等では無い。
    菊枕:美貌、才能に恵まれた女性の悲劇。普通の女性なら幸せな人生を送る事が出来たと思う。その点において才能が無かったと見るべしか。
    笛壺:最後までよく分からなかった。
    石の骨:ドロドロとした学会、そして研究一途、家庭を顧みない研究者の姿、ある意味、哀れでもある。
    断碑:学会で冷遇される学者の話、世の中、不平等と思わざるを得ない。途中、調子に乗って相手を非難するところは少々やりすぎかと思うが、仕方ないかも。フランス行きは甘くない現実をつきつけられた。夫婦愛には頭が下がる。
    あとがき:全編における共通項を明確に記している。小倉日記の耕三は体が不自由ながらも夢があった。菊枕の女性は孤独、そして悲劇であった。

  • 推理小説といえば松本清張、というイメージしかなかったが、この短編集はいわば伝記のような感じで、登場人物に寄り添うというよりかは傍観し、正確に追い続ける文章で綴られている。
    邂逅・没入・そして没落。才能はあるが、認められない。苦悩に苛まれる感情が手にとるように描写されていてページを進める手が止まらなかった。心に根付いた一冊。

  • 社会派推理の元祖松本清張による推理小説以前の作品集。表題作で主人公が森鴎外の小倉時代の足跡を独自に調査するように、どの作品も地方で、アカデミズムから外れたひとびとがひたらすらに自分の道を突き進む。仕事の成功いかんにかかわらず、生活、経済は困窮する。
    地方在住で学歴がない在野の人材が、中央のアカデミズムにと戦う図式は、後の社会派推理でも使われる。原型がここにある。
    地方の教師が、安月給でうだつがあがらない典型となっているのところに時代を感じる。今なら勝ち組に入るのだけど。

  • 素人考古学者がおエライ大学の学会に拒否されて、野垂れ死にする話を2話収録。日本人の大好きな派閥社会のアホさ加減が、有能な人材を潰していく様には呆れるしかない。

  • 『父系の指』が特に好きです。
    不肖の父に対する軽蔑と遣る瀬無さ、それでもどうしようもない愛おしさを抱えつつ、自らの血筋を実感する息子。
    その複雑な心境と葛藤が切なく、無性に共感を覚えます。
    『或る「小倉日記」伝』では、不具の子に寄り添う母の姿に思わず涙しました。
    他の作品も素晴らしいです。
    自己の執着と実現にひたすら足掻き続ける主人公達。
    読んでいるうちに彼等の心理と同化してしまって、こちらまで胸が圧迫されるようでした。
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    ■ 或る「小倉日記」伝
    ■ 父系の指
    ■ 菊枕
    ■ 笛壷
    ■ 石の骨
    ■ 断碑

  • 実話を元にした半ノンフィクション短編集。貧困と狂気の狭間で何かを為し遂げた人たち。短歌、考古学、人物史、それぞれに何かを失いつつも執着した群像は作者の写し絵なのか。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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