クォン・デ もう一人のラストエンペラー (角川文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 今度、ベトナムに行ったら、フエを訪れよう。クォン・デの墓にまでたどり着けるかどうかは分からないけど。忘れてしまわないように。

  • [忘却のその前に]「なぜ日本人はクォン・デについて何も知らないのですか......」と怒り交じりにベトナムの青年からの言葉を浴びせかけられた著者は、それをきっかけとしてクォン・デについての調査を始める。その後、彼はベトナム独立を夢見て日露戦争後に日本に渡航した王族の末裔であることが明らかになるのだが、その人生は、日本人が彼の名を忘れるべきではないほどに、日本に振り回されたものであった......。著者は、主にドキュメンタリーの世界で高い評価を獲得している森達也。


    忘れられかけていたクォン・デの存在(自分自身も本書を手にするまでまったく知りませんでした)を再度甦らせてくれた点は評価すべきだと思います。クォン・デの足跡を追うことで、ベトナムが歩んだ歴史の一端を垣間見ることもでき、非常に勉強になりました。また、当時の日本の実力者たちがクォン・デを始めとした各国の革命家などをどのように支援したかについても知ることができたのは有意義でした。


    他方、どこまでが事実でどこまでが著者の「空想」なのかを明らかにしないまま、クォン・デや彼を取り巻く環境に独断的に歴史的評価を下しているところは、歴史を描く作家としては少し思慮に欠けるところがあるように思います。以下は本書からの一文なのですが、こういうことを歴史について書きたいのであれば、やはり事実(個人的には「真実」とは少し違うものを考えています)については誤りのないようにした上で(もしくはどこまでが事実でどこまでが「空想」なのかを明示した上で)筆を進めるべきなのではないかと思います。

    〜表出すべきは事実の一面ではなく、僕が紡いだ「僕にとっての真実」なのだ。〜

    珍しく厳しいレビューを書いた気がする☆5つ

著者プロフィール

森 達也(もり・たつや)
1956年、広島県呉市生まれ。映画監督、作家。テレビ番組制作会社を経て独立。98年、オウム真理教を描いたドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。佐村河内守のゴーストライター問題を追った16年の映画『FAKE』、東京新聞の記者・望月衣塑子を密着取材した19年の映画『i-新聞記者ドキュメント-』が話題に。10年に刊行した『A3』で講談社ノンフィクション賞。著書に、『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『ご臨終メディア』(集英社)、『死刑』(朝日出版社)、『東京スタンピード』(毎日新聞社)、『マジョガリガリ』(エフエム東京)、『神さまってなに?』(河出書房新社)、『虐殺のスイッチ』(出版芸術社)、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』(ミツイパブリッシング)、『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(講談社現代新書)、『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)、『増補版 悪役レスラーは笑う』(岩波現代文庫)など多数。

「2023年 『あの公園のベンチには、なぜ仕切りがあるのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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