- Amazon.co.jp ・電子書籍 (220ページ)
感想・レビュー・書評
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どんよりとした感じは、やっぱり清張先生だなぁ。
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『或る「小倉日記」伝』:最初は構図が掴めなかったが後半になってようやく分かり、面白く、引き込まれた。伝便:郵便だとかえって時間を要する近隣に配送してくれる業者、鈴をつけている。
父系の指:以前読んだ半生の記に近い内容だった。(生山、伯備線)
広島から芸備線で備後落合駅、宿泊中に隣の部屋から奥出雲ながら東北弁訛りの言葉が聞こえる、これは後の砂の器に出てくる。
備中神代駅より伯備線で生山、汽車で時間を要する。巻末は何とも後味が悪い。同じ兄弟でありながらこうも差が出てしまうのか、人生、平等では無い。
菊枕:美貌、才能に恵まれた女性の悲劇。普通の女性なら幸せな人生を送る事が出来たと思う。その点において才能が無かったと見るべしか。
笛壺:最後までよく分からなかった。
石の骨:ドロドロとした学会、そして研究一途、家庭を顧みない研究者の姿、ある意味、哀れでもある。
断碑:学会で冷遇される学者の話、世の中、不平等と思わざるを得ない。途中、調子に乗って相手を非難するところは少々やりすぎかと思うが、仕方ないかも。フランス行きは甘くない現実をつきつけられた。夫婦愛には頭が下がる。
あとがき:全編における共通項を明確に記している。小倉日記の耕三は体が不自由ながらも夢があった。菊枕の女性は孤独、そして悲劇であった。 -
推理小説といえば松本清張、というイメージしかなかったが、この短編集はいわば伝記のような感じで、登場人物に寄り添うというよりかは傍観し、正確に追い続ける文章で綴られている。
邂逅・没入・そして没落。才能はあるが、認められない。苦悩に苛まれる感情が手にとるように描写されていてページを進める手が止まらなかった。心に根付いた一冊。 -
『父系の指』が特に好きです。
不肖の父に対する軽蔑と遣る瀬無さ、それでもどうしようもない愛おしさを抱えつつ、自らの血筋を実感する息子。
その複雑な心境と葛藤が切なく、無性に共感を覚えます。
『或る「小倉日記」伝』では、不具の子に寄り添う母の姿に思わず涙しました。
他の作品も素晴らしいです。
自己の執着と実現にひたすら足掻き続ける主人公達。
読んでいるうちに彼等の心理と同化してしまって、こちらまで胸が圧迫されるようでした。
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■ 或る「小倉日記」伝
■ 父系の指
■ 菊枕
■ 笛壷
■ 石の骨
■ 断碑 -
実話を元にした半ノンフィクション短編集。貧困と狂気の狭間で何かを為し遂げた人たち。短歌、考古学、人物史、それぞれに何かを失いつつも執着した群像は作者の写し絵なのか。